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「変であることを恐るな、変とはつまりオリジナリティーだ!第一回宇宙で一匹変てこペットグランプリぃぃぃ!!」

ついに始まってしまったこのテレビ企画。
スタジオ裏でスタンバイしていた銀時たちはすごい容姿をチェックしていた。

「銀ちゃん、服もっと可愛い方が良かったアルか?」
「あー、いいんじゃねーの?可愛い可愛いお前の可愛らしさ最大限に発揮されてっから。それより刹希、四着目来てきちゃったんだけどやっぱ一着目の方が良かったかな?」
「知るか、何着目ってどれも同じ柄なんだから違いなんてわかるわけないでしょ。それより新八、この格好綾野刹希に見える?」
「あんたら何しに来たんだァァァァ!!これペットの番組ですよ!誰もあんたらの容姿なんて気にしませんから!!てか刹希さんに至っては誰ですか!!?」

そう言って刹希に向けられる視線。
そこには髪をツインテールに縛って、派手目な着物を着て更に伊達メガネまでしている刹希の姿があった。
なんだその変わりよう!?と言いたい。まさかそういうのに興味がない人だと思っていたから新八はかなり驚いていたのだ。

「バカが!実家にバレたらどーすんの!?足はいつなんどき残しちゃいけないって習わなかった!?」
「なんの足だよ!てかバレないようにするためにそれだけ変装するってどんだけバレたくないんですか!!」
「前も言ってたアルな。刹希実家嫌いアルか?」
「うん嫌いかな、家出中だし」
「はァァァ!?え、刹希さんそういう身の上だったんですか?」

こんな場面でさらっとカミングアウトする刹希に新八はさらに驚く。
しっかりしているし、なぜ今まで銀時と一緒にいたのか……は幼馴染らしいが、それでもよくわからなかったのは確かだ。
幼馴染だからといっても万事屋で居候している経緯は何なのかはわからず、でも理由は聞けずじまいだったが、まさか家出だったとは、かなり意外だ。
家出中だから幼馴染の家に居候、ということか。

「言ってなかった?」
「全然聞いてませんよ!」
「まあまあ、良いじゃない。今回はこの辺で、ほら、もうそろそろ出番だよ」

刹希がそういうとちょうどスタッフがスタジオに出るようにと合図を送ってくる。
強制的に打ち切られてしまったお話に新八はやきもきしていたが、もうそんなことは言っていられない。
これからさらに波乱が待ち構えているのだから。

「新宿かぶき町から来ていただきました宇宙生物定春くんと飼い主の坂田さんファミリーです」

拍手に迎えられて出てきた坂田さんファミリー。
それをスナックお登勢のテレビで見ていたお登勢は心底驚いていた。
そしてやっぱり刹希の格好にかなり驚いていた。グレたのかと思ったらしい。

「ホントに来ちゃいましたね……」
「やるからにはてっぺん狙うぞ、気合入れていけ」

刹希はカメラの位置を確認していい感じで見えない位置に立ったのだが、見えてません、前に出てくださいとカンペで言われてしまい渋々出る羽目になった。
しっかり従うそういうところがなんだかんだ素直だと言わざるを得ない。

「えーと、こちら坂田さんに食いついて離れないのが定春くん?っていうか大丈夫ですか」
「大丈夫ッスよ、定春は賢い子だからちゃんと手加減してますからね〜」
「血ィ出てるんですけど……」
「銀さん、審査員ひいてますよ、血ィ止めて止めて」

だらだらと頭から血を流している銀時。
このままでは印象が悪くなるばかりである。刹希は的確に冷静にフォローしにいった。

「定春にとってはこれが愛情表現の一つなんです。無邪気に遊んで大好きだよってアピールしてるんですよォ」
「アピールって言ってもすごい血ィ流しちゃってますけど」
「というか定春が噛むのも彼にだけなんです。すごい懐いているみたいで、それに彼も石頭だからかまれても全然ピンピンしてていいコンビだと思いません?」
「彼フラフラしてるけど大丈夫なの?」

司会者に指摘されて見ればすでに顔を少し青くさせている銀時がいた。
脇を肘で小突き絶対倒れんなよ、と脅しながら笑顔でそれもフォローしていく刹希。

「神楽ちゃん定春止めてよ!刹希さん今忙しいんだから神楽ちゃんしか定春止められないんだから」
「ウン」

返事をした神楽はカチコチに体が固まっていてそのまま移動を始めるのだが、どうにも緊張しているようで向かっている場所がスタッフのところだった。

「定春ぅぅ!!メッ!!晩ご飯抜きにするアルヨ!!」
「オメーも抜きにされてーのか!?」
「……えーペット以上に個性的な飼い主さんたちみたいですね。じゃあいったんCMでーす」

やっとCMに入り、刹希は緊張で固まっている神楽の腕を掴んで銀時と新八のいる場所まで引き戻した。
ペットよりも飼い主の印象しか付いていないのはよくない。いい感じで注目はされるだろうが優勝にはなりにくいポジションに立ってしまった。
刹希はどうしたものかと本気で悩み始めていた。商品や金には目がないのである。

「ちょっとォ、ちゃんとやってくださいよ。こんなんじゃ決勝まで勝ち残れるわけないでしょ!?」
「そーか?審査員の奴ら俺にくぎづけになってたぞ」
「そりゃくぎづけにもなるわ!鏡で自分の顔見て来い!!」
「とりあえず定春、銀時を噛むのはやめなさい。家に帰ったらいくらでも銀時の頭噛んでいいから」

そういうと定春は素直に銀時から離れておとなしく座っていた。
そして血だらけの銀時の顔を元々用意していたタオルを渡して拭かせた。

「三人とも動きがかたいネ。舞台をフルにつかっていこう!身体もっと動かそ!!」
「おめーが一番ガチガチじゃねーか!!」

そうこうしている内にCMが終わってしまった。
今回の企画は対戦形式らしく、これから対戦相手が出てくるらしい。
どんな相手でもこの面子なら負ける気は全くないのだが……。
司会者の声掛けにより相手が出てきた。しかしまたもやどこかで会ったことのある人物が現れやがったのである。

「続いての変てこペットは宇宙生物エリザベスちゃん。そして飼い主の宇宙キャプテンカツーラさんです」
「……なにやってんのアイツ?」

現れたのはやっぱり小太郎だった。しかも春雨の一件でしていた海賊の衣装だった。
マジでなにやってんだアイツ、馬鹿なのか、あーただの馬鹿だったと思いながら刹希は頭を抱えたくなった。

「指名手配中の奴が変装までしてテレビに出てきたよ」
「よほどペットが気に入ってるよーですね……」
「ペットもそーだけどあの衣装も気に入ってるアル」
「今すぐ真選組に通報してやろうかな……」
「今はやめとけな、芋づる式になりそーだから」

頭の斬れる土方のことだ、なんの拍子で元攘夷志士かバレるかわからない。
そんな危険なことをするよりも今は優勝を狙うほうが先決なのだ。
とりあえず、今回は目をつぶるしかない。

「えーカツーラさん、宇宙キャプテンって要するに何なんですかね?」
「要するに宇宙のキャプテンです」
「えーあちらの定春ちゃんと対戦し、勝ち残った方が決勝へと進めるわけですが、どーですか、自信のほどは?」
「あんなのタダのデカイ犬じゃないですか!ウチの実家の太郎もアレぐらいありますよ」

その発言に刹希がイラッとする。
だいたいお前の家に犬なんかいなかっただろーが!むしろ猫の方が好きだって言ってたじゃねーか!

「んだコラァヅラァ!てめーのそのペンギンオバケみてーな奴もな、ウチの実家じゃ水道の蛇口ひねったら普通に出てきたぞ」
「ウチの実家だってな、そんなペンギンオバケ庭にわんさかいたんだからね、全っ然珍しくなんかないから!」
「ばれるよ、ばれるウソは止めて!!」

なんだかすごく小太郎には負けたくない気分なのだ。
ここで負けたら全てにおいて小太郎よりも下に位置づけられてしまいそうで、それは根本的に避けたかったのかもしれない。
というか、あんな馬鹿そうな格好をしている奴にただ単に負けたくないだけだなのかも。
自分のことは棚上げしてるが。


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