【雪シュラ雪】 ──ゆきお……雪…。お、そうだ。─ 明日出す予定のプリントを作っているうちに、いつの間にか僕は寝ていたらしい。突然降ってきた頬の冷たい感触に、僕は慌てて目をこじ開ける。 「にゃははっ、だいせいこー!」 「…シュラさん」 冷たい物の正体だったサイダーを受け取り、僕は苛々を押さえるために深くため息を吐く。 「起こしてくださってありがとうございます、あとサイダーも。でもしばらく話しかけないで下さい。僕は貴女と違って忙しいんです」 もう一度ペンを取り机に向かおうとすれど、それはまた叶わなかった。 「シュラさん、貴女は何がした」 首を羽交い締めする彼女の手を無理やりほどこうとして失敗した。何で僕より力が強いんだ、この人は。 「寝起きの“びびり眼鏡”に教えてやるにゃー、お前。目やに付けてるぞ?眠気覚ましに顏洗ってこい」 「…はぁ、…」 彼女の腕がするりと離れた。僕は立ち上がってお手洗いに行く。 ふと鏡の前に立って、僕はもう一度深くため息。 鏡の中の僕は、右目に一筋の跡がある。「顔を洗え」とはこのことか。それにしても、どうやら僕は相当疲れているようだ。眠りながら泣くだなんて。 そして彼女は、面倒な人の癖して時々こうだから困る。 顔を洗って気を引き締め、無造作に拭う。さあ、プリントが終わったら今日は上がり。あとひと頑張りだ。 完 2012/05/04 01:22(0) |