海へッ



しえみと俺は今、海に来てる。
いつだったか、「海に行ったことがないから行きたいなぁ」って呟いたしえみに、「じゃあ今度デートすっか、」と言ったからだ。

俺だってまだそんなに来たことねーけど、(確か一番最近のやつは志摩と出雲と三人で雑用させられたときだっけ?)やっぱ彼女の要望にはこたえてやりたくて。今日が晴れてて良かった。

海に着いた途端、宝石みたいな目をもっときらきらさせてしえみが笑う。
「燐、匂いがしょっぱい!これが海の匂いなんだぁ。」
「そーだな」
「あ、海の砂浜の方って燐の目の色みたい!」
「え、」
「ね、早く海に入ろうよッ!」
「おー」
無愛想になっちまうのはしょうがねぇと思う、気を抜くと志摩になりそーだ。
「まずは着替えよーぜ、…ちゃんと水着持ってきたか?」

「うん、神木さんと朴さんにお買い物付き合ってもらったんだ!今着てるんだよ。下に着てるから、脱ぐだけでいいんだって!」

「あ、おいッここで着物脱ぐなよ」
きょとんとこちらを見てくるので参った。
「とりあえず更衣室あるから、行ってこい。日焼け止めも塗って来いよ。赤くなるといてーから。ここで待ち合わせな」

転けんなよー、と後ろから声をかけてやったのに、相当はしゃいでんのか案の定しえみは盛大に転けてた。




やっぱり俺の方が先に待ち合わせ場に着いた。俺って暑がりだから、水着の上に尻尾を隠すために着ているパーカーが暑くて、死にそう。あ、やべ。しえみに言っといて俺日焼け止め持ってくるの忘れちまった。後で借りるか。
「あぢぃ……」
砂浜前の階段に座り込んで後ろに伸びをしたら、後ろに見慣れた金色の頭。
「りーんッ、」
「〜っ!?おま、ちょ、…え?」
「ごめん遅くなっちゃった。へへ、…どうかな?」

淡いピンクと白のレースのビキニを着たしえみが、その場でくるっと回ってみせた。
今俺すっげー赤くなってると思う。暑さもあいまってぶっ倒れちまうかも。いや、情けねーから意地でも倒れてたまるか。
てか普段は着物か制服で絶対見えないおへそとか、真っ白な手足とか。見てたらなんかくらくらしてきた。

ずっと見てたことに気付いて慌てて目を逸らすと、しえみが不安そうに見上げてくる。

「似合わないかなぁ…?」
「いや、可愛いーけど…どー。」
「…ホントに?」

しえみがあんまり自信なさげだから(慣れてなくて不安なのは分かるし)、カレシとしては取り敢えず腹をくくるしかねー…のか?
えぇい、こうなったら照れ臭さとかは全部無視することにした。

「ぉ、う。すっげー可愛いって。な?」
でもなんつーか心臓に悪いんですが。そしてすっげーどもるんだけど。…こうゆーとき、さらっとかっけーこと言えたら良かったのに!
あれ、でもしえみには十分だったみたいだ。
「ぇ…!あ、ありがと、ぅ?」
最初から予想はしてたけど、やっぱお互い真っ赤になった。

「だぁもー、俺もパーカー尻尾のせいで脱げねぇから取り敢えずお店行くぞ!せめて上着着てくれ!!はずい!…あとついでに、浮き輪とかお土産とか買ってこーぜ。」
手を引っ張って、しえみを引きずるように歩き出す。
「あ、燐私浮き輪欲しい!」

「おー、早く買って海入るぞ。」

「うん!」


(「え、燐日焼け止め忘れちゃったの!?もう、私が塗るからちゃんと座って!」
「いや、自分で塗るから!!(色々とヤバイって!)貸してもらうだけでいいから、な?(汗)」
「そっかー。」)





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