しえみはゲーセンも初めてなんだろうな。俺もあまり来たことはないけど。大音量の音響に負けじと俺としえみは声を張り上げる。
「燐!すごいね!これが、UFOキャッチャーってやつ?」
「やりたいか?」
「やってみたい!」


俺としえみは五百円ずつもつぎ込んだのに、取れたのは怪しいライオンのぬいぐるみだけ。口をガァっと開けて、目はギョロッとしてるし、なんじゃこりゃあ!?もう少し…可愛いくしてくれたって。しかも手乗りサイズなのがまた。
「ぶはっあははは、おっかしい!」
「ふ、あははは!変なのとれちゃったね、燐」

なんだこれ!二人で笑い転げてしまった。どうしようかと迷ったあげく、じゃんけんで負けたしえみが持って帰ることになった。


それから小太鼓の達人で二人そろって惨敗したり、足のリズムゲームでしえみがずっこけてたり、もぐら叩きでしえみのハンマーに俺の手が叩かれたりした(ちょっと痛かったですしえみサン)。
二人ともゲーム音痴だったけど、かなり楽しかった。
ふとしえみが、ある一点を見詰めていることに気付く。
視線を辿ってしえみに聞いた。
「プリクラ?」
「燐、燐!あれ、やろう?」
そういうのって、恋人同士でやるんじゃねえの?
なんてバカなことを、片想いの子に言うやつがいたら俺のところに来てほしい。多分だれもいないから。

しえみの気が変わってしまう前にプリクラ機に乗り込む。
「燐はプリクラやったことある?」
「いや、俺も初めて。」

百円ずつ入れる。
[さぁ、ポーズをとってね☆こんなポーズはどうかな?]

なぜかノリノリで抱きついている二人の女の子が画面に現れて、いやいや出来ねえよ出来ませんよとキョドってたらシャッター音。しばらくして、どぎまぎして宙を見ている俺としえみの写真の確認が出てきてなおさらいたたまれない。
[さぁ、ポーズをとってね☆次は肩を組んでみよーう♪]

もうこの機械は俺らをどうしたいんだ!気にしない気にしない…「燐、肩組むんだって!」っていやいやしえみ、聞かなくていいよこんな機械の声!
3!
あぁもう!
2!
どうなってもしらねぇ!
1!
「しえみ!」

パシャ☆

[こんな写真が出来たよ!]

真っ赤になってしえみの肩に手を置いている俺、同じく真っ赤になって固まってるしえみ。……もうつっこむのやめていいですか。俺つかれました。

[最後の一枚!仲良くピース!それじゃあいっくよー☆]

3!2!1!パシャ☆

今までで一番よく写ってる写真が、最後に撮れてよかった。二人とも顔は赤いままだけど。

ほっとしたのもつかの間、また非情なアナウンスが流れた。

[いい写真は撮れたかな?それじゃあ可愛くデコってみよう!隣へ移動してね☆隣へ移動してね☆隣へ…]

「ぎゃっ!ペン!しえみ!タッチペンどこ!?」
「きゃあー!燐、なんか変なの出てきた!どう消すの!?」

[あと30秒!]

「しえみなんか変なイラスト出てきた!」
「あれっほんとだ!あ、日付のやつ…」

[終了!お疲れさまでした☆外のプリクラを取って帰っていってね♪]


……印刷されるのを待つ俺らは、互いに何も言わなかった。プリクラってすげえな。何がすごいって、あのテンションがすごい。

印刷されたプリクラはしえみがギリギリ最後にくっつけた日付以外何もない。真っ赤になっててなんとも恥ずかしい写真だけど、結構嬉しかった。だって、しえみと二人きりでプリクラだぜ?雪男には絶対にバレないようにしなくちゃ。
ご丁寧に机と鋏が置いてある場所で二人分に切って、俺としえみは財布の中にプリクラをしまった。

気が付くと時計は3時をまわっている。
「なんだか、今になってお腹がすいてきちゃった。」

「そーだな、もう腹ペコだ。何で今まで気付かなかったんだろ」

ゲーセンを出たあと、フードコートに行く。ああ、大音量の音響のせいで耳がごおごお鳴っている。あと頭がくらくらする。

二人で、チーズバーガーセットを頼んで席につく。お昼時を過ぎたからかかなり空いていて助かった。
俺がバーガーにばくっといくと、しえみも真似してかじりついた。
「おいひーね、ひん!」
「ほうだな!!」

ゲーセンでお金を使いすぎたので安上がりな昼食になっちゃったけど、美味しいのでこれはこれでよしとする。

次へ




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -