今年のお鍋はなんの味




 洸太郎が鍋の蓋を取り、目の前が真っ白な湯気で覆われる。その向こうからゆっくり現れたお肉と野菜。ぐつぐつ煮えるそのさまを見て、じゅるりとよだれが出た。

「いただきます!」
「はえーな」

 お箸を握る私を見ながら呆れ笑いをする洸太郎。仕方ないじゃないか、あんたの作る鍋が私は大大大好きなのだから。大晦日は洸太郎の家でお鍋をつつき、年越し蕎麦をすする。男子の食欲恐るべし、と呆気に取られたものだが、今ではこれがなければ年を越した気になれないのだから不思議だ。

「シェフ、今年のお鍋は……」
「キムチ鍋」
「やったー!白菜持ってきた私、天才すぎ!」
「半玉も持ってくるヤツがあるか、アホ」

 そんな会話を交わしながら白菜をもしゃもしゃと消費していく。合間に洸太郎は缶ビールを、私はチューハイをあおる。忙しなく動く洸太郎の喉を眺めながら私は呟いた。

「毎年ずっとこうやって洸太郎とお鍋食べたいな」
「プロポーズかよ」
「そうだけど」
「そうなのかよ?!」
「鳩が豆鉄砲を食ったような顔ってこんな顔なんだろうなぁ」
「お前っ、あのなぁ!」

 ぐしゃぐしゃと後頭部をかきながら、洸太郎が私を睨めつける。真っ赤な顔してそんなことしてもかわいいだけだよ。チューハイを飲みながら、口から変な笑い声がもれた。








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