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ああ、頭が痛い。

この感覚いつぶりだろ……昔過ぎて覚えてないや。

何があったんだっけ、確か、ハム子探してて……

ああ、そうそう……小太郎のバカのせいで春雨に勘違いされて……

で……えーと、銀時と合流して……私は頭殴られて……

「!銀時!!――痛っ」

ようやく目を覚ました刹希は勢いよく起き上がるも後頭部に走った痛みに頭を抑えた。
二日酔いで朦朧としていた頭は今でははっきりとしていて、その変わりに酔いとは違う痛みが襲った。

「よォ、起きたか。女」
「!!」

聞き覚えのある声に刹希は振り返った。
そこには、銀時を窓から突き落とした天人がいた。確か、名前は陀絡と言っていただろうか。
刹希は周囲を見回して自分の置かれた状況を理解しようとした。

「ここは……」
「春雨の船内だ」

やっぱり。刹希は春雨に拉致られたのだ。
そう考えると、新八と神楽もこの中にいるのではないか。
この部屋にはいないが、絶対にそうだろう。

「子供二人はどうしたの!?」
「……ああ、あのガキ二人か」
「二人に手出したらその首掻っ切るから」
「威勢のいい女だな、伊達に“血染めの椿”名乗ってねェわけか」
「実際に見たわけでもないのに知った口利かないでくれない?」

立ち上がろうとすれば、両手足に冷たい感触があった。
見れば枷が両手と両足にあり、自由が利かない状態にあった。
鉄製で簡単に斬れない仕様だ。

「あのガキ二人がどうなるか……そりゃ、お前が桂の居場所を吐くかで決まるな」

そう言って陀絡は刹希の目の前に腰を落とすと顎を掴んで引き寄せた。
刹希は顔をしかめて陀絡を見上げる。

「桂の居場所?……そんなの知ってるわけないでしょ」
「下手な嘘も大概にしろよ?てめーらが桂のもんだってことは分かってるんだからよ」
「あの場にいただけでそう断定されるのはすごい癪に障るんだけど」
「嗅ぎ回ってたことに違いはねぇだろうが」
「話が分からない奴ね。だから、私たちはあんたが突き落としたハム子探してただけだっての。今はあんた達が薬売ってようが何してようがどうでもいい、私には関係ないから」

陀絡と刹希の互いの睨み付けた視線が交錯する。
両者一歩も引かない意見だった。
陀絡は刹希を解放するとマントの裾を払いながら言った。

「まあどの道、あのガキ共は海の藻屑となるだろうがよ。お前のような上玉そういねェからな」
「……春雨って人身売買もするんだ。本当腐ってる」

そう吐き捨てて言えば陀絡は眉を寄せて刹希を見下してくる。

「調子に乗ってられんのも今の内だぞ、女ァ」

そういって陀絡は懐に手を入れる。
が、その時入り口から他の天人が入ってきた。

「陀絡さん、ちょっと」
「?」
「表に妙な奴等が来てまして」
「妙な奴等?適当に処理しとけ、俺ァ今忙しいんだ」

陀絡はそう言って天人を外へ追い返す。
邪魔が入って少しイライラしている陀絡に刹希は鼻で笑う。

「女一人に忙しいんだ?」
「お前だけなわけねぇだろうが、お前が吐かないんならガキに聞くまでだ」

懐から取り出したそれは小さな小瓶だった。中身は半分と入っていない透明な水のようなものだった。
刹希が怪訝そうにそれを見つめていると、陀絡は卑しい笑みを浮かべて刹希に近付いてくる。
本能で危険だと感じた。
横たえていた身体を持ち上げて刹希は陀絡から距離を取ろうとする、が、あっという間に背に壁がぶつかる。
反撃でもして逃げるのも手だが、如何せん手と足には鉄の枷。身動きは封じられている。
いくらなんでも無理だった。

「最近の奴らはよォ、従順な下僕ってのが好きらしいぞ、女」

ガッと刹希の頬骨を掴むと、小瓶の蓋を開けて刹希の口の中へ突っ込んだ。
中の水を流し込むために顔を上に向けられて、耐えきれずにそのまま喉奥へと水を飲み干してしまう。

「げほ、げほっ……何す――」
「今てめーが飲んだのは最近新しく仕入れた物でなァ、お前みたいな反抗的な奴を大人しくさせてくれるんだ」
「この……っ」
「ついでにそいつは即効性抜群だ、まァせいぜい頑張るこったな」

口の中に残っていそうな先ほどの液体を吐き出す。
にやりと笑った陀絡はそのまま刹希を放置して部屋から出て行った。


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bkm
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