ぬくもりが消える前に | ナノ




笑う


助けた理由は今でもよくわからねぇ。あいつにも言った通り、あいつがこの世で一番不幸な目をしてるのに苛立ったのもあるし、ああもう、なんだかわからねぇ。ただこれだけは言える。あいつのなんかに惹かれた、のは事実。



「…はじめまして、名前といいます」

「…おい、銀時、なんだこの娘はよォ?」

「戦場で拾ってきた。行くとこねぇみてぇだし、いいだろ」

「いいだろって銀時、お前…此処は戦場だぞ?」

「はっはっは、まぁええじゃないか?わしゃ、良いと思うぜよ」


ヅラは反対気味だが、高杉と辰馬はそんなことねぇみてぇだから此処は強引に行けるか、と暢気に考える。すると正座したまま名前はおずおずと口を開いた。


「…いえ、今日一晩だけで良いので、すみませんが宜しくお願いします」

「なっ、おなごにそんなことを言わせるつもりはなかったのだが…」


名前の発言に慌てるヅラに高杉が笑いながら煙を吐いた。

「いいじゃねぇかヅラァ、ククッ、名前と言ったかァ?お前さん、此処に居ろよ」

「でも…」

「そうじゃ、わしらは昼は戦っちょぉが、おまんには家事でもやってもらえばいいきに」


「ああ、それでいいんじゃね?はい、決定」

「銀時さん…」

「…銀時でいいよ」



辰馬の案に頷いた俺は笑って、名前の頭を撫でた。みんなが自己紹介をして、俺たちの生活は始まった。


大切なもんが、また増えた。




大切にしていきたいと、身勝手だったあの頃はそう思ってた。






100809




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