「銀さん、起きてくださいって!」 「あああああ!もう少しでケーキ食えたじゃねぇか!!ぱっつぁん……まじ空気読んでくれない?」 「うるせー!昼過ぎてんだから起きろォォォォォォォ!」 「全く……ここの男どもはクズだな」 新八にスリッパを投げ付けられ、覚醒した俺はボリボリと頭を掻いてリビングに出る。あーもう少しで特大ショートケーキ食べられたのによ。 「……あれ、なにこれ」 「ああ……姉上がお客さんに貰ったとかで家に大量にあるんでお裾分けですよ」 テーブルに置かれたのは見慣れぬ小綺麗な包装紙に包まれた箱。 「ふーん……」 「最近出来た菓子屋のチョコレートらしいですよ。ケーキじゃありませんけどね」 糖分は普段あまり食べられないからか、夢の話を気にしているのか新八が食べちゃってくださいと言う。お言葉に甘えて、不器用ながらも丁寧に包装紙を取り箱を開けると、色とりどりのチョコレートが綺麗に並べられていた。 真っ赤にコーティングされたハートのチョコレートや、ガナッシュ、トリュフ等々と甘党には持ってこいの物だ。 「なかなかいいじゃねェか。あのゴリラ娘もたまにはやってくれるもんだな」 「そんなこと姉上に知られると、あんた、また殺られますよ」 心配する新八の声を適当に聞き流しながらトリュフを手に取った。それに続いて神楽もチョコレートに手を伸ばす。 「美味ぇ」 久しぶりに感じるチョコレートの甘さを口一杯にして堪能する。ああ、もう糖尿病なんて関係ねェ。 甘いものたくさん食べたかったなあ 「――愛してる」 「なんか言いました?」 「いんや、なにも」 なあ、名前。 お前が今居る世界はどうだ?昔お前が望んだように糖分だってろくにないだろうし、何より俺が傍に居ない。辛いか?寂しいか? 俺は…… 悪いな、まだ暫くそっちに行けはしねェけど、お前の代わりに甘いものたらふく食ってから行くとするわ。 「神楽ちゃああああん!お前、食べ過ぎだけど?!ねぇ銀さん、まだ一個しか食べてないんだけど!!」 「こっちは銀ちゃんが起きてくるまで待っててやったんだから、ちょっとくらいいいネ」 「そもそも前からあんた食べ過ぎなんですから、控えてくださいよ」 「馬鹿。止めねェよ」 「は?」 いつかまみえるその日まで、僕らは夢を見る。 title/青眼様 110420 |