甘党への入口 なんとか皆と打ち解けられて、もうどれくらい経ったろうか。 桂さんは私のことをよく思ってないのかと思ったけどそんなことなくて、意外とご飯作るのを手伝ってくれたりする。辰馬さんは結構絡んでくれて、緊張を解きほぐしてくれたからとても感謝しているし、高杉さんは無口だけど、何故か私を見てくれてるというか、気にかけてはくれているみたい。 そして私を拾ってくれた銀時は毎日戦場から帰ってくる度、笑って、ただいまって言ってくれるし、ことあるごとに私の頭を撫でてくれる。 此処に来て、悪夢を見ることが多くなった。多くなった、というか、見ても仕方がないと思う。そんな夜は隣の部屋で眠る銀時が真っ先に気付いてくれて、朝まで一緒に眠ってくれてる。 勿論この4人以外の他の侍とも仲良くなれてるし、銀時には本当に感謝してる。ひとりぼっちになった私を助けてくれたから。銀時が居てくれるだけで、安心できる。なんか胸がドキドキしてしまう。これが好きってことなの?恋すらしたことのない私はよくわからなかった。 それに段々減っていく味方達を見ていると、そんな不謹慎なこと思っちゃいけないんだと自分を叱咤し、みんなの世話をし続けた。そんなある日、朝食を食べ終えた高杉さんは一言残した。 「…今日、誕生日なんだよなァ」 「えっ!ええ!?」 突拍子もなく言うから、私は一瞬、把握できなかったが、発言者は既に居なかった。 「誕生日、かぁ…」 お祝いしてほしいのかな?でも、大したのってなさそうだし、何か良い材料があればいいんだけど。とか思いつつ、食べ物が置いてある倉を見て考える。 「…あ、これ使おっと」 「てなわけで、高杉さん、お誕生日おめでとうございます」 夕食後、でんっと出したのはみたらし団子。粉がたまたまあったからなんとかできた代物。これしか用意できなかったけど、甘いのは大丈夫なのかは知らない。 「あ、甘味とか平気ですか?」 「あァ…悪ぃな。わざわざ」 「こんなものしか用意出来なくてすみません」 お茶を受け取った高杉さんは笑って頭を撫でてくれた。此処に来てから頭を撫でられることが多くなったと思う。 「えー高杉誕生日だったわけ?なになに?お祝いしてもらいたかったの?」 「きゃっ、…銀時?」 肩を掴まれて後ろに倒れこんだ私を支えたのは銀時だった。なんだか少し怒ってる。 「銀時拗ねてる?ちゃんとみんなの分もあるから心配しないでって」 「あー…俺、甘いの嫌いなんだよ」 「えっ、うそ、初耳」 「言ってねぇし」 「絶対甘党だと思ってた」 「名前、わしらの分もあるきに?」 「あっ、ありますよっ」 辰馬さんの言葉で銀時から離れた私は桂さんと辰馬さんにも団子の乗った皿を配った。理由はわからないけど、高杉さんは喜んでくれてるみたいだし、それに対して銀時は何故か怒ってるけど、その後、銀時は甘いものが苦手なはずなのに団子をたいらげていた。 銀時の甘党は此処から始まったんだよね。私の味を覚えてくれていてありがとう。 高杉HappyBirthday! 100810 |