tns | ナノ
屋上のフェンスの上。
あなたは、そこによく座っている。強く背中を押せば落ちてしまいそうな、酷く不安定な場所。押さないけれど。
でも、何故かその不安定さは貴方には似合っていて、複雑な気分になる。繊細で、賢くて、危うい人。あなたはそんな風に見える。
「仁王」
今にも飛び立ってしまいそうなあなたの背中に放つ。すると振り返ったあなたは、私の不安など打ち消すようにいつも通りに笑う。
「おお、遅かったのう」
そしてあなたは、降りる。
こちら側に。
私は、駆け寄ってあなたの腕を強く掴んだ。そこにあなたがいることを確かめるように、あなたがどこかに行ってしまわないように。
あなたは驚いたように瞬きをしたけれど、すぐに優しげな表情に変わる。私の胸の不安を、撫でるように。
「どうしたんじゃ?」
「あんたは、私が捕まえてないとダメだって思った」
そう、こちら側に繋ぎとめておかなければならない。そうでなければ、二度と戻って来られない場所に足を踏み入れてしまいそうだ。
「なんじゃ、束縛なんて珍しいな。悪い気はせんけど」
そう言って茶化したように笑う。
つられて私も、少しだけ笑う。
そして、私の手はそっとあなたの手に包まれる。温かい。あなたに引かれるまま、校舎へと向かう。
「ここは寒い、中に入るぜよ」
「授業はー?」
「んんー?聞こえんのう」
いつも通りだった。驚く程に、いつも通り。
なんだかさっきまでの不安がバカみたいに思えて、今度は心から笑う。
「今日、お菓子あるよ」
「お、ええのう。ブン太あたりに見つからん内に食べんとな」
軽く手を繋いで、屋上を後にする。
何気無く振り返れば、誰もいない屋上と、何の温もりも持たないフェンスが、私たちを見つめていた。
境界線
(あなたはいつも、その線上にいる)
最近、名前変換なくてすみません。
前回の白石に引き続き、悲恋でもないですが甘くないお話です。
最近、キャラの性格や本性を考えることが多くて。仁王はかっこいいですし、大好きなキャラのなのですが、どことなく繊細で危うい印象。
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