おやすみ前のおまじない






「飲むとよく眠れるらしい」。数日前から眠れないと落ち込む私を見かねて、同僚がくれた乳酸菌飲料。ごくごくと一気飲みする私を、洸太郎は何か言いたげにじとっと眺めている。


「なに?」
「それ、効果あるのか?」
「結果は明日のお楽しみってことで」


さぁ寝ようと寝室に向かう。が、ふいに手首を掴まれドアの前で脚を止めざるをえなくなった。振り向くと、洸太郎はやけに真剣な顔つきをしていた。


「なんかあったか」


あったよ。でも忙しいあなたにこんなこと話しても迷惑かけるだけだから。


「俺に迷惑かけるとか考えてんのか」
「エスパー?」
「何年オメーのこと見てると思ってんだ」


えーと五年くらい?と笑う私に洸太郎は不快そうな顔をする。テンションを間違えた。きちんと洸太郎の前に向き直り、深呼吸する。突進するように抱きつき、洸太郎の胸に顔を埋める。いま、顔を見られたくなかった。


「仕事、この前からミスってばかりで」
「そうか」
「わがまま言っていい?」
「おー」
「手、握ってほしい。あとぎゅーってして」
「同時にできねーよ」


洸太郎は体を離すと、私の手首を引っ張りながら寝室のドアを開けた。


「寝転がったほうがどっちもやりやすいだろうが」


もごもご言う彼がなんだかかわいくて、思わず笑ってしまう。ベッドに横向きに寝転がると、洸太郎も横になり、大きな手で私の頭を自身の胸へと引き寄せた。


「手は?」
「だーもうっ、やるから」


頭に添えられていた右手が私の左手をぎゅっと握り、太ももの上にぽてっと転がる。洸太郎の指が、ぽんぽんとその上でゆるいリズムをとる。
今日はよく寝れる気がする。なんたって、洸太郎とあの子がくれた乳酸菌飲料が味方についてくれてるんだから。









ついったーのタグ「夢カプにフォロワーさんからもらったものを与える」(うろ覚え…)でヤ〇ルト1000をいただいて書いた話でした!




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