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「あ、お帰り三人共」

大江戸警察所の中から出てきた銀時、新八、神楽に刹希は笑顔で手を振った。
そんな彼女に対して、不機嫌な顔をした銀時と神楽、そして疲れ切った顔をしている新八。
三日ぶりに対面するが彼らは満身創痍と言った感じだ。

「なんで刹希はとり調べ当日で終わってんだよォォ!!」
「えこ贔屓アル!!刹希に好かれようってのが見え見えネ!!」

怒りを露わにした銀時は看板を蹴って発散する。
神楽も同じように鉄拳をくらわす。しかも、ちょっとヒビ入った。大丈夫だろうか……。

「仕方ないですよ。刹希さんは桂さん達に人質にされてたって世間体的になってるんですから」

そう、結局あの池田屋の件では、刹希が弁解するも事実は真選組の考えそのままで世間に伝えられた。
何せ防犯カメラにもハッキリ映ってしまっているのだ、証拠は挙がってしまっている点ではどうしようもない。


『だから、あの三人も私と同じように桂の思惑に引っかかったんですよ』
『アイツらに何言われたか知らねーが、何かばう必要がある』
『そういうんじゃなくて……』


何度、土方に事情を説明しても聞き取ってはくれなくて、かれこれ十回目あたりの説明で諦めた。


『もうそれでいいです。何でもいいから早くここから出してください。店長に迷惑かけたこと謝んなくちゃなんないんですよ』


そんなわけで、ちゃっかりと刹希だけ、とり調べ当日に解放されたのだった。
だがまあ、真実がどうであれ、世間が認知する事実がどうであれ、銀時達が気に入らないのはもっともだ。

「こっちは命張って爆弾処理してやったってのによォ。三日間もとり調べなんざしやがって、腐れポリ公」
「もういいじゃないですか。テロリストの嫌疑も晴れたことだし」

不機嫌な銀時を新八はなだめすかすも、聞く耳持たずだ。

「どーもスッキリしねェ。ションベンかけていこう」
「よっしゃ、私ゲロ吐いちゃるよ」
「器の小さいテロすんじゃねェェ!!」
「私、迎えに来なければよかったわ……」

時間の無駄だったかと肩をすくめて、ここに来たことを後悔する。

「アンタらにかまってたら、何回捕まってもキリないよ!僕、先に帰ります。ちゃんと真っすぐ家帰れよ、バカコンビ!!」

そう言い残して新八は先に帰ってしまう。
しばしの沈黙ののち、刹希は銀時に向き直る。

「だってさ、バカコンビ」
「イヤイヤ、コンビってことは俺と刹希だよな」
「一回死んで考えてこいよ」
「スイマセン」

黒い笑みを浮かべながら銀時の胸倉を掴みかかった。

「しゃーねぇな、今回は俺がツッコみでいくか」
「お、銀時がんばれ」
「刹希のためにがんばるわ」
「別に私じゃなくて、読者のためにがんばって」

冷ややかな視線を送っていると、銀時の足下にいた神楽が本当にゲロを吐いていた。

「ちょっと神楽!!」
「おまっ……どこにゲロ吐いて……くさっ!!」
「ぎ、銀時、近寄んないでくれるかな。ホント、悪いけど……」
「汚物を見るような目で見ないでくれない!?吐いた本人こっちだから!」

刹希は数歩距離を取って、二人を遠巻きに見つめる。
その時、甲高い笛の音が刹希たちの耳に入った。
何事かと思いきや、警察所の塀の上から男が飛び降りてきた。
神楽の前に見事着地した男は、見事に足下のゲロですっ転んで頭を強打する。
この男、運がないなと思った刹希。

「いだだだだだだ!!それにくさっ!!」
「オイ、そいつ止めてくれ!!脱獄犯だ、くさっ!!」

男を追いかけてきたらしい役人は傍に居た刹希たちに捕まえてくれと言ってくる。
状況がいまいち分からずに首をかしげていると、男は手近にいた神楽を人質に取った。

「来るんじゃねェ!!このチャイナ娘がどーなってもいいのか!!」
「貴様!!」
「オイ、そこの白髪、免許もってるか?」
「普通免許はもってっけど」

銀時が言うと男は神楽を人質に車を用意しろと言ってきて、どうやらそれで逃亡するらしい。

「私帰っていい?」
「お前がいないと話終わるだろーが、一緒に来なさい」

そんなわけで運転席に乗り込む銀時を追って、刹希も助手席に乗り込んだ。
後部座席に乗った男は車を出すよう言う。
車外にいる役人は人質をどうたらこうたら言っているが無視して、銀時はアクセルを踏んだ。
ついでに、人質の神楽は暢気に寝こけていた。
何て危機感のない子なんだ。まあ特別心配する必要もないから構わないのだが。


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bkm
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