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そこには、洋館の談話室に似た風景が広がっていた。
赤いカーペット、そろえられた大理石の床にソファ。明り取りのための窓は大きく、上質で重厚なカーテンが脇に溜まって控えている。天井には控えめだが上品なデザインをしたシャンデリアがたれており、そのほかには花や鏡、キャビネットといった家具が空間を飾っている。
その中で異質を誇っているのが1つの真っ黒な箱。そしてそれを囲んだ2つの人影と9つの人形。
その11の口は思い思いに語り出した。
「今回はもしかして、と思ったけど……惜しかったわぁ」
「あーあ、今回も駄目だったぁ!!」
その影は緑、黄色。
「ぼく、おそとにでたいよ……」
「次頑張ろうよ、兄様。ね?」
白、水色。
「私、何か粗相でもしましたかしら……」
「…………」
桃色、灰色。
「ふん、だから言ったんだ。あんな男が僕らを買うなんて」
「身の程を知れ、ってか?兄貴は厳しすぎンだよ」
黒、茶。
「僕はあの人好きだったよ?目とかいい感じ」
「君に嫌いな人なんているのかい?紅」
紫、青。
「ほら、文句より先に言うことがあるだろう?」
そして、赤。
くるりと円を描いて、その箱を囲んでいる。
おめでとう、そしてご愁傷様。
落ちて生まれた新しい家族への祝辞。そして落ちて生まれてしまったことに対する落胆と慰め。
また、生まれてしまった。
言葉を尽くしきり、すっかり黙り込んでしまった兄弟の中で、赤の男、蘇芳は彼らを見下ろしながら呟く。
「大丈夫、きっといい主人が見つかるさ……」
今日もその塔には人形を求め、人形たちに求められて、何も知らぬ人間が迷い込む。
今日もその塔では1人、また1人と家族が増えていく。
「ようこそ、可愛い末弟。ようこそ、人形塔へ」

箱の中の彼はこの状況を嘆き、そして問うだろう。彼どころか、ここにある箱の中の者全てが、問いたくても開かない口を抱え込んでいる。
もし問える者なら問うてみるがいい。
さぁ。

「人形塔は誰がために?」

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