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「今日、お前バイト休みだろ?パフェ食いに行こうぜ」

同居人の綾野刹希に坂田銀時は提案した。
だが、刹希は目を細めて小さく息を吐く。
そして、手に持っていたはたきでソファーに寝そべる銀時の頭を叩いた。

「ダメに決まってるでしょうが、どんだけ糖尿病になりたいの?馬鹿なの?」
「痛い痛い!刹希さん?!銀さんの周りにホコリ舞ってるから!!」
「パフェじゃなくてホコリを食べれば良いじゃない」
「某女王陛下みたいなこと満面の笑みして言わないでくれる!?」

もはや叩くというより押し付けているはたきを銀時は掴んで、刹希を見上げる。

「俺、結構頑張ってない?」
「どの口からそんな言葉が出るわけ?どこからそんなドヤ顔出てくるわけ?昨日、私のデザート食べたのはどの口なわけェ?」

珍しく真剣な眼差しで何を言うかと思えば、刹希は若干青筋を立てながら銀時の頬をつねる。

「食べたって一口だけだろうがよ」
「私は食べて良いなんて、ひとっことも言ってません!てか、あれのどこらへんが一口だ!!」
「いや、あれだからね。ケーキが銀さんを呼んでた……」
「んなわけないでしょうがァァ!!あれ、私のお気に入りだって知ってるでしょーが!」
「ちょっ!ま、待て、待って!刹希様ァァァ!悪かったから!お願いだからその手に持ってる物騒な物しまってェェ!!」

懐から取り出した抜き身の小刀を無遠慮に銀時に向ける刹希。
銀時が食べたケーキというのが、今、かぶき町で一二を争う有名店の人気ケーキだ。
開店早々すぐに売り切れてしまうほどの人気を誇る。
そのケーキを刹希は朝早く並んでやっとのことで手に入れたのだ。

「ろくに金も稼げない奴にあそこのケーキを食べる資格はない」
「……あそこのケーキは甘党が食べてこそだと思います」
「はァ?」
「なんでもありません!!すんませんでしたァァァァァ!」

刹希にしては怖いほどの低い声音に、銀時も思わずその場で土下座してしまう。

「あ、あのー」
「何ですか?アホの坂田くん」

会話がなされている最中もパタパタと銀時の頭を叩く。まるでもぐら叩きの要領でだ。

「お詫びに好きなものおごるんで」
「……おごってもらうと仮定して、その金は誰のか言ってみてください」
「刹希のです」
「銀時、私は呆れて物も言えないよ……」

はあ……と盛大にため息を漏らしてはたきを肩に乗せる。
しばらくお互いに黙っていたが、刹希が口を開いた。

「ま、一応一週間頑張ったもんね」

その言葉に銀時は、勢いよく俯いていた顔を上げた。

「銀時が私におごってくれるみたいだし、私の金だけど、今日は何か食べに行こうか」
「マジか!刹希大好きだ!」
「はいはい。行くなら、銀時も掃除手伝いなさい」

銀時の本気か冗談かいまいち分からない告白を軽くスルーして、刹希は雑巾を手渡した。
銀時は久しぶりに甘いものが食べられるとあって、やる気十分に掃除を手伝い始めたのだった。


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bkm
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