二人の遊園地A | ナノ


「あ、そうだ!じゃあ燐次はジェットコースター乗ろう!?ジェットコースター!!遊園地来たら絶対行こうと思ってたの!」

しえみはもう五歩先を歩いてて、早く早くと急かされた。

「そうだな。しえみは初めてだから、先に半回転するやつ乗ろうぜ!」


丁度ジェットコースターのの一番前の席になった。俺が先に右側に乗り込み、左におずおずとしえみが座る。

ガタガタと音をたてて動き出した最初の内は少し会話も出来るけど、上り始めるとお互いにだんまりになる。一番前だから、視界いっぱいに広がった青空がさらに心臓をバクバクさせる。俺もちょっと緊張してきた。

上昇するにつれてゆっくり進む。隣を眺めると、緊張してぎゅうっと手すりにしがみついてるしえみが見えた。目を閉じまいと必死なのか、逆に目を見開きすぎていて、なんというかすごい顔である。今にもエメラルドが溢れ落ちてしまいそうだ。

一瞬奇妙に静止した後に、突然遊園地のアトラクションと小指サイズの人々が見えた。

あぁ落ちるな、そう思った瞬間の風を受けて降下するごうごうという音と、俺ののどから軽くひゅうっと音が混ざる。後ろの座席から女性のかん高い叫び声が一気に上がり、気がつくとあっという間になだらかな地面だった。


降りてしえみに聞いてみた。

「なぁ初ジェットコースターどうだった?」

「びっくりした!すごく速かった!」

「お前ピシって固まってたよな!」

しえみは落ちてる間、びっくりしすぎて硬直していた。

「り、燐っ見てたの!?」

「わりーな!」

アハハと笑ったらしえみが頬を膨らませた。

「ホントはね、ジェットコースターで『きゃあー』って叫ぼうと思ったの。でもね、驚いて叫べないまま落ちちゃった」

「まぁしばらくしたら慣れるからな、あ。次はゆったりするやつ乗ろうぜ?」

「じゃあ!メリーゴーランドに乗りたいな」

「了解」

子供っぽいきらきらした音楽の流れるメリーゴーランドに乗り込む。しえみは嬉々として馬にまたがっていて鼻歌なんて歌ってる。ゆらゆら上下に揺れる度ににこにこして、なんかすげーかわいかった。
この年で男がメリーゴーランドっていう恥ずかしさから俺は、馬車に乗ったけど。


次に乗ったのは、くるくる上空を回る鳥のアトラクション。空が近くて風が心地良いし、二人乗りの為、隣にはしえみ。なんだか最高の気分だ。

「ねえ燐、アレ何?お船みたいなやつ」

「バイキング?ジェットコースターじゃないけど、あれも結構スリルあるやつだぞ」

「じゃあ今度は叫ぶ!」
「じゃ次はあれな!そのあと、休憩しよっか?フードコートで飯食おう」

「分かった」


バイキングでは案の定しえみがひゃあひゃあ言っていた。一番大きな角度になるとこなんて、「燐!もうむりだよー!」なんて泣きついてきて困った。お、俺だってなあ!しえみの手前かっこつけて余裕ぶってるけど、こわいっつーの!しえみが自分でいっぱいいっぱいで良かったと思う。片想いしてる女の子に、必死で手すりに掴まりすぎて冷や汗かいてました、なんて知られたくねえもん。
端っこだときついから、真ん中の方に座ったんだけどなぁ。生き物はつくづく前向きにしか生きれないんじゃねーかと思う、人間も悪魔もさ。後ろに進むあの恐ろしさといったら!

降りた後には見事にどんよりした男女二人。

「りんー、今からご飯はむりだよ…」

「大丈夫…俺も…一応座れるとこ探そうか」

ぐったりしてベンチを探すけど、どこもお昼時だから空いてない。うーん。ふとフードコートの隣にあるゲーセンが目に入った。暑いし、中入ろうか。



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