A
「まァとにかくそーゆうことなんだ。こちらも毎年恒例の行事なんでおいそれと変更できん。お妙さんだけ残して去ってもらおーか」
「お妙さんはいらねーんで刹希さんだけ残して去ってくだせェ」
「いや、お妙さんと綾野ごと去ってもらおーか」
「いや、お妙さんはダメだってば」
「それじゃ刹希さんは俺と一緒に飲みやしょう」
「私お酒飲めないからごめんなさい」

さり気も何もない沖田が刹希に駆け寄ろうとするがそれを土方が襟首掴んで止めた。
え、何お前あの少年に好かれてんの?と小さい声で聞いてくる銀時に刹希は可愛いよね、弟みたいで、と返す。
とりあえず、刹希は沖田に対して弟としてみていることにほっとする銀時だった。

「とにかく、そこは俺たちが毎年使ってる場所だ。お妙さんも綾野もいらねーからとっととどけ」
「何勝手ぬかしてんだ、幕臣だかなんだかしらねーがなァ、俺たちをどかしてーならブルドーザーでも持ってこいよ」
「ハーゲンダッツ1ダース持ってこいよ」
「フライドチキンの皮持ってこいよ」
「フシュー」
「案外お前ら簡単に動くな!」
「面白ェ、幕府に逆らうか?今年は桜じゃなく血の舞う花見になりそーだな……」

なんだか一触即発な雰囲気である。
唯一朗らかにしていた刹希だが、ため息をついて手を叩いた。
一同刹希に注目する。

「せっかくの花見です。ここは両者大人な解決を行いましょうね?」
「大人な解決だと?」
「ええ。……貴方たちの持っている有り金全部差し出せば立ち退きを考えなくもありませんよ?」
「アンタが一番性質悪いよ!どこのチンピラだァァァ!!」

満面の笑みで金をせびり始める刹希に新八はツッコミ、お妙や神楽は楽しそうにもっとやれと騒ぎ立てる。
一方の真選組側は苦虫を潰したような表情で各々袂を覗いていた。
土方は眉間にしわを寄せて忌々しそうに見てくる。

「金を要求しようなんざ、相変わらず金に目がねェ女だぜ」
「こちらは日々金欠状態なんです。公務員やってるそっちとは違うんですよ」
「土方さん、俺ァ金持ってきてないんで土方さんの有り金全部出してくだせェ」
「なんでそうなんだよ!!お前らも何財布出してんだ!!仕舞えバカヤロー!」

全員でこれだけで足りるか?と相談し合う男どもに土方は青筋を浮かべながら怒鳴った。
銀時のために場所移動するのも嫌だが、刹希の思い通りになっていく事の方が土方は好かなかった。

「てめーら脅迫でしょっ引くぞ!」
「何を言うんですか、これは立派な交渉ですよ。ここは元々私たちがとった場所、立ち退きを命じるにはそれ相応の金額を提示しなければなりません。等価交換です、当たり前でしょー、警察さん」

最後の警察を強調して刹希はにっこり笑った。恐るべし綾野刹希。
そんな刹希の言動に銀時も調子に乗ってまくし立てる。

「そーだそーだ金もってこい!世の中金が全てだからね?金のねーやつには用ないからァねー刹希ちゃん」
「何肩組もうとしてんだ、邪魔だバカ銀時」
「お前よくこんな男と一緒にいるな……お前らまさか」
「ちょっと、変な誤解しないでくださいよ!ただの幼馴染ですから!!」

刹希は肩に乗せられていた銀時の腕を叩き落としながら、土方の引き気味の発言に怒り心頭である。
こんな大人数いる場所でそんな誤解を招くようなことを言わないでもらいたかった。
断じて違う、一緒にいるのはただの流れであの白もじゃが一人だとダメ人間だからなのだ。
自分がいないとどっかでのたれ死んでしまうような男だからしっかり見てやらなくちゃいけないってだけだ。

「子供の面倒みるのは親の務めでしょう!」
「いや刹希の子供になった覚えはないからね!?」
「銀ちゃんはおっきな子供アル」
「てめーには言われたかねーよ、大食い小娘!」

神楽の頬をつねり伸ばせば、神楽も負けじとつねり返していた。というか引きちぎらんばかりだった。
それを新八が止めに入り刹希はため息をつきながら立ち上がった。

「沖田くん」
「なんですかい?」
「この場の収め方って何があると思う?」
「……そうですねィ、そりゃぁやっぱり」

任せてくだせェ、と親指を立ててキメ顔で言ってくる沖田を刹希は手を振って見送った。
無茶ぶりしてみるものだ、と内心満足気に頷きながらこれでゆっくり花見ができると思った。
だがこの面子でどれだけほのぼのしている遊びや解決法でも大騒ぎになることを、刹希はまだしっかり理解していなかった。

「皆さん!ここはひとつ花見らしく決着つけやしょーや。第一回、陣地争奪……叩いてかぶってジャンケンポン大会ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「花見関係ねーじゃん!!」

沖田の一言で始まった叩いてかぶってジャンケンポン大会。
ルールは周知の通りなので以下略として、え、わからない?わからないなら銀魂3巻を買って読んでおくよーに!
そんなわけで、真選組チームと万事屋チームとで別れて対決することとなった。

「えー、勝敗は両陣営代表三人による勝負で決まります。審判も公平を期して両陣営から新八君と俺、山崎が務めさせてもらいます。実況は綾野刹希さんです」
「実況とかいるんですかコレ?」
「新八、細かいことは気にしちゃいけないよー」
「勝った方はここで花見をする権利+お妙さん+綾野さんを得るわけです」
「何その勝手なルール!!あんたら山賊!?それじゃ僕ら勝っても負けてもプラマイゼロでしょーが!!」

プラマイゼロといってもマイナスの場合の損害は計り知れない。
だって二人も持っていかれるのだから、なんだか割に合わない気がする。

「じゃ君らは+真選組ソーセージだ!屯所の冷蔵庫に入ってた」
「要するにただのソーセージじゃねーか!!いるかァァァ!!」
「ソーセージだってよ、気張ってこーぜ」
「オウ」
「バカかー!!お前らはバカかー!!」
「負けられない戦いがそこにある!!」
「ちょっと刹希さんまでボケるのやめてくれませんか!!?てかあんたツッコミじゃないの!?」
「いつから私がツッコミ役だと錯覚していた?」
「爆笑しながらBLE○CHのパクリすんのやめてくれませんんん!?てか酔ってんの!?」
「酔ってないってー、銀時じゃあるまいし!」

そう言っている刹希の手にあったのは紙コップ。その中身は酒だった。
ついでにその酒、最初に沖田が持っていた酒であった。彼女は確実に酔っている。
いつの間にそんなことになっていたのか、といえばジャンケンポン大会を始める準備中である。
水でも飲んでくだせーと言われて渡されたコップを刹希にしてはためらいなく飲んだのである。

「オイオイ、刹希に酒飲ませんなよーめんどくせぇんだから」
「よっぽど変な酒癖じゃねぇならいいじゃねぇか」

爆笑しながら酒を飲み干していく刹希を見やりながら土方はそう言った。

「今日は笑い上戸なの。この前なんか泣き上戸で面倒くさかったんだからな」

そりゃめんどくせぇわ、と土方も思った。
つまりその場その場で反応が変わってくるということだ。
一番タチが悪いかも知れない酒癖である。

ではここからは刹希の実況でお楽しみください。

「ではでは、第一戦目と行こォォ!」
「えーと、それでは一戦目、近藤局長VSお妙さん!」
「姉上、無理しないでください、僕代わりますから」
「いえ、私がいかないと意味がないの……あの人どんなに潰しても立ち上がってくるの、もう私も疲れちゃった。全て終わらせてくるわ」

おーっと、お妙!
さっそく物騒は言葉を残して近藤さんの前へ座った!
終わらせるって何?人生?なんにしても嫌な予感しかしない!

「ハイ!!叩いてかぶってジャンケンポン!!」

お妙パー!近藤グーを出した!
けど近藤すぐにヘルメットをかぶって防いだ!
これは近藤さんの勝ち……いや!お妙ハンマーを持ってなんか呪文唱えてる!怖!
これはやばい!マジでやる気だぁぁぁぁ!!
近藤さんが待ったをかけてるけど容赦ないお妙はそのままハンマーを振りかぶる!
そして……いったァァァァァ!すごい地響き!ヘルメットもぼろぼろです!これもうルール関係ないね!

「局長ォォォォォォォ!!」
「てめェ、何しやがんだクソ女ァァ!!」
「あ゛〜〜〜〜やんのかコラ?」
「「「すんませんでした」」」

敵も味方も土下座させるあたり、お妙の恐ろしさが如実に現れてるよねー。
敵には回したくない人種って感じだね!

「刹希さん?誰が恐ろしいのかしら?私はどこからどう見ても仏様のように優しいでしょう?」
「あ、そうだっけ?うん、めんごめんごーお妙!」
「刹希お前もう実況終わり!うっせーから!とりあえず俺の隣にいなさい!」

ひょいっと抱えられた刹希はそのまま銀時の横に移動させられてしまった。
不機嫌そうにしていた刹希に銀時はこれでも食べてなさい、と彼女持参の弁当を口に突っ込ませていた。

「えーと、局長が戦闘不能になったので一戦目は無効試合とさせていただきます。あと刹希さんも酔ってしまったので実況は終了です。じゃァ、二戦目の人は最低限のルールは守ってください……」
「!!お゛お゛お゛お゛もう始まってんぞ!!」
「速ェェ!!ものスゲェ速ェェ!!」

二戦目、勝手に試合を始めていたのは神楽と沖田だった。
二人ともものすごい速さでヘルメットとハンマーをかぶったり叩いたりしている。
それを見ていた土方は感心したように神楽を見ていた。

「総悟と互角にやりあうたァ何者だ、あの娘?奴ァ、頭は空だが腕は真選組でも最強をうたわれる男だぜ……」
「互角だァ?ウチの神楽にヒトが勝てると思ってんの?奴はなァ、絶滅寸前の戦闘部族“夜兎”なんだぜスゴイんだぜ」
「ウチの神楽は食欲でも誰にも負けないんだからね?アレだから、炊飯器の米も飲めるんだからさァ、総悟くんには出来ないでしょー?」
「なんだとウチの総悟なんかなァ……」
「オイッ、ダサいから止めて!!俺の父ちゃんパイロットって言ってる子供並みにダサいよ!!あと刹希さんそれは自慢にもなってないから!」

えー、とまたもや不機嫌になる刹希は八つ当たりするように銀時と土方に酒をついでいく。そして自分も酒を飲み干していくのだ。
それに気がついた新八が青い顔をする。

「ていうかアンタら何!?飲んでんの!?」
「あん?刹希が注いでくれた酒が飲めないわけねぇだろォ!?なァ!」
「上等だコラ、もう勝負は始まってんだよ!綾野注げ」
「はいはーい、どんどん行こーぜ!」
「よし次はテキーラだ!!」
「上等だ!!」
「勝手に飲み比べ始めちゃってるよ……」

三人の周りに集まり始める酒瓶、それを刹希が開けてどんどん二人に注いでいく。
いつもなら飲み比べをする彼らの頭を叩いて説教でもするだろう役目の刹希なのだが、やはり酒が入ると全くの役立たずだった。
際限なく酒を注いでいる、いやむしろ強要していた。

「あ、気持ち悪」
「ちょっとここで吐かないでよー!あっちで吐け」

いくら刹希が注いでくれるといっても銀時は酒に弱い。ついでに土方も弱い。
口を押さえている二人に刹希は笑顔で、だがそれ以外許さないとばかりに冷淡に言い放った。
二人は指さされた敷物の端に行って吐いた。
それをちょうど目にしていた新八はズッコケていた。

「オイぃぃぃ!!何やってんだ、このままじゃ勝負つかねーよ!!」
「心配すんじゃねーよ。俺ァまだまだやれる、シロクロはっきりつけよーじゃねーか」
「すっごい酔ってる奴が何言ってんだろーね?」
「そういう刹希さんもすごい酔ってるからァァ!!いい加減目ェ覚ましてくださいよ!!」

とりあえず持ってきていたお茶を渡して飲ませようとしたが逆に酒を飲むように強要された新八だった。

「このまま普通にやってもつまらねー。ここはどーだ、真剣で“斬ってかわしてジャンケンポン”しねーか!?」
「上等だコラ」
「お前さっきから「上等だ」しか言ってねーぞ。俺が言うのもなんだけど大丈夫か!?」
「上等だコラ」
「行ったれー銀時ィ!」

お互いフラフラヨロヨロしながら真剣を握って向かい合った。
何なんだこの対決、と頭を抱えたくなる新八とそれを見ながらケラケラ笑っている刹希。
仕舞いには自分も立って二人の傍まで行ってしまう始末だ。

「いくぜ!」
「斬ってかわして」
「ジャンケン」
「ポン!!」

銀時はチョキ、土方はパーを出した。

「とったァァァァ!!」

銀時が容赦なく剣を振るった。ズゥン斬られたそれは真っ二つに切られてしまう。
新八と山崎は驚愕の表情を浮かべていた。

「心配するな、峰打ちだ。まァこれに懲りたらもう俺にからむのは止めるこったな」
「てめェさっきからグーしか出してねーじゃねーか、ナメてんのか!!」
「ちょっとォォ!!ジャンケンしないのー!?ほらグー出してんじゃん私!」

そこには桜の木を斬った銀時と定春とジャンケンし続ける土方と誰もいないのに一人ジャンケンしている刹希がいた。

「お互い変な上司がいて大変ですね。一緒に飲みましょーか、グチを肴にして」
「ええ、そうですね。……まあ刹希さんはいつもあんなんじゃないですけどね、普段はもっとしっかりしてますけどね」
「うん、知ってる」

季節は春。
春と言ったら桜、桜と言ったら花見。
花見と言ったらやっぱり、花を愛でるもいいけど仲間とドンチャン騒ぎもまた一興でしょう!





2014.1.12



(あとがき)
夢主のキャラ崩壊が凄まじいですが、きっと作者の夜中のテンションのせいです。
まあ花見と酒飲んだってことで大目に見てあげてください。
ついでに春雨の時は絡み酔いだったに違いない。


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