「なに、してるの?なんで此処に居るの?」 「わからねェ、気がついたら居た」 「銀時らしいね」 ヒタヒタと裸足で背を向けたままの名前に近付いた。……どれくらい振りだろうか、名前と話すのは。ちょっと見ないうちにその小さな背は更に小さく見えて深い影を落としているようにすら見えた。 「ねぇ、銀時。私の他に大切なものってある?」 名前の肩をつかもうとした瞬間、そんなことを言われるものだからびくりと手が固まった。 「……ああ」 「私より大切?」 「……みんな、お前ェと同じくらい大切だっつの」 「そっか。よかった。でもね」 最後まで言葉を待たずに肩を引き寄せた。…………つもりだった。 そこで俺は漸く気付いた。 “あんたが大切に思ってるみんなはあんたを大切に思ってる。だから、無茶しないでよ。でも、そんな銀時が大好きなんだけど” 「銀さん!」 「銀ちゃん!」 「……よォ」 引き寄せられなかった身体は花びらとなり消えたあいつ。もう大分昔に死んだ友だった。死にかけた俺をこの世に戻しにきたってところか。 世話焼きのあいつに余計なお世話だ馬鹿ってあの頃はよく言ってた言葉だな。 薄れ掛けた記憶に名前の顔はぼやけ始めたが、今回はまあ、感謝してやるよ。 覚えているのはお前の笑顔、忘れないのはお前の泣き顔 title/夜風にまたがるニルバーナ様 110521 |