信じられない。あの日から、もう1週間も経ったなんて。神木出雲は携帯のカレンダーを眺めて、大きくため息を吐いた。
──1週間前───
「ふふ、出雲ちゃん眉間がぎゅう、ってなってるよ。」
「あ、朴…ごめん。」
「気にしてないよー。」
私と朴は、一緒にお買い物をして喫茶店でひと休みしているところだった。なんでこんなときまで、私は。
「ふふっ、出雲ちゃんはかわいいなぁ。志摩君のこと、考えてたんでしょ?」
「ぱ、っ朴!?何言ってるのよ!」
ウソ、自覚はしてる。私はアイツのことを好きになってしまっているのだ。なのに私の態度はそれに反比例して。
「でも、志摩君に告白されたんでしょ?両想いじゃない。」
私は少しの間、言葉が出なくて俯いた。
「……素直になれないのよ。告白されたときだって…」
そう、告白されたとき、いつもは軽く好きだとか言ってたクセに、あの時のアイツはいつになく真剣で。まるで少女マンガや映画のワンシーンみたいで、くらくらした。
「それだけ、志摩君も出雲ちゃんが好きなんだよ」
それなのに!
アイツときたら、付き合いだした途端また最初みたいに軽いノリ!
「もうなんなの…ワケわかんない。」
「でも男の子って女の子に甘えて欲しいものだよね。」
こわいくらいに、にっこにこと私の顔を眺める朴。この確信犯め。
「なにいって…」
「志摩くんもやっと付き合えた愛しの出雲ちゃんに、きっと甘えて欲しいんじゃないかな?…あ!もしかしたら、『俺出雲ちゃんに好かれてへんの?』とか勘違いしちゃってるかもしれない」
「えぇ!?そんなことないのに…!」
「だからさ、出雲ちゃん甘えてみなよ!私も全力で応援するから!ね?」
「ッッ、…仕方ないから頑張ってあげる」
「うん、応援してるね」
そしてそれから一週間、私の行動は逆に、更に悪化してしまったのだ。
志摩廉造は、とても涙目である。玉砕覚悟で告白し、奇跡的にもようやく付き合えたはずの彼女、神木出雲がことごとく自分を避けるからだ。
「あかん…なんか俺悪いことしたん?なんも身に覚えないんやけど…」
最初は単純に、見かけると早歩きで去ってしまうだけだった。その時は単純に気付いてへんのかな、と思うだけだったのだが。
3日目位で、さすがにおかしいと気付いた。仕方なくメール(付き合うときに教えてもらえたんや)を送った。「なんで避けるん?」だなんて、答えづらいのは分かっていたから、こう打った。
┌──────────┐to:出雲ちゃん
今度デートせぇへん(*´▽`*)?最近会えへんから淋しいわぁ…。出雲ちゃんの予定に合わせるから、メールしてな(^O^)?
from:志摩廉造
└──────────┘
何度も文面を見直して、送信したメールだ。コレなら返しやすいと思ったけど、結果は見ての通り撃沈である。
好きや好きやと、俺がじゃれつくと真っ赤になって俯く彼女を、かいらしいなぁと眺めていた。話題を振ると、会話を繋げようと頑張ってくれる所とか。
…嗚呼!出雲ちゃんが足らへん。
末っ子は甘えん坊だとか寂しがり屋とかいうらしい。末っ子の俺にとってこの状況は余りにもつらすぎる。
「どうせ幻滅されたんとちゃうん?お前はがっつきすぎなんや」
幻滅?
そうじゃなくて、もしかして、出雲ちゃんは最初から俺んこと好きやなかったんじゃないか。ああ見えて彼女は押しに弱い所がある。…断れなくて、付き合った?
「ハハ、彼女無しの坊に…言われとうないわぁ…」
「歯ぁくいしばれ志摩!」
「ちょ、坊暴力反対や!ギブ、ギブ!」
ほんま、どないしたらええやろ。
「とりあえず、会って話し合うしかないんやないですかね?」
「せや、なぁ……」