諏訪洸太郎 Air



名前と付き合って4年経った秋、一世一代の大勝負に出た。いわゆるプロポーズってやつだ。大勝負の場は俺の部屋、ベッドを背もたれにしておのおの読書に勤しんでいる最中だった。


「結婚すっか」


静かな部屋に、何でもないようにぽろっと零した言葉。名前は顔をこちらに向け瞬きをした。


「それ、いま言う?」


しょうがねぇだろ、と心の中で言い訳をする。高級レストランで。サプライズで。または跪いて指輪の箱を開けながら。世間一般でいう「プロポーズ」なんて。ただでさえ、いま自分の体がこれまで経験したことがないほど熱くて、汗が止まらない状況だってのに。顔を合わせられない俺を見て名前は小さく笑った。


「洸太郎らしいね」


よろしくお願いします、と名前は右手を俺に差し出した。俺はじっとその手を見つめた。バサッ、と紙の乾いた音がした。左手にあったはずの文庫本が床に落ちた音だった。


「おう……ありがとな」


名前の小さな手を握る。のちに「ありえない」とボーダーの奴らに散々叩かれることになる俺のプロポーズを、こいつは俺らしいと笑う。気づいた時には名前を抱き寄せていた。
プロポーズが成功し、住む家も決め、引越しも済ませた。あとは明後日に婚姻届を提出するだけだった。すべてが流れるようにうまくいっている。そう思っていた。


「ねぇ洸太郎。その、結婚式なんだけど」
「結婚式?」
「うん。式、どうしようか」


夕飯後、ソファに座り買ったばかりの文庫本を広げた時だった。隣に座る名前はこちらをおそるおそる伺うよう、ちらと横目で俺を見た。


「式は勘弁してくれ」


俺は文庫本に目を落としたまま答えた。名前は式を挙げたいのだろう。だが俺にとってはとんでもないことだった。自分が主役。想像しただけで体が重くなる。


「わかった」


名前の声が震えた気がして隣を見た。俯いたまま動かない。いつものが出たな、とため息をついた。名前は周囲に合わせて自分の意見を押し殺すところがある。


「何なんだよ」
「ううん、気にしないで」


名前は両手を左右に振った。顔に貼り付けられた笑みが鬱陶しい。遠慮するな、思ったことを言え。俺にだけは気を許してほしくて、そう何度も言ってきた。だからつい、語気が荒くなってしまった。


「自分の意見くらいはっきり言え。何回言えばわかんだよ、お前は」


ごめんなさい、と名前の小さな声が耳を掠める。しまった。そう思った時にはもう手遅れだった。立ち上がって風呂に向かう名前の背中に、俺は何を言うこともできなかった。


***


「すわさん、さいってー」
「おサノの言う通りだなぁ、日佐人」
「最低ですね」


ジト目で俺を睨むおサノ、堤、日佐人。居心地が悪くなり、顔をそらして缶コーヒーを啜る。


「お前らな、集合していきなり何なんだ」
「だってすわさんが『名前さんと何かありました』って顔しながら作戦室に入ってくるから。聞いたら答えてくれたし」


おサノはスマホをいじりながら答えた。吐かねぇと先日の飲み会の写真を名前に送ると言ってきたのはどこのどいつだ。あの日は飲みすぎたせいで記憶が一部飛んでいる。名前が写真を見るのを想像しただけで悪寒がした。


「なんで名前さんの意見を聞かないの?」
「聞いてんだろ」
「それ聞いてるって言わない。吐かせにかかってるよ」


俺たちのやり取りを腕を組んで見ていた堤が独り言のように呟く。


「いきなり『勘弁してくれ』はきついなぁ……」
「なんだよ。俺の意見は言うなってことか」
「いや、そういうことではなくて。そんなこと言われたら意見なんて言えませんよ。実質封殺です、封殺」


ねぇ、とおサノと堤は顔を見合わせた。息ぴったりなのが腹立たしい。


「俺が式とか人前に立つのが小っ恥ずかしいっての、あいつはわかってるだろ」
「念のため確認するけど……それ、名前さんに言った?」
「ああ?言ってねぇけど」
「それ言わなかった上にあの暴言ですか」


うわ、と日佐人が口を動かす。三人とも示し合わせたかのように顔を歪めた。


「四年付き合ってんだぞ。わかるだろ」
「わからないからこうなってるんだと思いますよ」


堤の言葉にぐっと声が詰まった。


「つーか、おめーらには関係ねぇだろ。なんでそんなつっかかってくるんだ」
「だってすわさんを受け入れてくれるの、名前さんしかいないから」


あっけらかんと答えるおサノ。俺を置いてきぼりにして三人は口々に言う。


「名前さん、四年間ずっとすわさん一筋なんだもん。女神様だよ」
「そういえば二人が付き合い始めた時、一部で大騒ぎになったよな。雰囲気も性格も正反対なのにって」
「犬飼先輩と辻先輩、めちゃくちゃ落ち込んでましたよね」
「犬飼にいたってはいまだに諦めてないらしいしな」
「はぁ?!おい堤、その話詳しく聞かせろ」
「すわさん」


おサノの声を合図に、三人がぐっと渋顔を寄せてきた。


「名前さんとの時間、ゆっくりとりなよ」
「プロポーズ成功してあぐらかいてる場合じゃないですよ」
「諏訪さんと名前さんなら大丈夫です」


ピロン。静まり返った作戦室に場違いな音が響いた。おサノのスマホだった。画面を眺め、おサノは笑みを含ませながら言った。


「まぁ、どっちもどっちという感じがするけどね」
「何にせよ、オレたちは名前さんの味方なんで」


スマホを覗き込みながら「そうですね」と困り顔で笑う日佐人を見て、まさかと思う。


「おいおサノ。その相手、誰だ」
「知らーん」


スマホを奪おうとするもすいすいと難なくかわされてしまった。おサノはそのまま堤の後ろに逃げ込み、「セクハラはんたーい」と余裕顔で俺を煽った。小憎たらしい。


***


会議が終わり隊の面々と別れ、帰り道を歩いた。頭の中を整理しながら、ふと堤の言葉を思い出す。『諏訪さんと名前さんが付き合い始めた時、一部で大騒ぎになったよな。雰囲気も性格も正反対なのにって』。
堤が言った通りだった。ボーダーの連中に名前と付き合ってることがバレた時、「なぜこの二人が?」と首を傾げられた。ありえない。すぐ別れるだろう。色々言われた。

名前とまともに会話したのはボーダー成人組の飲み会がきっかけだった。その日、期限の迫るレポートを仕上げなければいけなかった俺は途中から会に参加した。店内に入り席を探していると、靴だらけの座敷が目に留まった。同時に飲み仲間のボーダー職員が顔を覗かせた。


「諏訪、諏訪」
「どうした?」
「太刀川くんが名字さんにお酒を飲ませようとしていて。止めようとしたんだけど話を全然聞いてくれないんだ」


名前が酒を飲んだことがないことを知った太刀川が調子に乗っているらしい。座敷をそっと覗く。すっかり出来上がった太刀川と、その真正面に座る名前。横に転がってるちっせーのは風間か。周りには酒の席でよく見かける職員たち。最悪のメンツだ。労いの意を込めて下がり眉の情けない顔をした男の肩を叩き、座敷に上がる。


「大丈夫ですって。まずはカシオレからいきますか」
「うん……あっ」


名前の背後からグラスを奪い取る。そのまま何度か喉を鳴らし、グラスをテーブルに叩く勢いで置いた。

「あっめぇ!!」
「あっはは、諏訪さんにカシオレ!似合わねー」
「うっせ」


げらげら笑い転げながらまだ何か言ってくる太刀川を無視し、呆然としている名前の隣にしゃがむ。


「明日の講義のことで話あっから、ちょっと来い」
「え?」


そのまま年上の面々が集まるテーブルへ移動する。東さんの隣がちょうど二つ空いていた。腰を下ろすと名前も戸惑いつつ隣に座った。


「お疲れ様です」
「諏訪、お疲れ。レポート、大変だったな」
「急にぶっ込んでくるの勘弁してほしいっす」
「お、名字もこっちに来たか」
「太刀川に遊ばれてたから回収してきました」


気づかなくて悪い、と東さんは頭を下げた。ぶんぶんと音が出そうな勢いで首を横に振る名前を笑い、東さんはメニュー表を差し出した。受け取って名前の前に広げてやる。


「好きなもん食えよ。奢りだし」


名前はメニュー表を最初のページからゆっくり眺めた。料理の写真を一つずつ確認していく様子を見ながら、一つの考えがよぎる。まさかな、と思いながら俺は尋ねてみた。


「居酒屋来るの初めてか?」


静かに頷く名前。嘘だろ、俺らもうハタチ過ぎてんだぞ。最初は不快で仕方なかった泥酔感にすっかり慣れきってしまっているくらい、俺にとって酒は馴染み深いものだったから、名前を異文化の人間のように感じた。しかし酒を飲まない人間にとっては、居酒屋は縁遠い存在なのだろう。


「最初に食べたほうがいいものとか、何か作法があったりする?」
「ねーよ。適当に好きなもん選べ」


名前はページを行ったり来たりしながらひとしきり悩み、烏龍茶とポテトサラダを選んだ。店員を捕まえ、名前の分とビール、唐揚げ、その他諸々適当に注文する。
運ばれてきた烏龍茶とビールを各々持ち、軽くグラスをぶつけた。


「諏訪くん、同じ講義とってたっけ?」
「いや」
「……ありがとう」


ひと口飲んで落ち着いたのか、名前の声から固さが少し消えていた。今まであまり話したことがないからわからないが、こっちが普段に近いのかもしれない。


「珍しいな、飲み会来るの」
「太刀川くんに食事会って聞いたの」


飲み会と言うと名前が断ることを見越していたのだろう。明日しばいとくか。騒がしい太刀川のテーブルを横目で見ていると、料理が運ばれてきた。小皿を受け取って名前の前に一枚置き、俺が注文した料理を指し示した。

「食え」
「でも、諏訪くんが頼んだんじゃ……」
「俺ひとりじゃ食いきれねぇから」

皿に色々盛ってやると名前は観念し、手を合わせて箸をつけた。静かに料理を咀嚼する名前を横目で眺める。そのまま連れてきてしまったが、こいつ、俺と飲んでいていいのだろうか。移動しないところを見ると、他に気の知れた女子の知り合いがいないということか。俺としてはレポートで気力を削られゆっくり飲みたい気分だったから、大人しい名前と飲むのは何ら問題はないのだが。しかし、そんな心配はものの数分で杞憂に終わった。


「マジかよ、あの新作読んだのか?」
「うん。前作が売り切れで悔しかったから、今回は予約したんだ」


本部で何度か読書をする名前を見かけたことがあったから話題を振ってみると、思った以上に話が弾んだのだった。そのまま延々と本の話をした。名前はジャンル問わず何でも読むらしく、ミステリ作家の話にも食いついた。


「あの作家、毎度毎度、定番になってるシーンがあんだよ」
「伝票の取り合い」


俺と名前の声が重なる。顔を見合わせ、二人で腹を抱えて笑った。


「推理小説で聞き込み調査は重要ってことはわかるんだがな。場面設定がほとんどカフェで、毎回登場人物が伝票を取り合うって」
「なぜか嬉しくなるよね。今回もあった!て」
「逆になかったら物足りねぇな」

確かに、と名前はまた笑いが止まらなくなったようだった。
こいつ、こんな風に笑うのか。笑ったところを見たことがなかったから、ついその表情を無遠慮に眺めてしまった。嬉しい、と思った。この時は話の合う奴を見つけたからだと思っていたが、こいつの笑顔を引き出してやったという優越感だったのだと、今ならわかる。
会がお開きになった後、帰る方向が同じ俺たちは共に帰路についた。


「助け舟出してくれて、ありがとね」


会話が途切れた時だった。 最初に話をした時よりはっきりした声で名前は言った。


「断ったらその場の空気を悪くしてしまう気がして。諏訪くんみたいにはっきり言えるようになれたらいいのに」
「いいんじゃねぇの。周りのことを考えられるってことだ。それがお前のいいところだろ」


普段口にしないようなことが零れたのは、酔っていたせいなのかもしれない。妙に気持ちが高揚していたのを覚えている。


「そんな風に言われたの、初めてだよ」


急に名前が立ち止まった。数歩先を行ってから気づき、そのまま名前のほうを振り返った。


「家、すぐそこだから」
「本当に近くか?遠慮すんなよ」
「うん、もう見えてるから大丈夫。今日、諏訪くんのおかげで楽しかった」

ありがとう、と名前は顔を綻ばせた。こんな風にも笑うのか、と本日二度目の感想を抱いた俺は、なんと言葉をかけたっけか。確かに言えるのは、この日以来名前のことが頭から離れなくなったってことぐらいだ。

あの日の名前は、固さはあったが時間が経てば素直な物言いをしていた。のちに「諏訪くんには思ってることが言えるんだよね」と打ち明けてくれた時、どれだけ嬉しかったことか、あいつは知らないだろう。だから、頭に血が上ってしまった。俺になら言えるんじゃないのか。俺に言えないというその事実と、あいつが離れていくのではないかという恐れが重なった。今までにも同じようなことが幾度かあったが、その度に同じことを思った。「黙って聞いてるから遠慮なく言え」。何度も伝えた。それでも名前は口を閉ざす。当たり前だ、そういう性格の女なのだから。そんな名前だから惹かれたっていうのに。わかっていても、この感情は消えなかった。

ようやく気づいた。俺は名前のことを見ていなかった。自分の中に渦巻く不安を消したい、その一心だった。


***


「おかえり」
「ただいま」


帰宅すると、名前の声が出迎えた。いつもより強ばった様子に、少し心が重くなる。名前も帰ってきたばかりのようで、椅子に鞄が置いてあった。その傍らに立つ名前のもとまで迷いなく向かい、俺は頭を下げた。


「悪かった」
「ごめんなさい」


ほぼ同じタイミングだった。視線だけ向かいにやると、同じ姿勢の名前が見えた。俺たちは恐る恐る頭を上げると、数秒向かい合った。口を開こうとした途端、名前の目が怯えの色を滲ませた。


「洸太郎、待って。私の話を聞いて。お願い」


別れるなんて言わないで。絞り出された声に俺は慌てた。


「言うわけねぇだろ!とりあえず座れ」


名前をソファに座らせる。グラスに麦茶を注いで渡すと名前はひと口飲み、そのままじっとグラスの中を見つめた。その間俺は自分の麦茶を用意し、隣に座ってちびちび飲んだ。グラスが空になりかけた頃、名前はゆっくりと息を吐いた。


「うまく話せるかわからないんだけど、聞いてほしいの」


名前は深呼吸をした。何度か繰り返すと、ゆっくりと俺の目を見た。


「洸太郎が結婚式に積極的ではなさそうだってこと、わかってたのに聞いた。式をしたいって率直に言えばいいのに。でも洸太郎の困った顔は見たくなくて。お前はどうしたいんだ、て聞いてくれる、私の気持ちを汲んでくれる、そう期待して」


話を進めるにつれ下を向いていく顔を一生懸命上げながら、名前は言葉を探した。


「私、甘えてた。洸太郎なら私のことよくわかってくれてるから、なんて、そんな風に思ってた」


ごめんなさい、と名前はもう一度頭を下げた。その頭を両手で挟み、こちらを向かせる。今にも涙が零れそうな瞳に、情けない男の顔が映っている。名前にこんな顔をさせて、俺は本当に何をやっているんだ。


「俺の話も聞いてくれ」


名前がこくんと頷く。今度は俺が深呼吸をする番だ。


「俺が式とかそういうのが嫌いだってこと、名前がわかってくれてることは知ってんだ。そのことに甘えて、理由を説明しなかった。わかってるのになんで聞いてくるんだと思ってしまった。お前の性格を否定もした」


何も言わず俺の話に耳を傾ける名前。訴えかけるように俺は続けた。


「俺に何も言えなくなる、てのが、お前が離れていくような気がして不安だった。本当に、悪かった」


部屋が静かになった。どちらも何も言わず、身じろぎさえしなかった。しばらくし、俺は思いきって口を開いた。


「……それでもお前は、俺と一緒になってくれんのか」
「洸太郎こそ私でいいの……?」
「お前がいいんだよ」


ごまかしてはいけない気がした。羞恥心なんて気にしていられなかった。
ふ、と名前は俺の顔を見て軽く吹き出した。


「洸太郎、真っ赤だよ」
「うっせ!」


肩から力が抜け落ちる。名前も同じだったようで、大きく息を吐き出していた。ふと時計を見ると19時を回っていた。思った以上に話し込んでいたらしい。


「晩飯、外で食うか」
「洸太郎がよければ、あそこがいい」


名前が挙げたのはあの居酒屋の名前だった。結婚前夜なのにいいのか、と冗談めかして言うと、名前は笑いながら大きく頷いた。


「うん……いろいろ、話したいし」
「ああ、俺もだ」


今回のこと。これからのこと。話したいことが山のようにある。名前の考えていることが知りたい。俺の考えを伝えたい。出会ったあの頃の俺たちはそれができていた。だから、きっと大丈夫だ。


***


太陽が砂浜を照らし、辺り一面が真っ白に輝いている。正直、目を開けるのが辛い。手で廂(ひさし)を作ってみるが、あまり効果はなかった。慣れない衣装───ウェディングドレスとタキシードにそれぞれ身を包んだ俺たちは、カメラマンの指示通り砂浜を歩き海に近づいた。


「あっちーな」
「夏生まれなんだから我慢してくださーい」
「へーへー」


結婚式をしたくない俺と、式を挙げたい名前。俺たちは話し合いを重ねた。それぞれの意見の中間地点を模索した結果、フォトウェディングという選択肢を見つけた。どうせなら新婚旅行も一緒に、ということで、フォトプランを付けられるツアーを申し込んだ。


「その辺りで一度止まって、向かい合ってください。手を繋ぎましょうか」


少し離れた場所からカメラマンが声を張る。俺たちは向かい合った。互いの手を取り、目を合わせる。この状態で撮影かと思っていたが、「適当に何か喋ってください」と再び指示が飛んできた。


「適当に、てなんだ」
「お昼ご飯、どこで食べる?」
「本当に適当かよ、お前。ホテルの近くにあったあの店とかどうだ」
「大きいお肉の写真があったところ?あれおいしそうだったね。そこにしようか」
「そうだな」


昼飯を食べる店が決まったあと、名前は急に何も言わなくなった。こちらをじっと見つめ、静かに笑みを浮かべている。


「ねぇ、洸太郎」
「なんだ?」
「愛してるよ」


突然すぎて思わずむせた。こいつ、さっきまで飯の話をしていたのにいきなりなんなんだ。そらした顔を戻すと、名前は変わらずこちらを見ている。覚悟を決め、気づかれないようなるべくゆっくりと息を大きく吸いこんだ。


「俺も、愛してる」


言葉にするとは思っていなかったのだろう。名前は目を見開き、みるみる赤くなっていった。からかってやると腕を軽く叩かれてしまった。
離れた名前の手をつかまえて握り、もう一度向かい合う。まだ赤みの残る顔で、俺たちは笑った。







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