狂い咲きの恋 | ナノ



手に入らない。掴み取ったと思った腕は砂のように手からすり抜け、笑うアイツ。頼むから、俺のものになってくれよ、なぁ。


優しいお前に戻って、俺を包んでくれ。身体だけの付き合いなんて、いらねェから。






「女なんて抱いたら終ェだろ。現に、お前とアイツはセフ「最後まで言うんじゃねェよ馬鹿」




ふわふわと煙が俺のほうに漂ってきて、つい吸い込んだ俺は咳き込んだ。高杉の吸う煙草は俺には合わない。そのため、煙草を忘れた俺は口寂しいわけで、しかし高杉から1本貰おうという気にはなれなかった。




昼休みも終わり今は授業中なわけだが、不真面目の俺と高杉は屋上に上がり、一服していた。どんよりと曇る心と反対に空は曇一つない。不思議と心に清々しさが差す。





「だから、俺はアイツに深入りするなっつっただろ。アイツはお前を駄目にする」

「んなわけあるか」

「今、お前がそんなシケた面してんのはアイツが……学校に来てないからだろ。家にも帰ってない」

「ったく……どっから話聞いたんだよ」

「アイツの男は少し有名だ。女泣かせ、で済めばまだいいほうだが……」






パチン、と携帯灰皿を開け煙草を押しつける高杉は口を濁した。なるべくならそれ以上聞きたくはなかった。
















「聞いて、銀時!」

「あー?どうしたよ」








あれは明るい名前の笑顔を見た最後の時だった。息を切らし、俺の元に駆け込んできた名前は彼氏ができた、と俺に報告してきたのは半年くらい前。まだその頃は俺や高杉もああそうか、と話していたが、そのうち名前の男について話を聞くようになった。


束縛が激しいだの、暴力は当たり前だの、で、これは噂で本人にも真相は確かめていないのだが、薬に手を出している男は金を稼がせるために、名前に風俗やらの仕事をさせているとか。あまりにも今の名前の状況を見ていると噂だろ、なんて鼻で笑えなくなっている。



しかし、たまに見ることができる名前の身体には他の男が触れた痕跡なんてないから、とやはり心の奥底では噂であってほしいと信じていた。








そして名前は一週間前から学校に来なくなった。アイツの家は放任主義か知らねぇが娘が帰ってこなくてもあまり気にはしていないようだった。……それが余計に名前が家に帰らない理由でもあったのだが、流石にこんなことは初めてだった。電話も掛けてみたけど電源は入っていないから繋がらない。







「ちっ、」




高杉の舌打ちが聞こえてハッとして現場に戻ると電話に出ていた高杉が居た。最近、関わりはじめた奴等だろうか。はあ、と溜め息ついて柵に詰め寄って下を見る。空ばかり見てると苛立ちが溜まりそうだ。




「……そうか。…………銀時」

「……なに、終わった?」

「俺はもう止めねェからな」

「あ?」

「好きにしろ。……今、名前が居る場所だ」






そういって、いつの間にメモしていたのか、渡された紙を見て驚愕した。










うん。でも、私は


あの人が好きだから









何がすきだよ馬鹿。お前に縁切られようと、嫌われようと、もう構わねぇよな。お前の優しさなんか嬉しくねぇんだよ。








「……ありがとよ、高杉」







くしゃりと紙を握りしめて、屋上を飛び出した。










優しさに甘え、









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -