シュガー・シュガー

※臨也後天性女体化


爽やかな日曜日の朝、静雄の睡眠を阻害したのは玄関の扉をドンドンと叩く喧しい音だった。

「……んだよ…」

低血圧な静雄は朦朧とした意識のまま、のそりと布団から起き上がった。表情には不機嫌さが滲んでおり、眉間には深い皺が刻まれている。いまだ体温の残る布団からは離れ難かったが、扉を叩く音は一向に止む気配がない。ベッドから降ると、冷たいフローリングの感触に身体が震えた。靴下を履こうと思ったが、探そうとクローゼットに手を伸ばす間にも扉を叩く音が鳴り響く。億劫になり、冷たいのを我慢して静雄は素足のまま玄関へ向かう。思い切りドアを開け放ってやろうかとも思ったが、念のために外を確認することにした。長身を僅かに屈め、扉に頬を押し付けるようにして覗き窓から外を覗く。最初に視界に入ってきたのは艶のある黒髪だった。視線を下にずらすと、嫌になるほど見覚えのあるファーコートが目に入る。その時点で静雄の体温は急上昇し、手を添えていたドアノブを捻じり潰すところだった。ドアノブが少しひしゃげたところで必死に怒りを抑え込む。もう一度外を確認すると、相手がフードを頭からすっぽりと被っていることに気がついた。早朝から不審者極まりないその姿を目にし、静雄は重い息を吐き出す。鍵を外してドアノブを握り直し、外れないように加減しながらも勢いよく扉を開けた。扉の向こうの相手が無様に激突すればいいと念じながら。

「ぅ、わっ」

扉を開けた瞬間、悲鳴が上がる。しかし期待していた扉に何かが激突する手応えはなく、静雄は舌打ちを零した。扉の向こうの人物は慌てて跳び退ったようだった。相変わらず、反射神経と瞬発力は人並外れているらしい。

「あっぶな…!ちょっと何すんのシズちゃん!?」
「それはこっちの台詞だノミ蟲野郎!」

悲鳴混じりの文句に静雄が叫び返すと、その相手―――折原臨也は紅玉の瞳を細めて嘲笑を浮かべた。人を馬鹿にしている表情を平気で浮かべられる男だ。

「朝っぱらからドンドンドンドン……手前、何のつもりだ…?近所迷惑も考えやがれ!」
「あはは、近所迷惑?君が住んでるってだけでこのアパートの住民は迷惑してるんじゃないの?」

臨也は軽やかに笑い飛ばすと、静雄の顔をにっこりと見上げた。実際、臨也が来るたびに面倒事になっては大家から苦言を呈されている。もう数年は住んでいるが、そろそろ周囲の視線が痛くなってきていた。反論できない静雄はキレそうになりかけるが、ギリギリで理性を総動員して堪える。このまま怒りを爆発させれば、確実に臨也の思う壺だろう。幸い、住民は誰も外に出てきてはいない。今のうちに片をつければ問題にはならないはずだ。

「―――そんなことよりもよぉ、いま問題なのは別のことだろうが」
「はぁ?なにそれ」
「こんな早朝に手前が押し掛けてきたことに決まってんだろ!いいか、正直に答えろ。何の用件で来やがった」
「……ふーん、キレないんだ。つまんないの」
「うるせぇ。さっさと答えろ」

詰め寄って頭1つ分ほど身長が違う臨也を見下ろすと、なぜか眉根を寄せて視線を泳がせていた。明らかにいつもと違う様子がどうにも不自然で、静雄は首を捻る。黙り込んだ臨也をじっと見下ろしていると、やがて深い溜息が零された。溜息を吐きたいのはこっちだと思いつつ、静雄は苛立ち交じりに名前を呼ぶ。それに反応した臨也は静雄を見上げると、妙に真剣味を帯びた表情で口を開いた。

「絶対に、笑わないで」
「は?」
「約束して」
「いや、待「いいから、約束して!」
「―――っ、…分かったよ」

強引すぎる物言いと剣幕に気圧され、鼻白んだ静雄は流されるままに頷いた。その返事を聞き取ると、臨也は静雄の胸板を両手で強く押す。静雄の身体はそれぐらいではびくともしなかったが、臨也にぎろりと睨み上げられて思わず後退った。狭いスペースに強引に踏み込んだ臨也は玄関に押し入ると、後ろ手で扉を閉める。あまつさえ鍵までかけるガチャンという音を聞き、その強行に静雄は目を見開いた。

「おい!手前、なに勝手に入ってんだよ」
「他人に見られたくないの」
「はぁ?」

あれだけ大騒ぎしておいて見られたくないとはどういうことだ。静雄が口を開こうとすると、背伸びをした臨也が静雄の口を強引に塞いだ。細く冷たい指先が触れる感触がやけに生々しく、静雄は反論の言葉を失う。狭い玄関に2人がいるせいで自然と身体が密着してしまうことに気付き、静雄は慌ててつっかけていた外履きのサンダルを脱いで廊下に上がった。臨也は相変わらず玄関に立ったままだったが、被ったままのフードに手をかけて静雄をじっと見つめる。

「―――…見れば分かるよ」

やけに平坦な声で呟き、臨也の細い指先がフードを下ろす。ぱさりとフードが取り払われ、その下から見えたのは短い髪―――ではなく

「…………え?」

肩甲骨あたりまで伸びた、艶やかな黒髪だった。その髪の長さに驚き、静雄は慌てて臨也の顔に視線を戻す。フードを被っていたせいで影になってよく見えなかったが、睫毛は長く伸び、瞳は大きくぱっちりと開いている。頬はふっくらと丸みを帯び、唇は紅を差したように色づいていた。

「……臨也……?」
「あんまり、見ないでよ」

あまりの事態に静雄は目を剥いて立ち尽くし、それに対して臨也は居心地悪そうに俯いた。いつもなら流暢な言葉もどこか歯切れが悪く、調子が出ないようだった。臨也が首を横に振ると、漆黒の髪が揺れてゆるく波打つ。

「…………お前それ、どういう…?」

なおも言葉が上手く紡げない静雄を見て、臨也は困ったように眉根を下げた。履いていた靴―――いつもの革靴ではなく黒いパンプスだ―――を乱雑に脱ぎ捨てると、臨也は静雄を押し退けて廊下に上がる。おもむろにコートを脱いだことに静雄が声を上げるが、臨也はお構いなしだ。コートがばさりと布が床に落ちる音がいやに艶かしく感じられ、静雄の鼓膜が震えた。上半身をカバーしていたコートがなくなったことで、明るい玄関ライトの下に臨也の身体が露わになる。肌は透き通るように白く、細い首筋、白いうなじ、綺麗に浮き出た鎖骨、控え目な胸の膨らみ、引き締まったウエスト、柔らかそうな太ももにすらりと伸びた脚―――。着ている服は常とは少しばかり異なっていて、トップスは薄手の黒ニット、パンツは踝が見える短めの丈だった。そうして見た臨也の身体は、完全に女性へと変化していた。静雄は自分が目にしている光景が信じられず、軽い眩暈を覚える。こめかみを押さえて後退ると、身体がよろめいて壁に肩をぶつけた。

「ちょ…ちょっと、シズちゃん大丈夫?」

床に落ちたコートを踏みつけて臨也は静雄の近くに寄ってきた。細い指先が静雄のシャツを何度か引っ張る。訝しむように見上げてくる表情さえもやけに色っぽく映り、混乱する思考の中で静雄は口を開く。

「手前―――女だったのか?」


×


「……この服は波江…俺の秘書が勝手に押し付けてきて。最初はスカート穿かされそうになったけど丁重にお断りしたよ。波江、ずっとにやにや笑ってて本当に最悪だった。完全にこの状況を面白がってたよ、あの女。……こうなった原因?そんなの新羅しかいないだろ。誰に頼まれたのか知らないけど、性転換の試薬だったらしくてさ。仕事で必要な薬を受け取りに行って、いつも通り出されたコーヒーにその薬が混ぜてあるなんて思うわけないだろ?いつもより薄いコーヒーだなって文句を言おうとした瞬間に身体が熱くなって……思い出しただけでぞっとする!自分の身体が別のものに変わるなんて本当におぞましい瞬間だった。あの恐怖は一生忘れられそうにないね。新羅の奴、友人を確証の無い薬の実験台にしたんだよ!?本当に信じられない……俺がナイフを突きつけて脅してもヘラヘラしてるし。本気で刺そうとしたら、慌てたセルティに平謝りされたけど最終的に羽交い締めにされて放り出されて……あぁ、本当に最悪だった」

端正な顔を怒りに染め上げ、臨也は仁王立ちで捲し立てていた。床に放り出されたコートは臨也が地団駄を踏むたびに潰されている。気に入っていたはずのそれの無残な姿を眺めながら、静雄は冷たいフローリングの感触を噛み締めていた。

「ちょっと聞いてるの!?」

ダンッと床を踏み鳴らした臨也が蹴りを飛ばしてきて、それを回避しながら静雄は溜息をひとつ零す。家主であるはずの静雄は今、冷たいフローリングの真ん中に臨也の命令で正座させられていた。こうなった原因は言うまでもなく、先ほどの静雄の発言だ。

「……聞いてる。新羅の奴にハメられたんだな」

無神経すぎる発言の報復は渾身の往復ビンタと散々な罵詈雑言だった。静雄にとっては大した攻撃でもなかったため、臨也は手の平を真っ赤に腫らす羽目になったのだが。しかし今の臨也の性別が女である以上、静雄が反撃できるはずがなかった。もともと男であった時から、臨也の容姿は世間一般的に見てずば抜けていた。静雄自身、弟が俳優ということもあり容姿には恵まれていたが、臨也はそれを軽く凌駕する美貌を持っている。加えて男とは思えない色気もあり、中性的に見える部分も少なからずあった。それが一因なのか、女性の姿になっても然程の違和感を感じることはない。しかし身体が女になったというだけで、静雄に与えた動揺は大きかった。中身はそのままの臨也だと言われても、今までのように手を出せるわけがない。結果、静雄は臨也の怒りが収まるまで正座を続けることになってしまった。

「……本当にちゃんと聞いてる?」
「あぁ。ちゃんと聞いてる」
「―――…まぁ、シズちゃんにこれ以上愚痴っても意味ないか」

愚痴というよりも八つ当たりではないのかと突っ込みたかったが、どんなバラエティに富んだ罵声が返ってくるか分からないので静雄は口を噤んだままだ。僅かに視線を上にずらせば、仁王立ちした臨也の胸が目に入ってしまい慌てて顔を背ける。そんな静雄の様子に気付かない臨也は、怒り続けて疲れたらしい。壁に背を預け、その場にぺたりと座り込んだ。すっかり潰れてしまったコートを指先で摘み、深い溜息を零している。

「臨也?」

大丈夫なのかと静雄が声をかけると、臨也は胡乱げに視線だけを寄越して俯いてしまった。身体が女になったというだけならまだしも、副作用などがあるのではと少し心配になる。流石にもういいだろうと正座を崩し、静雄は臨也に近寄った。肩よりも長い髪に隠され、俯いている臨也の表情は伺えない。逡巡したのちに肩に触れ、軽く揺すってみる。何度か囁くように名前を呼ぶと、ようやく臨也は視線を上げた。数秒の間、紅玉の瞳は見定めるように静雄をじっと見つめる。

「―――…大丈夫だよ、ちょっと疲れただけ」
「……そうか」
「なぁに?心配してくれてるの?」

臨也はうっすらと笑みを浮かべたが、明らかに覇気がない様子だった。静雄が何も返せずにいると、臨也の細い指先が静雄の頬に触れた。冷たい感触に撫でられ、静雄は思わず硬直する。それを目にした臨也は唇の端を吊り上げ、僅かに笑ったように見えた。

「ねぇ、シズちゃん」
「……なんだよ」
「やっぱり女の身体に興味ある?」
「な―――、…っ」

予測もできなかった言葉に静雄は言葉を失った。臨也は静雄の頬を何度も撫でるように触れながら、蠱惑的な笑みを浮かべてみせた。その表情には先ほどまでの憂いなどは微塵も感じられず、演技だったのかと静雄は呆れ果てた。心配して損したとはまさにこのことだろう。呆然とする静雄を面白そうに眺め回した臨也は、更に強引に詰め寄ってくる。

「どうしたの?シズちゃん、変な顔して」
「て、手前が、変なこと言うからだろうがっ!」
「えー?だって興味あるし」
「……なんで興味津々なんだよ……」
「え?弱味握れそうだし。……まぁ、純粋に興味本位ってのもあるけどね。俺は気になるよ、君の性的嗜好」
「せ、性的嗜好、って―――」

いつの間にか屈み込んできた臨也に追い詰められ、静雄の背後は壁になっていた。こうして見てみると、今の臨也は完全に女だ。臨也なのだと頭できちんと理解しているはずなのに、妙な迫力と類い稀な色気がある。まるで浮気をしているような背徳感に包まれ、静雄は思わず言葉を失った。

「シズちゃんってば」
「……別に、興味が無いわけじゃねぇよ」
「へーぇ?化け物でも人間並みに性的欲求はあるんだね。生意気だなぁ」

わざとらしく媚びを含んだ甘い声色で紡がれる、容赦ない棘のある言葉。気味が悪い、不愉快だと今までなら一蹴していたはずなのに、今は跳ね除けることに躊躇を覚える。きゃらきゃらと笑う臨也は一見すると無邪気に映るが、裏にある思惑を察してしまった静雄の中には苦い感情が生まれる。

「……俺は、女だとか男だとかはどうだっていい」
「はぁ?何を急にカミングアウトしてんの?」
「手前だってそうじゃねぇのかよ。人間を愛してるんだろ」
「だからって俺が両刀だと断定しないでくれるかな」

でも平和島静雄が両刀だったなんて面白い話だよね。臨也は意地悪く笑って瞳を細めた。静雄が両刀だのゲイだのという噂を流布しようとしているらしい。そうなれば、普段から行動を共にしているトムや周囲の人間に迷惑が掛かるだろう。静雄が怒りを込めた低い声で名を呼ぶと、臨也はぴたりと笑うのをやめて両手を上げる。

「冗談だよ」
「手前が言うとそうは聞こえねぇんだよ」
「なにそれ、狼少年ってこと?」

わざとらしく両手をひらひらと動かしながら臨也は呆れたように溜息を吐く。軽く俯いた拍子に長い黒髪が流れ、真白な首筋が露わになる。その細さに気を取られそうになり、静雄は軽く首を振った。話の途中だったことを思い出して口を開く。

「俺は好きになった奴が、好きだ」

ぽつりと告げられた言葉により静寂が生まれた。長い睫毛に縁取られた大きな瞳は何度か瞬きを繰り返し―――その美しい顔を思いきり歪めて、臨也は嗤った。

「何マジレスしちゃってんの?」

臨也はそう呟き、けたたましい笑い声を上げた。その声は不自然なまでに明るく、僅かに引き攣っている。長く伸びた艶やかな髪に細い指先を通し、慈しむように梳きながら臨也は笑い続けた。そして蔑むように静雄を強く睨めつけ、呪詛に似た言葉を薄紅色の唇から紡ぐ。

「……シズちゃんったら馬鹿だなぁ。本当に馬鹿だよ。愚かしいことこの上ない。化け物だからといって、ここまで間抜けだとは思わなかったよ。まったく呆れちゃうな」

臨也は静雄が何も気付いていないと信じ切っているようだった。蔑みの色を浮かべる瞳をうっそりと細め、冷ややかな声で馬鹿だと吐き棄てる。しかし、次第に掠れながら弱まっていく声が臨也の心情を十分すぎるほど明示していた。

「馬鹿はお前だろ、臨也」

臨也の身体を引き寄せると、触れ慣れているはずの身体は軽く、細く、そして柔らかかった。骨ばった硬い感触はどこにも感じられず、本当に臨也が女になってしまったのだという紛れもない事実を実感させられる。それは臨也も同様だったらしく、氷のように冷え切っていた表情が一変した。丸みを帯びた頬にさっと朱が差し、静雄の胸を必死に押し退けようとする。

「離さねぇぞ」
「は、離し……離してよ!」
「離さねぇって言ってんだろ。今にも泣きそうな顔してよく言うぜ」
「……っ、」

静雄の指摘に臨也の頬が真っ赤に染まった。怒りと羞恥でせめぎ合う瞳で静雄を睨み上げる。ぎらぎらと剣呑な色を孕ませた虹彩が、流れ落ちたばかりの鮮血のように揺らめく。

「手前のことだ、どうせ男より女の身体の方が良いんじゃないかとか……どうしようもねぇこと考えてたんだろうがな」
「ど……、どうしようもなくなんか…」
「性別なんか関係ねぇ。俺はそう言ったろ」

低い声で囁かれ、臨也はびくりと肩を震わせる。両者の立ち位置はいつの間にか入れ替わり、臨也が壁側に追い込まれていた。

「……なぁ、いい加減に分かれよ」

静雄は臨也の細い肩に手を置き、俯きかけた顔を覗き込む。僅かに顔を背けられたがが、逃げきれなかった臨也の瞳は静雄に捉えられてしまう。鳶色の瞳が真っ直ぐに臨也を見据える。心の奥まで見透かすような視線の強さに臨也はたじろいだ。

「俺は、手前が好きだ。性別なんか関係ねぇ…それでいいじゃねぇか。こんなこと、男の手前に告白した時から分かってたはずだ」

言い聞かせるようにゆっくりと静雄は語りかけた。臨也の瞳は緩んで宝石の如く光り輝いている。臨也はもう視線を逸らすことなく、黙って静雄の視線を受け止めていた。返事も首肯も返ってはこないが、反論することも拒絶することもない。それを受容だと受け止め、静雄は臨也の肩を強く引き寄せる。

「……分かったか?」

思いのほか素直に頷いた頭を撫で、静雄は柔らかな頬に口づける。緊張が解けて安堵したのか、臨也の肩から力が抜けていく。静雄が触れるだけのキスを何度も落としていると、不意に臨也の腕が伸びてきてシャツの襟を掴む。ぐっと引き寄せられ、唇を奪われる。どうやらすっかりいつもの調子を取り戻したようだ。

「っん、ぅ…ふ」
「………唇、やわらけぇな」
「いつもより?」
「あぁ、マシュマロみてぇだ」
「ふーん。シズちゃんは柔らかい方が好き?」

見上げてきた臨也が僅かに不満げな顔をしていることに気付き、静雄は忍び笑う。ここで臨也の問いを肯定すれば、拗ねてしばらく口を聞いてくれなくなること必至だろう。ゆっくりと首を横に振って、滑らかな頬に触れた。

「……どうかな。柔らかすぎて、なんか違和感ある」

静雄の返答を聞いて臨也は噴き出した。穏やかに微笑みながら、静雄の胸に顔を押しつける。くぐもった笑い声の震動がくすぐったくて、静雄もつられて笑みを零す。臨也は新羅のことをひどく恨んでいたが、こんなにも穏やかな笑顔を見れたことには感謝するほかないだろう。今度マンションに行った時には、新羅の好きな紅茶でも持ってやろう。悟られないよう心の中で呟きながら、静雄は臨也の頭をそっと撫でた。


end.




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