B
『――に続き、今回卑劣なテロに狙われた戌威星大使館。幸い死傷者は出ていませんが……え……あっ、新しい情報が入りました。監視カメラにテロリストと思われる一味が映っているとの……あ〜〜、バッチリ映っちゃってますね〜』

現在、なんとか戌威族から逃げおおせた刹希たちはホテル池田屋の一室に避難していた。
刹希は周囲を見回してから、この件の用意周到さに呆れていた。
目の前のテレビには爆発した直後の万事屋四人の姿が映っている。それを見ると更に頭が痛くなってくる。

「バッチリ映っちゃってますよ。どーしよ、姉上に殺される」
「テレビ出演、実家に電話しなきゃ」
「勝手に人の顔出して金出るんだよね?え?実家にバレたらどーすんの……全くさー」

各々テレビに映った自分に感想を漏らす。
新八は後ろで寝転がっている銀時と座っている刹希に話を振った。

「もしかして、神楽ちゃんの言う通り、何かの陰謀ですかね、こりゃ」
「私の勘、当たりアルか!!」
「ま、陰謀っちゃ陰謀かもね」

同時刻で同じように飛脚が事故った件(くだり)から、そして桂の登場を考えるに神楽の勘は間違いではなく、むしろ正解だろう。
刹希は自分の横で横になっている銀時を盗み見る。

「なんで僕らがこんな目に……唯一桂さんに会えたのが不幸中の幸いでしたよ。こんな状態の僕らかくまってくれるなんて、銀さんと刹希さんの知り合いなんですよね?一体どーゆー人なんですか?」

そう新八に言われて、銀時と刹希はお互いに顔を見合わせてから同時に言った。

「「テロリスト」」
「ていうか、街に小太郎の指名手配写真あるでしょ」
「え、はィ?」
「テロリストなどと、そんな言い方は止せ」

新八が顔をひきつらせていると、部屋に話の中心人物である桂小太郎が入ってくる。

「この国を汚す害虫"天人"を打ち払い、もう一度侍の国を立て直す。我々が行うのは国を護るがための攘夷だ。卑劣なテロなどと一緒にするな」
「攘夷志士だって!?」
「なんじゃそらヨ」

せんべいを頬張りながら、神楽が訊ねてきた。
つい最近地球にやってきた神楽が知らないのも無理はない。

攘夷とは、二十年前の天人襲来の時に起きた外来人を排そうとする思想。
その高圧的に開国を迫ってきた天人に危機感を感じた侍は、彼らを江戸から追い払おうと一斉蜂起して戦ったのだ。
だが、天人の強大な力を見て弱腰になった幕府は、侍達を置き去りに勝手に天人と不平等な条約を締結した。
幕府の中枢を握った天人は侍達から刀を奪い、彼らを無力化した……。

「――主だった攘夷志士は大量粛清されたってきいたけど……まだ残ってたなんて」
「……どうやら俺達ァ踊らされたらしいな。なァオイ、飛脚の兄ちゃんよ」

銀時の視線の先を辿っていくと、傷だらけの男がバツの悪そうな顔をして立っていた。
そして、よく見るとその隣には刹希のバイトの店先で事故を起こしていた男もいた。

「まぁ、話が上手すぎるからそうだとは思ったけど……」
「全部てめーの仕業か、桂。最近世を騒がすテロも、今回のことも」
「たとえ汚い手を使おうとも手に入れたいものがあったのさ」

そう言った小太郎は手に持っていた刀を前に出す。

「……銀時、刹希、この腐った国を立て直すため、再び俺と共に剣をとらんか。白夜叉、血染めの椿と恐れられたお前たちの力、再び貸してくれ」





2013.8.7
2013.9.17 修正



(あとがき)
つくづく二次元で、着物で苦も無く走ってるキャラってすごいなって思います。
きっとヒロインも難なく走っちゃうんでしょうけど、ここはあえて銀さんに姫抱っこさせてやったぜ!


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bkm
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