小説 | ナノ







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冬の夕暮れ時。

橙色の夕日を受けながら次第に冷たい風が街を冬の匂いに包んでいく。
そんな中、寒空の下で声が行き交う。


「じゃーな!ロミオ!」
手を振りながらクイッと得意げに愛用の帽子を直す男の子。

ダンテだ。

そして、その元気に手を振るダンテを煙突掃除用の器具を肩にかけ、笑顔で見送る男の子。
ロミオ。

「あいわらず、ダンテは元気だなー。あっ!もう日が沈んじゃう、急がなきゃ!」

走り出したダンテの後ろ姿を見送りながらはっとして、自分の用事を思い出すロミオ。

今日はカセラ教授の所へ字を教えてもらいに行く予定だったのだが、煙突掃除の仕事が思ったより長引いた上に、偶然帰り際ダンテと会い、話し込んでしまい夕方になってしまったのだった。



「カセラ教授、まだ待っててくれてるかな?」


ちょっと不安になりながらもロミオはカセラ教授の家に向かい、走り出した。






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