どうでもいいと思っていた ふぅ、と溜め息を吐いた。射的に熱くなる神楽ちゃんと、沖田さん(また仕事をサボってるんだろうな)が勝負に発展して、新八くんと後ろで綿菓子を食べて傍観していた。 「知り合いだったんだね」 「はい、真選組とはまぁ腐れ縁っていうか…」 真選組に属する沖田さんと神楽ちゃんたちが知り合いだということに、世間は狭いなぁなんて思うけど、あの人の仲間である新八くんと神楽ちゃんに出会ったこと自体が世間の狭さを一層に感じさせられる。 やっぱり、この街に来るんじゃなかった。辛いだけ、だった。 ――ドォォォン! 「!!」 さっきちらりと見ただけだけど、櫓の方向から聞こえた爆発音。どよめきの声が上がる。 「攘夷派のテロだぁぁぁぁ!」 誰かが発した言葉を皮切りに他の人たちは走って逃げ出す。 「……高杉さん」 「名前さん、逃げてください」 小さく呟いた声は人々の叫ぶ声で掻き消された。俯く私を新八くんは脅えたように見えたのか、私に近寄ってそう言った。 「でも…あっ」 見えたのは櫓に向かって歩き出す神楽ちゃんと沖田さん。私の声と視線の先を見た新八くんは、いいからと言って2人を追いかけた。 仕方がないので、新八くんが言ったようにこのまま逃げよう。……沖田さんはたぶん仕事で来たんだろうから、戻るのはいいんだけど、神楽ちゃんと新八くんも何故一緒に行くのだろう。まさか止めに行くの? 顔が青くなるのがわかった。高杉さんがどうやって幕府に攻撃を仕掛けるのはわからないけど、危ないんじゃないだろうか。 脳裏に過ったのは目の前で私を守って死んだ両親だった。 この世界はどうにでもなれと思っていた。だけど少しでも関わったあの子たちが危険に晒されるのかと考えたら怖くなった。嫌だ、止めて。 気付けば私は走り出していた。高杉さんのやることを反対するわけではない、だけどこの街に来て私と関わった人たちが居る。 ああ、この街に来てやっぱりよかったんじゃないか。なんとなくそう思った。 逆らう人の波に流されて、私の目に映ったのは、櫓じゃなくて、大きな広場。その地面に流れた血。恐る恐る、上を見ると其処に居たのは、 「高杉さん……銀時…っ!」 ああ、2人が居るということは、銀時は知ってしまったんじゃないだろうか。あの日から今までの私のことを。 100823 |