フリルスカートに秘匿<後>

※来神時代 ※女装 ※R18


廊下に並ぶ客は途切れることなく続いた。結局、全ての客を案内するよりも菓子やドリンクの在庫が尽きる方が早かった。文句を言う客を総出で帰らせて、教室内に残った生徒たちは疲労で椅子や床に座り込む。現在の時刻は十五時を過ぎたばかりだ。学園祭の締めくくりはグラウンドでのキャンプファイヤーと決まっているが、開始時刻は十八時なのでまだ二時間近い猶予がある。疲れを滲ませながらも数人が片付けのため重い腰を上げはじめると、午前中ぶりに担任教師が顔を覗かせた。喫茶店の評判は教師陣にまで届いていたらしく、担任教師は優しく生徒たちを労う。そして、片付けが終われば自由時間にしていいと告げて去っていった。それによって断然気合いが入ったのか、生徒たちは協力しながら片付けを開始する。そして数十分で片付けは終わり、着替えの必要がない裏方の生徒たちは我先にと散っていった。着替えが必要な表方の生徒は女子から着替えることになり、男子生徒は全員廊下に出されてしまう。臨也は門田のジャージを再び羽織っていたが、廊下に居れば嫌でも人目についた。

「……女子の着替えは長引きそうだな」

壁に凭れ掛かっている臨也に話しかけると、僅かに苦笑しながら顔を上げる。門田が息苦しさからネクタイを緩めると、臨也も軽く息を吐いてブラウスのボタンを一つ外した。

「お化粧直したり髪整えたりもあるだろうしね」
「お前は化粧落とさないでいいのか?」
「んー……これ、メイク落としシートだっけ?もらってあるよ。試供品みたいだけど、ちゃんと落ちるって。あと肌が荒れちゃうからって……ほら、洗顔料と化粧水も」
「至れり尽くせりだな」
「"折原くんは肌が綺麗だからもし荒れたら申し訳ない"って言われたよ」

臨也はそう言いながら楽しげに唇を吊り上げた。そこに一人の生徒が横切ったが、足取りが異様に重い。よく見るとクラス委員の男子生徒で、とても持ちきれなさそうな数のゴミ袋を引き摺っていた。袋が破けそうなのを見かねて、門田は思わず声を上げる。

「大丈夫か?袋が破けそうだぞ」
「あぁ、門田くんか…。大丈夫だよ。ちょっとゴミの量が多くてね」
「一気に持っていこうとするからだろ?お前は別の片付けもあるんだろうし、俺も手伝うぜ」
「いいのかい?今日は君に助けられてばかりな気がするよ」
「困ったときはお互い様さ。ほら、お前も手伝えよ」

門田に名を呼ばれた臨也は肩を竦め、スカートの裾を指先で摘み上げる。おどけるように浮かべられた悪戯っぽい笑みに妙な色気を感じ、周囲の男子生徒たちは思わず息を呑んだ。

「えぇ?俺、今は女の子なんだけどなぁ」
「……お前のような女がいるか」
「ひどーい」
「冗談言ってないで手伝え。ほら、どうせ暇なんだから」

門田に急かされ、臨也は諦めたように溜め息を吐く。手を伸ばしてゴミ袋を受け取ると、門田を追いかけて歩き出した。焼却炉があるのは教室棟ではなく文化棟の近くなので、十分程度歩かなくてはならない。

「つくづくお人好しだね、君は」
「暇持て余してたのは事実だろ。今にも携帯弄り出しそうだったじゃないか」
「……そうだけど」

臨也は不服そうに唇を尖らせていたが、門田の後ろを離れずついてくる。いつもこれぐらい素直なら頭を痛めることもないだろう。そんなことを考えながら門田は焼却炉を目指して歩き続けた。廊下を歩いていれば、浮かれる生徒たちの様子が目に入ってくる。生徒たちの明るい表情は眩しく、臨也の言う人間観察の楽しさが少しだけ理解できるような気がした。相変わらず臨也に向けられる好奇の視線は気になったが、大きなゴミ袋のお陰で露出している脚が見えにくいらしい。振り返ってまで確認してくる生徒はともかく、ただ廊下に立っている時よりはマシだろう。そうしている内に二人は焼却炉に到着し、ゴミ袋を置いて一息つく。

「はー、つっかれた……」
「生ゴミも多少は入ってるからな。お前には軽い方を持たせたつもりだったが」
「手が痺れちゃったよ」

臨也は赤くなった手の平を振りながら、ぎゅっと眉を顰めた。門田はゴミ袋を焼却炉に放り込んで扉を閉め、臨也を振り返った。近くにあった花壇の端に腰掛けて背筋を丸めている。

「手伝ってくれてありがとうな」

門田が礼を言うと、臨也はすんなりと腕を伸ばしてくる。手を差し出せばぎゅっと握り締められ、ぐっと体重をかけられた。引き上げろという意味だと理解し、門田は腕に力を込める。上に引っ張るとようやく臨也は立ち上がり、その勢いのまま門田の胸に倒れ込んできた。

「ドタチンあったかいねぇ」
「……そういやお前、下は半袖だったか」

ジャージ越しに臨也の腕辺りを触れば、ふわりと膨らんでいる感触があった。ディスカウントストアで購入したものなので、お世辞にもしっかりした作りとは言い難い。生地も当然薄いので、秋風に吹かれれば肌寒いだろう。臨也は門田の胸に顔を埋めたまま、不貞腐れた呟きを零す。

「そうだよ。ジャージ着てても寒い」
「付き合わせちまって悪かったな。……教室戻るか」

門田は促すように小さな頭を軽く叩いてみる。しかし、臨也はその場から少しも動こうとしない。幸い周囲に他の生徒は見当たらないが、誰かに見られれば更に変な噂が立つだろう。細い身体を抱き締め返すと、臨也の腕が背中に回ってきた。門田はそのタイミングを見計らい、ジャージの襟元を広げて呼気を吹き込む。途端に臨也はギャッと悲鳴を上げ、その身体をぐらつかせた。門田は倒れかけた臨也の腕を掴むと、口角を吊り上げて微笑む。

「寒いんだろ?さっさと帰るぞ」

臨也はゆっくり視線を上げ、門田を睨みつける。赤い瞳はひどく恨めしそうだが、寒さのせいか頬が赤らんでいて迫力は感じられない。

「……ドタチンの意地悪」

臨也はそう言い捨て、門田の胸を強く押し返した。臨也は早足で遠ざかっていき、しかし風が寒いのか何度も腕辺りを擦っている。機嫌を損ねているのは一目瞭然だ。門田はどうやって機嫌を伺うか考えながら、臨也を追いかけて教室棟に飛び込む。少し離れた体育館からは、演劇部が朗々と台詞を読み上げる声が聴こえていた。


×


「ハムレット、観に行かなくてよかったの?」

誰も居なくなった教室の扉を開けながら、臨也はそう尋ねてきた。声は僅かに硬いが、そこまで怒っている様子ではない。門田は安堵の息を吐きながら肯定の言葉を返し、教室内を見渡した。生徒たちは既に片付けと着替えを終え、各々の行きたい場所へ向かったらしい。表方と裏方を仕切っていた衝立は片付けられていなかったので、鍵を掛ければ外から着替えを覗かれる心配はなさそうだ。

「……あぁ。優先で入れるチケットを貰ったけど、欲しがってた女子にあげたよ」
「へえ。あんなに手伝ってたのに劇自体には興味ないんだね」
「俺が好きなのはあくまでも原作の―――小説だからな。劇や舞台ってのは、どうしても作り手の解釈が入っちまう。他人の解釈が入って表現方法も変われば、それは原作とは別物だ。もちろんそれが悪いとは言わないが」
「なるほどね」

臨也は納得したように頷くと、衝立の奥へと入っていく。門田は扉に鍵を掛け、廊下に生徒が居ないことを確認してネクタイを緩めようとした。廊下側に背を向ければ上衣だけなら着替えを見られても構わない。しかし、それを遮ったのは臨也の声だ。

「ドタチン、ちょっとこっち……」
「どうした」
「リボンが解けなくて」

そんなにも硬く結ばれていただろうか?という疑問が頭を掠めたものの、門田はネクタイを緩めながら衝立の奥を覗き込む。ジャージを脱いだ臨也がこちらに背を向けたまま、腰のリボンに手を掛けて引っ張っていた。無意識にだろうが、腰を突き出すような体勢になっている。目に毒だ、と門田は軽く息を吐いて腰のリボンへ手を伸ばす。軽く引っ張っても確かに解ける気配はなく、両手を使わなければ解けそうにはない。

「随分しっかり結んであるな。これ、お前が結んだわけじゃないのか」
「うん。解けたらいけないからって女の子に結んでもらった」

リボンが解けると腰のエプロンが床へと滑り落ちそうになる。門田はそれをキャッチして臨也へ渡す。ありがとう、と微笑みながら臨也は門田を振り返った。その胸元はブラウスのボタンが外されており、リボンもホックが外れて傾いている。そこに柔らかな膨らみは見当たらないのに、ブラウスの中から覗く肌色に心臓が不自然に高鳴った。臨也は舐めるような視線で門田を見上げる。

「もういいだろう。あとは自分で着替えられ……」

門田は誤魔化すように咳ばらいをし、そう言って臨也に背を向けようとする。しかし、ひやりとした指に手首を掴まれ、背中に柔らかな感触が訪れた。

「ドタチン」

少し怒っているような声だった。ゆっくり首だけで振り返ると、臨也はじっとり門田を睨め上げている。流石に門田もこれ以上臨也の機嫌を損ねたくはない。観念したとばかりに首を振って身体を反転させた。臨也を抱き上げて机の上に座らせると、確かめるように細い顎のラインを撫でる。

「まだ放課後じゃないんだ。他の生徒が来るかもしれないぞ」
「平気だよ」

臨也は微笑んで胸元を大きくはだけさせ、門田の手を掴んで誘導する。早く触れと言われているようで、門田は苦笑しながらそこに手を滑らせた。外されていなかったボタンを外しながら滑らかな素肌を撫でる。指先に尖りが引っ掛かると、臨也はぴくんと肩を揺らした。

「触って……」

耳元で囁かれた声はひどく甘やかだ。僅かにかさつく指先で尖りを摘みながら、露わになった首筋に口づけを下ろす。薄い皮膚に浮き上がっている鎖骨の窪みを舐め上げると、反射的に臨也の腰が震えた。

「ん、……ドタチン、もっと」

門田はブラウスのボタンを全て外し、臨也の顔をじっと見つめた。赤い瞳は窓から差し込む夕日を受けて一層赤く輝いている。顎を持ち上げて顔を寄せ、触れ合うだけの口づけを何度か繰り返した。それから視線を落とし、門田は指先を臨也の胸へと這わせる。ほんのり赤く色づいた尖りは果実のように艶めいていて、門田はそこにぬるりと舌を這わせた。熱い舌が触れてくる感触に、門田の肩を掴んでいた臨也の手には自然と力が籠る。舐めるだけだった舌の動きは次第に変化し、執拗に尖りを吸ったり歯を立てられた。臨也の腰はもどかしそうに揺れはじめ、耐えきれなくなった甘い声が零れ落ちる。

「あっ……も、やぁ、っ…」
「もっとって言ったのはお前だろ」

門田が顔を上げれば、臨也は複雑そうな表情で眉根を寄せる。

「だって、胸ばっかり……」
「分かったよ」

門田はフリルスカートの中に手を突っ込もうとして、ぴたりとその手を止める。不思議そうに首を傾げた臨也を見上げた門田は、頬を引き攣らせながら口を開いた。

「……汚れないか?」
「今更?クリーニングすれば大丈夫だよ」

臨也は門田の杞憂を笑い飛ばすと、太い首に手を回して擦り寄った。頬に柔らかな感触を感じたと思えば、耳朶に吹き込むような囁き声が落ちてくる。

「続き、しようよ」

焦れるような炎を宿した瞳に見つめられて、その誘いを拒絶できる人間がいるなら尊敬する。門田は臨也に軽く口づけながら手を動かし、フリルの海を掻き分けた。素肌に触れる感触があり、そこから手を上に動かすとフリルとは異なる布の感触を感じる。ゴム部分に指を引っ掛けて引き摺り下ろすが、ふわふわとしたフリルに阻まれてしまう。

「やりにくいな」
「この服、脱いだ方がいい?」
「……いや、それもなんだかな」
「それって、この恰好が気に入ってるってこと?」

からかうように笑って臨也はスカートの裾を持ち上げた。門田は溜め息を吐いてスカートを思いきり捲ると、有無を言わせずそこに顔を埋める。ゆるりと勃ち上がった性器の先端には透明な蜜が浮かんでいた。門田は躊躇なく大きく口を開けると、臨也の性器を口腔内に招き入れる。熱い粘膜同士が触れ合う感触に臨也は息を呑み、門田の肩を強く掴んだ。全体に舌を這わせながら、意識して唇を窄めて時折刺激を与えると性器はびくびく震える。

「ん、ぁっ…ドタチ……ッ」
「声、ちゃんと抑えてろよ。見つかったらどうするんだ」

門田が性器から口を離して窘めると、臨也は瞳を潤ませながら頷いた。手の平で口元を覆い、漏れそうになる喘ぎを必死に堪える。門田はその様子を確認すると、再び性器を口に含んだ。裏筋をなぞるように舌先で舐め上げ、先端の窪みを指先で刺激する。臨也は耐えられないというように首を何度も横に振り、門田の肩に爪を食い込ませる。普段と異なるメイド服という格好や、いつ見つかるか分からないスリリングさが快感を加速しているのかもしれなかった。すぐそこに限界が近付いていることを感じ取り、門田は臨也の太腿に手を這わせる。敏感な内腿を撫でられた臨也は身体を強張らせ、手の平の間から甘い吐息を漏れさせた。先走りの量が増えたと思えば、口腔内の性器がびくびくと震えはじめる。門田は臨也を見上げて瞳をゆっくり細める。イッてもいいぞという気持ちを込めると、それを理解したのか臨也は静かに頷いた。ぎゅっと瞳を閉じ、快感を追うように細い喉が仰け反っていく。門田はそれを確認すると、一際強く性器を吸い上げた。

「も……イッ、ちゃ…―――、ッ…!」

口腔内で熱い飛沫が弾ける。門田はそれを全て受け止めると、零さないように唇を窄ませて口を離す。臨也は肩で大きく息をしており、まだ呼吸が整わない様子だ。しかし門田はそれを待つことなく臨也を押し倒し、大きくスカートを捲り上げる。その裾を臨也に持たせると、下着を膝近くまで引き摺り下ろした。

「ちょっと、ドタチン……?」

息が乱れたまま臨也は顔を上げようとするが、スカートの裾を持たされているせいでそれも上手くいかない。押し倒された体勢で状況が掴めずにいると、門田の手が臨也の膝を掴んで持ち上げた。バランスが崩れて机から落ちそうになり、臨也は慌てて机の縁を掴む。反射的に手を離してしまったことでスカートが下に落ちていき、裾が門田の頭に被さってしまった。門田は何も言わなかったが、きちんと持っていろと言いたげに見下ろされては従わざるを得ない。臨也は仕方なく裾を掴み直し、頭と背中を机に預ける。門田は臨也の膝を胸につくほど折り曲げさせ、露わになった後孔の上で閉じていた口を開いた。精液と唾液が入り混じった粘性のある液体が落ちてくる感覚に臨也はぎゅっと目を瞑る。

「……ローション持ってないからな、我慢しろ」

門田は口腔内の液体を全て吐き出してそう言うと、液体を塗り込めるように指を動かしはじめる。硬く窄まっている蕾を指先でマッサージするように撫でていると、次第にそこが緩みはじめていく。門田は空いている左手を伸ばし、臨也の頭にそっと触れた。不安定な体勢もあって落ち着かなさそうだった臨也は目蓋を持ち上げ、門田をじっと見上げた。

「……背中痛い」
「それも我慢しろ」

返ってきた言葉に臨也は深い溜め息を吐き、それから門田の手に擦り寄るように頬を寄せた。門田は臨也の頭を優しく撫でると、その額に口づけを落とした。じんわりと滲んでいる汗で貼り付いている前髪を掻き分ける。

「指、入れても平気か」
「うん」

臨也が頷いたことを確認すると、門田は粘液を纏わせた中指を後孔へ挿入していく。抵抗が強いこともあってゆっくりだったが、ナカは締め付けながらも門田の指を受け入れた。熱い粘膜は飲み込もうとするような収縮を繰り返す。臨也に苦しそうな様子がないことを伺いながら、門田は指を動かしはじめた。最初は慣らすように単調な抜き差しを繰り返し、少し締め付けが緩んだことを見計らうとぐるりと指を回す。それから指を増やし、人差し指を揃えて挿入すると臨也は僅かに息を詰める。

「苦しいのか」
「んっ……ゃ、だ、大丈夫……」

ローションがないと無理があるか、と門田はゆっくり指を抜く。臨也はそんな門田の腕を掴み、無言のままに自分の鞄を指差した。門田が首を捻ると、視線を逸らしながら臨也は口を開く。

「中に、ワセリン入ってるから」
「……使っていいのか?」

臨也はちらりと視線を上げ、黙ったまま頷いた。門田は濡れていない左手で臨也の鞄を漁り、内ポケットからワセリンを取り出す。蓋を開けて適量を指に取ると、蓋を閉じて戻した。ワセリンを指先で体温に馴染ませ、門田は再び指を挿入していく。ワセリンの油分を含んだ滑りを得て、二本の指は容易に入り込んでいった。明らかに指が動かしやすくなり、臨也の表情からも苦しげな色が消える。門田は安堵の息を吐き、次第に単調な抜き差しを内部を広げるような動きに変化させていった。

「あ、ぁ……っ、ん……はっ…」

蕩けた声が零れ落ち、臨也の頬が赤く上気していく。瞳は完全に快楽に潤みきっており、まるで飴玉のようだった。門田は臨也の首筋や頬に口づけを落とし、開いた胸元から左手を侵入させる。先ほど散々弄られたせいか、赤い尖りに軽く触れるだけで臨也は肩を跳ねさせた。胸を触りながらも門田の太い指先は容赦なく内部を擦り上げ、拡げていく。粘膜は熱を孕んでうねりのような収縮を繰り返し、指をキュウキュウと締め付けた。まるで更なる刺激を強請るような動きに、門田は三本目の指を滑り込ませる。最初こそ強い締め付けを感じたが、臨也も苦しげな様子を見せることはない。それどころか、口の端からは透明な唾液を零し、熱に浮かされた瞳で門田を見上げる。

「ど、たちん……ぁ、あっ……ん、んっ」
「気持ちいいか?」
「うん…。そこ、もっと……」

門田はギリギリまで引き抜いた指を強く押し込み、指先を軽く折り曲げた。ビクンと大きく肩を跳ねさせた臨也に口づけ、漏れそうになった嬌声を飲み込むように舌を捻じ込む。臨也が好きな場所は熟知していて、どこをどう触ればいいのか分かりきっていた。前立腺の感触を確かめながらそこを執拗に刺激し、逃げ惑う舌を搦め取る。わざと歯を立てれば、飲み込み切れない唾液がポタポタと落ちていった。唇を離せば臨也の顔はすっかり上気しており、ぼんやりとした赤い瞳が門田に向けられる。

「ねっ……も、いいよ…?」

息も絶え絶えな中、臨也は掠れた声で囁いた。細い指先が誘うように門田の頬を優しく撫でる。門田もまた、臨也の痴態に煽られて自身の熱が高まっていくのを感じていた。左手でベルトを緩め、スラックスのホックを外す。緩やかに勃ち上がった性器を取り出すと軽く扱き、ぬかるむ臨也の後孔に押し付けた。しかし門田はそこで動きを止め、財布から何かを取り出しはじめる。お預けを喰らった臨也は目を見開き、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。

「ちょっと、何して……」
「ゴム。つけないと汚れるだろう」
「……今更な気がするけど」

どこか名残惜しげな臨也を無視して門田は自らの性器にコンドームを装着する。それから臨也の性器に手を伸ばし、軽く扱いてコンドームを装着させた。臨也は何か言いたげに眉を顰めたが、門田が覆い被さってくると文句を言う気も削がれたらしい。嬉しそうにうっそりと微笑み、腕を伸ばして門田の首に手を回す。

「入れて」

澄んだ声に導かれるように、ぬかるんだ後孔に性器を押し当てる。熱い粘膜が包み込まれ、門田の性器はたちまち飲み込まれていった。火傷してしまいそうな熱を持った内壁に締め上げられ、食い縛った歯の間から熱い吐息が漏れてしまう。門田は前屈みになって机に両手をつき、眼下の臨也を見下ろした。臨也は両手で口を塞いで必死に声を押さえていたが、乱れた前髪の間から覗く赤い瞳は情欲にドロリと蕩けきっている。腰から下を全て持っていかれそうな快感を堪え、門田は腰を引く。結合部からは熟れた果実が潰れるような淫靡な音が響き、その音が鼓膜を揺さぶるだけで気分が昂った。細い腰をがっしり掴むと、脚に力を込めて律動を開始する。臨也の身体は激しい抽挿に翻弄され、抑えきれない嬌声が漏れていく。

「ぁ、あっ…!ドタチ……ッ、…ん、んぅ……」
「こら、声抑えろ、って……」

門田は咎めるように低く囁き、顔を寄せて臨也の唇を塞いだ。ぽってりと赤くなった唇を舐め、律動に揺れる舌を搦めて蹂躙する。零れそうになった唾液を吸い上げると甘く感じられ、情事に酔っている自分自身を強く認識させられた。門田は自嘲するような笑みを浮かべながら唇を離し、臨也の頬をそっと撫でた。

「……臨也」

乱れきった表情はひどく淫蕩なのに、それでも最奥に滲むのはどうしようもない愛しさだ。服装も相俟って、まるで本当に女子のような柔らかさを身に纏った臨也の美しさは筆舌に尽くしがたい。門田は腰の動きを速めながら何度も頬に口づけ、労わるように柔らかな肌を撫でた。臨也もまた、柔和に瞳を細めて微笑む。

「どた、ちん……手……握って」

臨也の頬に添えた門田の手を細い指が撫でる。門田は躊躇いなく握り返すと、手の甲に唇を寄せる。夕闇の中で濃茶の瞳がギラリと煌めいた。獣じみた眼光に晒された臨也は息を呑む。ビリビリと全身が震えるような快感が込み上げ、一瞬呼吸を忘れた。その直後、まるで雷に打たれたような快楽の波に飲み込まれてしまう。

「ぁ、……あぁー…ッ!!」

急に強くなった締め付けに門田は息を呑んだが、込み上げる奔流には抗えない。搾り取るような内壁の収縮に促され、薄いゴムの中に熱い飛沫が放出されていく。ほぼ同じタイミングで臨也も射精し、強すぎる悦楽に身体を痙攣させた。はだけたブラウスから薄い胸が激しく上下するのを眺めながら、門田はゆっくり性器を引き抜いた。尾を引く快感に震える手で慎重にコンドームを外し、中身が零れないように口を結ぶ。下半身を整えて熱い息を吐き出すと、ぐったり横になっている臨也の顔を覗き込んだ。

「臨也」

声を掛けても返事は返ってこない。気を失っているのかと思えば、そういうわけではないらしい。臨也は閉じていた目蓋を僅かに持ち上げて再び閉じ、細く息を吐き出した。化粧は汗ですっかり崩れてしまっていたが、それでも元来の美貌が崩れることはない。門田は臨也の腕を引き、背の後ろに手を差し込んで抱き起こした。刺激しないようにそっと臨也の性器に触れ、コンドームを外してやる。零れないように口を結んで、下着を引き上げてやった。

「平気か?」
「……うん」

門田は力の抜けた身体を持ち上げ、そのまま近くにあった椅子に腰かけた。薄い背中を労わるように撫でて、臨也の顔を覗き込む。ようやくきちんと開かれた瞳は、僅かに苦笑を湛えながら門田を見上げた。

「大丈夫だって」
「背中、痛かったろ」
「それはそうだけど、別に普段と変わらないよ。それとも……この恰好に絆されちゃってる?」

臨也はおどけるように笑ってスカートの裾を指先で払った。柔らかなフリルが揺れるのを視界の端に捉えた門田は、静かに首を横に振る。

「そんなんじゃない。お前は女じゃないんだから」
「でも気に入ってくれたでしょ?」
「……まぁな」
「それに、俺も結構気に入ってたんだ。君の給仕服姿」

ひたりと頬を撫でられて門田は目を見開く。言外に滲まされた言葉の含みに気付かないほど鈍いわけがなく、門田は臨也の手首を掴んで顔を寄せた。推し量るようにじっと瞳を覗き込めば、臨也はわざとらしくケラケラと笑う。

「やぁだドタチン、またキスしたいの?」
「お前……やっぱりわざと情報を漏らして……」
「何のこと?」
「最初から俺に手伝わせるつもりで女装も引き受けたんじゃないのか」
「そんなわけないでしょ」
「……本当か?」
「本当にたまたまだって。君がうちのクラスに来ることも予想できなかったよ」

心外だとばかりに笑いながら臨也は門田を見上げる。少しもはぐらかす様子が伺えないので、門田は自分の予想が合っているのか外れているのか分からなくなってきた。複雑な表情で眉根を寄せていると、臨也は伸ばした人差し指で門田の眉間を突く。寄った皺を伸ばすように動かされ、僅かに痛みを覚える。

「そんな顔しないで。楽しかったならそれでいいじゃないか」
「お前なぁ……」

門田は臨也の指をゆっくり掴んで退かす。ひどく楽しげな臨也の表情を見ていれば、追及する気持ちも次第に萎えてくるというものだ。自然と溜め息交じりの笑みが浮かぶ。策略に嵌められていても良いと思いはじめていることを自覚しながら、門田は腕の中の恋人を静かに抱き寄せた。


end.



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