キスをちょうだい





隙をついて飛びついたあの瞬間の驚き顔。なんて顔してるの、かっこいい顔が台無しだよ。背伸びしてキスをした私から距離を取り、新之助は目を白黒させた。


「なっ、なん……?!」
「充電です」
「充電……?」
「うん、元気もらった。じゃあ個人戦頑張ってくるね!」


去り際にもう一度振り返ると、石みたいにかちかちに固まっていて吹き出してしまった。やってやった、という高揚感。キスをするたび、真っ赤になって慌てふためくかわいい彼。そんなきみをからかうのが私は大好きだった。
ああ、あの頃の辻新之助はどこへ。のしかかる彼を押し返すも、びくともしないので諦めて腕の力をゆるめた。ソファの背もたれにあった背中はずるずると座面に沈められてゆく。新之助しか見えなくなったその時、そっとキスを落とされた。二回、三回。私が抵抗しないことに気をよくしたのか、回数をかさねるごとに深く、深くなってきて、さすがに我慢ならなくなった。


「ちょ、どうしたの」
「ん……充電?」


何を言っているのか、と不思議そうに首を傾げるその様子に私は頭を抱える。変なところを学習しないでほしい。髪を撫でていた彼の手が頬にそっと触れる。


「顔、熱い」
「うるさいっ」


もうちょっと文句を言ってやろうと思ったのにやさしく口付けられ、反抗する気持ちはみるみるしぼんでゆく。小さな音を立てながら離れた彼の唇をぼうっと見ていると、遠慮がちに新之助は口を開いた。


「明日も頑張りたいから、名前ちゃんから元気もらいたいんだけど」


さっきまで積極的だったくせに、急にためらわないでほしい。そんなかわいい顔見せられたら。返事のかわりに彼の後頭部に手を回し、私は唇を押しつけた。








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -