振り返ることもないだろう



思いのほか強い力で手首を掴まれて顔を顰めた。俺が振り返ると奴はあっさり手を離したが、袖を捲れば赤い痕が残っていた。

「ちょっと、なにするの」
「ひとたび行ってしまえば、こちらを振り返ることもないだろうからな」

どういう意味だと問いただそうとして閉口した。つくづくこいつは趣味が悪い。




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