暑い、夏だった。時間があれば私と先生は欲に溺れていて、私は言葉通り先生なしじゃ生きれない。こんなに淫乱だったのか、私は。 「じゃあ、行ってくる」 本格的に夏休みが始まった。私は休み。でも先生は仕事だから今は玄関で見送っていた。抱いて、ほしい。だけど仕事のほうが大切だから私は出来る限りの笑顔で見送る。 「気を付けてね」 「ん。早く終わらせて帰ってくる。名前」 「?」 「……行ってらっしゃいのキスはねェのかなーって」 「ば、ばか!」 そう言いながらも、触れるだけのキスをして、いってらっしゃいと手を振る。物足りないけど我慢。あーもう朝から何を考えてるんだろう。 扉が閉まって、緊張がほどける。そうでもしなきゃ先生を求めてしま……だから、なんでそんな考えに至るわけ自分。 「片付け、よっか」 やることもないし私は部屋を見回す。布団を干して、散らばった資料を纏めて掃除機を掛けて……と掃除をしていてふと気付く。 「そういえば……アルバムとかないよね」 先生の写真とか思い出の品ってない。一人暮らしだからもしかしたら実家に置いてあるのかも。……そもそも先生の口から親の話を聞いたことがない。話す必要がない?なんだか、聞きづらい。もし私が聞かれたら答えられない問題、だし。 「……いつか話してくれる、よね?」 信じるしかできない。先生が私にそうしてくれたように。考えて考え抜いた結果、私はこれからも先生の側に居ようと決めた。勿論、先生が望んでくれればの話だけど。 一息付いた途端に携帯電話が鳴り出した。初期設定のベルがけたたましく、私は急いで電話を取る。 「はい、もしもし。……あ、総悟。え、これから?」 時計を見ればお昼が回った辺り。そりゃお腹もすく、か。 「うん、わかった。駅前でね」 電話を切って慌ただしく支度をする。電話の向こうは騒がしく、総悟以外にも神楽ちゃん達が居るみたいでお昼ご飯を誘われた。断る理由なんかないので、着替えて財布と携帯を持って家を出た。 「久しぶりね、名前ちゃん」 「ほんとネ!名前、終業式来てなかったし」 「あー……ごめん、寝過ごしちゃって」 ……嘘だけど。確かその日の前日、先生に激しく抱かれすぎて立てなかったんだっけ。神楽ちゃんと妙ちゃんに詰め寄られながら、総悟と土方君と近藤君を見る。なんかすごい面子。 「で、何処に行くの?」 「新しいランチバイキングの店が出来たらしいアル」 「へぇ……そうなんだ!」 「2人とも元取るまで食べるわよ」 「任せるアル!」 「食べ過ぎは注意だよ神楽ちゃん」 「おい総悟」 「……あ」 「置いていくぞ」 「今行きやす。土方のくせに指図するのはやめてくんなせぇ」 「なんだとこのっ!」 騒がしい土方の攻撃から逃れつつ、名前の首に残されているキスマークから目を反らせない。なんなんでェ、これ。 101123 |