ぬくもりが消える前に | ナノ




愛すること


「じゃ行ってくらァ」

「行ってらっしゃい、銀時。高杉さんも桂さんも辰馬さんも、気をつけてください」


名前と想いを結んで数日。俺の傷は名前が甲斐甲斐しく治療を施してくれたお陰で元気になった。そして、久しぶりの出陣のとき、名前は心配な顔をして俺を見たが、大丈夫だっていうように笑顔を見せて寺を出た。





「銀時、お前、名前と何かあったのかよ」

そんな小さなアイコンタクトに真っ先に気付くのは高杉で、案の定聞いてきやがった。

「……さぁな」

「ああ?くっついてんじゃねぇのか?」

「……」


高杉の言葉についニヤリと笑ってしまった。鼻であしらう高杉に辰馬は大きく笑うし、桂は無表情だった。あー、隠すつもりだったけど、嘘をつくのは下手くそだ。悪ぃ、名前。


「ちっ、」





風が吹いた。いざ、出陣のとき。





俺はまた、命を奪いに行く。







やがて服が血に染まっていくにつれ、日も暮れ始める。ここいらの天人はほぼ殲滅した。早く、帰りてぇ。背中合わせのまま戦い続けた桂が口を開いた。


「行くぞ、銀時」

「あー、帰れんの?」

「そんなに名前に会いたいか」

「ちょ、いや……べ、別に?」

「ふっ…お前も人の子だな。まぁそのほうが逆に安心させられる」

「うるせーな。帰っぞ」


意外とこいつは冷やかしてくる。それを交わしながら寺への道を戻っていると、高杉や辰馬も合流して、俺は更に冷やかされることになった。






「ただいま」

「おかえり、みんな」


ご飯出来てるよ、と名前が俺たちを出迎えた。ああ、なんだかホッとする。手を伸ばして、名前を腕の中に閉じ込めた。


「ただいま」

「ちょ、銀時…!」

「あー……こいつら、もう知ってる」

「え、えっ!」


俺を制する声に、そう伝えれば名前は慌てる。俺以外の3人が笑いながら俺らを通りすぎていく。


「じゃあ、わしらは着替えて飯食いに行くきに」

「そうしたほうがよさそうだな。我らは邪魔なようだ」

「銀時、飯の代わりに名前を食うん「黙れっつの高杉ィィ!」

高杉の冗談を遮り、やっと煩いのが去ればあとは名前と俺との時間。

「最低」

「いや、冗談だから、ね?心配すんなって」

「へー、どうだか。ていうか離してよ」

「冷たいな、お前。」


ほんの少しだけ、名前を抱きしめる腕を緩めると、名前は俺を見上げる。


「…おかえり」


そんな上目遣いで見る名前が可愛くなって、唇をひとつ落とした。





これが好きってことか、愛するっていうことか。未だにお前以外で感じたことないこの気持ちは燻ったままなんだよ。







100818




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