ふわり、風涼し





 不運にも日差しはこちらのホームをギラギラと照りつけていた。次の電車は三分後。そんなわずかな時間でも我慢できないくらい、今日は暑い。おもむろにカバンからハンディファンを取り出すと、洸太郎に向けてスイッチをオンにした。「うおっ」と小さく声を上げた洸太郎を笑い、見せつけるようにファンを左右に振る。
「今日、猛暑の予報だったでしょ?友達が心配して買ってくれたの」
「おー、ありがてぇな」
 洸太郎はファンを私の手から奪うと、こちらへと向けてきた。
「私はいいって。あなたのほうが汗かいてるでしょうが」
「夏は天敵だって毎日バテてる奴が何言ってんだ。オメーが使え」
 到着のアナウンスが響き、まもなく電車が滑り込んできた。ドアが開き、ほてった肌を冷気がつつむ。
「そいつに土産買っていかねぇとな」
「そうだね、水族館だしペンギンのもの買いたい」
「ペンギン好きなのか」
「彼氏がペンギン座らしくて、よく話してるから。洸太郎と一緒だね。うちもペンギングッズ買ってく?」
「いやうちはいいわ」
「えー、なんで?」
 ようやく見つけた空席に座る。もう一言文句を言ってやろうと洸太郎を見ると、先ほどと同じくファンがこちらに向けられていた。ふふ、と思わず声がもれた。
「なんだよ」
「なんでもないです」








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