とりつかれた人種
2015/10/06 16:23

おもしろかった!
が、
漫画家を夢見る人たちの夢を壊せるくらい、現実的で、漫画家のネガティブな面がポジティブな面より勝った映画でした。

普通に観てる人や出演者のファン、原作ファンからすれば、ストーリーや映像にいくんでしょうけど、漫画家目指してる人が観たら、胃がいたくなるような内容だったと思います。


簡単に言うと、真城と高木がそれぞれ作画と原作になり、ジャ○プの頂点を目指すというお話。


◆漫画家という仕事は博打みたいなもの
序盤からそんな感じ。真城と高木、お互いに漫画家という仕事のネガティブさを述べてます。だから真城は漫画家やろうと言ってきた高木に対して否定的。一流の大学出た編集者にコキ使われる、漫画家で食えるのはごく一部の才能ある人間のみ、普通の社会人のような保障は一切ない…云々。現に漫画家を目指す仲間たちはほぼみんなバイトをしているシーンが出てきます。

◆過酷さ
毎週やってくる締め切りに自分達のスキルが追い付かない、と主人公たちが言っているように寝る時間を削っても追い付かない本当に過酷な漫画製作。極めつけが真城のおじさんで漫画家だった人の39歳での死去であり、真城自身病気で倒れるシーン。血尿のシーンはほんとゾッとしました。

◆アンケート至上主義
読者アンケートの結果が毎週出ており、10位以下は打ち切り候補。命を削って描いても、そんなことはおもしろさと読者には関係ないのである。真城、高木の担当編集者服部は「上位の漫画ばかりがおもしろいわけじゃない」とは言ってるけど、アンケートは無視できないもの…

◆編集者視点
漫画家仲間と編集者服部が集まって飲んでいる時に「編集者は漫画家を使い捨てと思ってる」「必死で描いたものにああしろ、こうしろと引っ掻き回して、落ちれば打ち切り」と言われた服部の返しが印象深かった。「アンケート上位の漫画(だけ)がいいわけではない」「そんなに自由に描きたいなら同人誌でもマイナー雑誌でやってろ!でも、ジャ○プでやりたいならヒット作を描かなければいけないんだ!」と。本当にその通りですわ。それが職業としての漫画家の1面かと思います…

◆友情、努力、勝利………?
アンケートで1位をとったら勝ちという勝負を真城・高木は同じ高校生漫画家で10年に1度といわれるような天才新妻に持ち掛けます。連載が一度は低迷したものの、テコ入れで再びアンケート順位は上昇。そんなとき、作画の真城が倒れてしまい、かつて真城のおじさんの担当だった編集長が、過去のこともあり休載を決定。それを仲間の漫画家たちに助けてもらい、乗り越え、見事1位に!…それはその1回きり。そのあとは落ち続け、打ち切りになってしまうのでした。…結果、新妻の勝利、才能には勝てなかった、という印象が強く残りました。


ポジティブな面…あったっけ?というくらい、無い。
それでも、漫画家をやる理由はあまりなかったですね…
真城はヒロインの女の子のことばっかだし。
漫画家仲間や編集者との絆だったり、
連載がかなうことは喜びでポジティブな面だったとは思いますが…
あとは夢中になれることが漫画だったということに尽きるんでしょうか?
読者の反応はアンケートのみだったので、読んでもらえる喜びというのは描かれてなかったかなぁと。少なくとも触れあって、喜ぶようなシーンはなかったです。



漫画の優劣がイマイチわからなくて、主人公たちがアンケートにこだわり続けることが私には理解できませんでした。順位が大事なのはわかるんですが、アンケート順位=漫画としての優劣なのか?と。
おもしろい漫画を描こうというより、漫画の連載、アンケート1位、ライバルに勝つ、アニメ化という面が大きかったなぁと思いました。そうなる漫画はおもしろい漫画なのでほぼ同じようなものかもしれないですね。それに主人公にはアニメ化させて、声優を目指すヒロインの子との約束を果たすという大事な目的がありましたし。
金!!みたいな漫画家さんもいたし(笑)

それは間違いとか否定するつもりはなくて、そうじゃない自分がどうなのかなぁという思いであります…


漫画初心者である私には、いろいろ勉強になったことも多かったです。
そもそも他の人の作業風景ってどうなってんだろう?という思いで、観に行ったので(^^;

◆作画
描くのは初めてという真城がペンを使う場面とか興味深かったです。
「Gペンむっず!!」…ほんとにね…
・かぶらペンは一定の線
・丸ペンは背景
・一定方向にひきやすい

◆原作(ネーム)
文才はあるという高木はネームまで担当。ちなみにアシスタントっぽいこともやってた。
・単純、何気なく見える漫画の表現が難しい
・小説とは違う!!

◆編集者服部からの評価
・話はよくまとまっている
・ちょっと中二っぽいけど。
・言葉で説明しすぎて小説っぽい。キャラと絵で説明しなければ。
・絵のデッサン力はある。
・漫画の絵じゃない。線に強弱がない、背景とキャラの線の差がない。

これを直して、2人の作品は良くなり、準入選。連載候補に上がります。
で、編集者と打合せをして、3話分の下書きを描いて(読み切りしか描いたことのない新人はここで苦しむ)、連載か否かの会議にかかるんだそうです。

◆編集者会議にて
◇不良漫画はいまどきどうなのか
・作者自身が若くないと描けない
◇ラッコのギャグ漫画は主役がかわいい
・アニメ化してもいける
・クオリティの高さ
◇美少女が主人公の料理漫画
・美少女はかわいいけど…
・料理漫画にはいつの時代も需要がある!
◇真城・高木のSF漫画
・ジャ○プを意識した王道
→これまでの王道漫画のいいとこどりっぽい。読者にすぐ見透かされて終わり。
・このレベルなら2組も高校生漫画家(もう1組は新妻)はいらない


真城と高木だけ連載を逃すことになります。
服部からは「君たちらしい漫画を」と言われますが、自分達らしさがわからない2人。
「僕には2人らしい漫画なんてわからないし、何がヒットするかなんてもっとわからない」

悩む2人。
「スポ根でも描いてみる?」
「やったことないくせに?」
「ラブコメは?」
「描ける気しない」
悩んだ末高木は1つの新作を生み出します。それは普通の高校生の物語。
「新妻は早くからかきはじめて漫画の世界でしか生きていない。でも、俺たちはその分、学生生活を送って、同じ中高生の気持ちがわかるはずだ。」「天才じゃない!普通なんだよ!」「邪道だ!」
やはり話を考えるだけあって、発想が行き詰まらないというか、いろんな視点を持っているんだなぁ。

これで連載をつかむけど、前述した真城の病気やヒロインが会えないとか勝利とかでも結局低迷…

最後は卒業式の教室に2人だけでいるんですが…そもそもこの高校ってどういう高校?…「これからどうなるんだろ?」「これから無職かー」というネガティブな会話。
しかし、最後は結局、「新作考えたんだけど」「聞かせろよ」という感じだったので、また漫画を描くんだろうなと思いました。


なんだか、私の感想としては、報われない救いの無い場面が多かった気がしました。
そんな明るい気持ちにはなりませんでしたが、他の観た方はどうなんだろう。

この世にはおもしろい発想はたくさんあるだろうけど、編集者とか打ち切りとか金欠とか病気とか、そういうものでつぶされてしまう漫画は多いのであって、
自分がそんな目にあう覚悟で、
自分の友達がそんな目にあったとしても、
描き続けることができるんだろうか、と。
あらゆるものを引き受けて、背負って、やっていけるかな、とこの映画を観て改めて思いました…

ましてや、お金とか名誉とか漫画になること、連載が夢だとかそういう確固たる具体的な目的を持っていない自分は大丈夫なんだろうか、と。
漫画としてのクオリティとか、心配です。

編集者の意見とかを聞き入れたり、自分の納得できないこと、嫌いなことをどこまでやるかって永遠の問題だと思います。
仕事ならばやるのがプロだし、選べるほどの金銭的余裕や実力があるかとか、ものは経験だし。
でも、できない仕事をできませんと断るのも責任ある行動だし、これは譲れないと思ったら譲らなくていいと思う。
なにより、自分で好きで納得してやってるからこそ、よいものが産み出せるし、責任も持っていられるとも思うのです…

そんなに自分の好きにやりたければ同人誌でもやってろ!って本当にそうだもんな。同人でも人気でれば、販売されてる雑誌と同じくらいの扱いを受けられるし。

難しい問題です…


漫画家になる理由、人それぞれだとは思いますが、やらずにはいられない…そんなものもあるのかな、と思いました。
漫画にとりつかれているのかも…と思います。



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