B
「それじゃ、アピールタイム終えて対決にうつらせてもらいますよ」

やっと対決が始まるらしい。
司会者がルールの説明をしてくれた。
ルールは簡単、司会者が持っているフライドチキンの骨を投げてそれをペットがくわえて早く持ち帰ったほうが勝ち、というものだ。
エリザベスがどうかは知らないが、定春は犬らしく足は速い。
これはうまく動いてくれれば負けることはないはずだ。

「んなまどろっこしーの止めてよォ、男らしく殴り合いでいこーや?」
「望むところだ!」
「いやオメーらじゃねーよ!!いい加減にしろよオメーら!!」
「チャンバラしたいならよそ行けよそ!」

刹希が今にも殴り合いを起こしそうな銀時と小太郎の背中をひっぱたき止めさせた。
なんでこんな時までこのバカ二人の面倒を見なければならないのだろうか。
それは彼女が一番常識人だという設定だからである。

一同対決をするためにスタジオから出て、目の前に広がっている草原に集まる。
てかどこでやってんの?とかそういう突っ込みはナシで行こう。

「それじゃあいきますよオオ!!位置についてェェよ〜〜い、ど〜〜ん!!」

合図とともに司会者が骨を手放し、定春とエリザベスが走り出した。
と、思いきや、定春が走り出した直後に進路変更して刹希たちにいる方へと猛突進してきた。
そして銀時に覆いかぶさる定春。刹希と新八の顔は真っ青である。

「定春ちゃんイキナリ逆走して飼い主に食らいついたァ!!一体何なんだお前らの関係は!?」

何と言われても一応飼い主とペットだ。
まあ、定春的に銀時が飼い主と認められているのかはこの光景から判断しかねるが。
そうこうしている間にエリザベスはものすごいスピードで骨に向かって走っていた。あんなにでかい図体なのに予想以上に速い速度だ。これには刹希も呆気にとられた。
何事も見た目によらないなぁ、と。
しかし、猛ダッシュするエリザベスの足が前に出るたび生々しいオッサンの足のようなものが見えたのである。
それに司会者も気が付いたようである。

「一瞬オッサンの足のよーなものが……アッ、また見えた!」
「言いがかりは止めろ。エリザベスはこの日のために特訓を重ねたんだ。オッサンとかそんなこと言うな!」
「あ……スンマセン」

だが刹希は内心、あれただ白い布かなんか被ってるだけなんじゃ……と決して言及してはいけない領域に足を踏み込んでいた。
口には出さないが。口には。

「刹希さんどうしましょう!もうダメだ!」
「しょうがない……神楽!銀時を骨の方まで投げ飛ばして!」
「はァ!?オイ、何言ってんだ刹希!」
「わかったアル」

刹希のとっさの判断に銀時は顔面蒼白で逃げようとするが定春が邪魔でそれも叶わない。
ここまで定春が銀時に異常な執着を見せている今、これを利用しない手はないのだ。
というか、普段役に立たないんだからこういう時ぐらい仕事しろ、という理不尽な仕返しだったりする。

「ホーレホーレほしいかいコイツが」
「オイオイ降ろせクソガキ!」

銀時の着物の衣紋部分に傘の先を引っ掛けて、その怪力で銀時を揺らし始めた。
降ろせと言っているが降ろすはずもない。
定春は揺れている銀時に釘付けで傍から見ていた刹希はいかにも満足げだった。

「いけェェェ!!」
「あああああ!これは坂田さん定春くんが自分に食らいついてくるのを利用してエサになった!」

思いっきり飛ばされた銀時はそのまま前を走っていたエリザベスに激突して、エリザベスもろとも倒れる。
それにすごい勢いで駆けてくるが定春。
白熱している中、司会者の後ろに居た小太郎が走り出したのを刹希は見た。

「定春そのまま突っ込めェェ!」
「ああしかしエリザベスちゃん!既に骨に手を……」

負ける、と思いきや、横で転がっていた銀時がエリザベスの首の前に木刀を差し入れ動きを封じた。
が、銀時の首に腕を巻きつけきた小太郎。

「エリザベスを離せェェ!!豪華賞品は俺とエリザベスのも……フン、なんだかんだ言っても御主人様が好きか?」

そう小太郎は頭から血をだらだら流しながら言う。
全然かっこよくねーよ、と言ってやりたい。一方で小太郎の頭に噛み付いた定春によくやった!と、今夜の夕食は奮発してあげよう!と刹希は思った。

「だがそれ以上かみつこうものなら君の御主人の首を折るぞ!!さあどーする?」
「どーするじゃねーよ!!通じるわきゃねーだろ!!」
「てめーらよォ!!競技変わってんじゃねーか!!頼むから普通にやってくれェ!!放送できねーよコレ!」

この面子が揃った時点でまともな競技になるとは新八も刹希も思っていないだろう。
なんせ手の付けられない天然指名手配人が宇宙海賊のコスプレしてテレビに出ているのだから。
そりゃ、まともなわけがない。

「あー、もういいっスわ〜。なんかだるい」
「!!」
「え?」

遠くからだが確かに聞こえた今まで聞いたこともないオッサンの声に全員が固まった。
それは確かにエリザベスの方から聞こえてきて、上に乗っていた銀時はかなり驚いて首から木刀を離すほどだった。

「もう帰るんで、ちょっと上どけてもらえます?」

口からにゅるっと出てきた腕に全員が声を上げた。

「あああああ!!コレは……」
「……ウソだろ、エリザベ……」

プチン、とここで放送が中断された。

まさか本当に予想が的中するなんて、と後に刹希はそう言うだろう。
もちろん、万事屋に帰ってきた刹希たちがお登勢たちにエリザベスがどうなったのかと詰め寄られたのは言うまでもない。





2014.2.16


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