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刹希は今までペットと言うものを飼ったことはなかった。
もちろん、銀時もである。
というか、お互い一人でいた所を拾われたこともあり、世話される経験は少なからずあるが誰かを、何かを世話するなんてことは今まで一度もないのである。
万事屋を始めてから子守の依頼もあったが、二人してあたふたしたのはいい経験だったはずだ。

「おめっ、ダメだってこんなとこで用たしたら……お前の排泄物はわんぱく坊主の夢よりでかいんだから!!」

真昼間に銀時と刹希は定春の散歩に出かけていた。
途中で買い物もする予定だったため刹希もついてきたのだ。
現在、リードを持っているのは銀時。
しかし今まさに道端で用を足そうとしている定春のおかげで散歩が進んでいない。

「チキショー、だから散歩なんざ嫌だったんだよ!面倒は必ず私がみるアルとか言ってたくせによオ!最終的にはぜってーお母さんが犬の世話することになるんだよ!!アレ?俺お母さん?」
「まあポジション的にはお母さんだよね。日々家に居るし」
「んじゃお前がお父さんってわけ?」
「ろくに家事もしてくれない妻と大食い娘の父親とか嫌過ぎるって」

勘弁してよ、と本気で嫌そうにする刹希。
その点、新八はなんて出来た子なんだろう、と最近深々と思う。
あの姉がいるおかげで料理もしっかりできて率先して家事をしてくれる。
正直どっかで家政婦でもしたらいいんじゃないか、と今考え付いた。

「我ながらナイスアイディアじゃない……?」
「フン、ペットのしつけもできんとは情けない……」

良い事思いついた、これは帰ったら新八に是非とも言ってあげなくては!と思っていると、見知った姿が目の前に現れた。

「動物一匹自由にできんようで天下国家をどうして動かせようか……貴様それでも侍か!?」
「ヅラァ、なんだソレ気持ちワル!!」
「小太郎後ろに変なのがくっついてるよ……」

今まで見たことのない生物が桂小太郎の後ろに立っていた。
春雨の一件振りに現れたと思えば、いきなり変な生物を連れている小太郎に銀時と刹希は驚く。

「気持ち悪くない!変でもない!エリザベスだ」
「単体で見るとそーでもねーがお前とセットになると気持ちワリーよ。っていうか、お前が気持ち悪い!」
「え、でも小太郎といるとまだアホっぽくない?あれ単体だとちょっと怖くない?」

昔からの仲だからか二人とも容赦ないことを言う。
しかも二人とも反対のことを言うからなぜか言い争いが始まる始末だ。

「おい、銀時、刹希、俺とエリザベスのために争うな!!」

「別にお前のために争ってねーよ!気持ちワリー!!」
「別にアンタのために争ってない!気持ち悪い事言わないで!」

「息ピッタリだな、お前達」

同じように手を振って突っ込む様はある意味で双子のようだ。
相変わらず仲良しだなと満足気に頷いている小太郎に、銀時と刹希はその頭を叩いてやりたくなった。
だがそんなことをしていては話も進まない。
刹希はため息をついて小太郎の後ろにいる変な生物、エリザベスについて触れることにした。

「で、そのエリザベスどうしたの?」
「うむ、坂本のバカがこのあいだ俺の所に来ておいていったんだ。大方どこぞの星で拾って来たんだろう、相変わらず宇宙航海などにうつつをぬかしているらしいからな」
「辰馬、小太郎のところには来たんだ。こっちには一切顔出さないのに」
「場所がわからんのではないか?今度会ったら教えておこう」
「ほんと?ありがとう!」
「てか何、連絡とってんのお前ら!?」

まるで同窓会のような会話を繰り広げながら、なぜか刹希は住所を書いた紙を小太郎に渡していた。
結構本気で連絡を取りたいらしい。
天然ボケ二人にため息をつきながら銀時はふとエリザベスに目をやる。
そして一瞬で目をそらした。なんだかずっと見ていられない雰囲気があった。怖い。

「てかオメー地球外生物は嫌いじゃなかったか?」
「こんな思想も何もない者をどう嫌いになれというんだ。それに……けっこうカワイイだろう?」

小太郎は真面目顔でそう言って去って行った。
去っていく後ろ姿を銀時と刹希は信じられないような目で見ていたのは言うまでもない。

「……銀時、私、昔から小太郎のセンスがよく分からないんだけど。初恋が未亡人なのもよく分からないけどさ」
「お前、それ今更過ぎだわ。アイツは昔から頭のネジいくつか飛んでんだよ」



  *



結局、二人は定春の散歩と買い物を終えて万事屋に帰宅した。
一体何だったんだか、と思いながら、刹希は買ったものを冷蔵庫にしまう。
お茶を沸かして湯呑に注ぎ、居間へと戻った。
相も変わらず銀時の頭を甘噛みして離さない定春の姿があった。噛まれているのになんの反応もしないとはもう日常の一部とでも言うことだろうか。

「ウチのももらってくんねーかな。生産性のねェ奴はウチにはいらねーよ。コイツが産むのはウンコと痛みだけじゃねーか!」
「そんな言い方定春に失礼アル。定春!そのままかみ砕くヨロシ」
「待て待て待て待て、わかったわかった!!ウンコと痛みプラスシッコだ!」
「ヨシ、定春離してやれアル」
「ヨシじゃねーよ。ロクなモンプラスされてねーじゃねーか!」

いやまあこの巨大犬を引き取ってくれるというのならそれはとてもありがたいことだ。
やっぱりあの図体だと簡単には胃を満腹させられないし、お腹はすぐ減るし。
食費を圧迫していることには変わりない。

「まあ、もらってくれるならありがたいけど。生産性のない奴がいらないってなら銀時も似たようなもんでしょ」
「ちょっとォォォ!?刹希さんそんな怖い冗談言わないで!銀さん冷や汗かいちゃうっての!!」
「え、冗談に聞こえた?」

にっこりと笑みを浮かべて銀時を見下ろす刹希。
さーと顔を青くさせる銀時と、また始まったと表情を引きつらせる新八。
銀時としてはその笑顔が冗談に見えないから茶化して否定して欲しかったのだが、やはり冗談ではないようだ。
どーぞ、と目の前に出されるお茶が何やら不吉に見えて飲む気になれなかった。

「ま、まあ銀さんはいつもだらけて生産性ゼロですけど」
「ゼロじゃねーだろ!なんか一個くらい生産性あんだろォォォ!!」
「ペットは安らぎを与えてくれる存在ですから、見返り求める方が間違ってますよ」
「……ま、それもそっか」

刹希も納得したのか、すんなり新八の発言に同意してソファーに座って茶をすすり始めた。
確かに、巨大ではあるが見た目はかなり可愛い方だ。
普通のサイズにしたら絶対可愛いに違いない。うん、癒しをもらっているのには賛成だ。
と、その時、付けていたテレビ番組の方から気になる話が耳に入ってきた。

「鎖国解禁以来我が国には天人と共に様々な生物がやって来ております。あなたの近所にも変なペットがいませんか?当番組ではそんな変でかわいいペットを集めて日本一を決定したいと思います。グランプリには豪華賞品が……」
「……安らぎと豪華賞品、どっちがほしい?」

テレビかぁ、と内心すごく嫌なのだが、やはり豪華賞品は目が離せない。
目の前でテンションの上がっていく三人を見ながら、刹希は渋々それに乗るのだった。
というかこの三人だけで行かせたら優勝なんて絶対できないと思ったのはいわずもがなである。


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