ぬくもりが消える前に | ナノ




夕暮れ


「……神楽ちゃん?」

夕方になり、店を閉めようと思ったときだった。私の後ろに影が出来たから後ろを見てみると、そこには神楽ちゃんが居た。


「名前、これから暇アルカ?」

「え、うん。店を閉めたら、ね」

「ほんとか!じゃあ祭り行こう!」


祭り、と聞いて私は数日前の高杉さんの言葉がよぎった。


『おめぇは危険だから来るなよ』


……それは高杉さんが何かを起こすということ。別に危ない目に遭うのが怖いわけではない。
神楽ちゃんが誘ってくれたというなら、何処かにあの人も居ることになる。
なるべくなら会いたくはない。そっちの気持ちの方が勝っていた。


「……名前?」

「あ……えっと」


考えこんだ私を、神楽ちゃんは寂しそうに見た。恩人に誘ってもらっているのだから断るのはとても心苦しい。


「行きたくないアルカ?」

「……う、ううん、そんなことないんだけど、人混みが苦手だから…」


なんだ、と神楽ちゃんは笑った。


「大丈夫アル。花火の穴場知ってるし、折角だから、ついでに新八誘って行くアルネ」


あ、そうか。神楽ちゃんと新八くんは知らないんだ。私とあの人が知り合いだってことを。


「……3人で?」

「勿論アル。ほんとはもう一人居るんだけど何処か行ったから知らないネ」

「…ちょっと待っててね、店閉めてくるから」






少しだけならいいか、と私は笑って了承した。神楽ちゃんが嬉しそうに笑うから、断らなくてよかったと純粋に思った。







100822




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