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「ふざけんじゃねェェェェ!!テメーの蛮行によってどれだけの人々が苦しんでるのかわかってんのかァァ!!」
「やかましーわクソババアぁぁ!!回覧板まわすの遅れたくらいで何でそこまで言われなきゃならねーんだァァ!?」
「あの二人またやってる……」

玄関を出たところで刹希はため息をついた。
横道のど真ん中でお登勢とごつい女が言い合いをしているのだ。
“ごつい女”といったがあれはどう見ても男で、彼の前でそういった発言は禁句なのだが、はっきり言えばあれはオカマだ。

「んだようるせーな」

つい先ほどまで寝ていた銀時が、眠そうに家から出てきた。
さすがに二人の大声に起こされたようだ、起こされる前に起きて欲しい。
刹希は時計を確認してそろそろバイトへ行かなければなぁと、ぼんやりと考える。

「オイうるせーんだよ、そこの妖怪二匹。今何時だと思ってんだ、そして俺の血圧がいくつだと思ってんだ」
「うるせーんだよこのダメ人間が!!」
「まっとうな人間はとっくに活動始めてんだよ!」
「刹希を見習えって言ってんだろーが!」
「お前ら自分のこと人間だと思ってんのか?それは遠い昔の話だよ」

そういえば銀時はあのオカマにまだ会ったことがなかった。
昔から一言二言多いのが彼の癖だから、当然の結果なのだが、刹希は呆れたような、痛いところを突かれたような、そんな面持ちでその様子を見ていた。


「私にたてついたからには落とし前つけてもらうよ、コイツは預かるからね」
「好きにしな」
「刹希、アンタもいいね」
「あ、どーぞどーぞ。煮るなり焼くなり」

彼の、いや彼女の掌、その一張りで簡単にダウンした銀時は、ズルズル引きずられて行ってしまった。
二人の後ろ姿を見送っていると、買い物帰りの新八と神楽が刹希の隣にやってきた。

「刹希、あのモンスター何アル?」
「んー?あれはねェ、お登勢さんと同じこのかぶき町を支える四天王の一人、鬼神マドマーゼル西郷よ。そしてカマっ娘倶楽部のママさんでもある」
「刹希さん知り合いなんですか?」
「うん、まあ昔ちょっとね……」

昔と今ではかなり路線変更しているため、再会したときは反応にかなり困ったものだ。
西郷が男でも女でも、どちらにせよ、彼女が強いことには変わりないのだが。
刹希は二人に家のことを任せてバイトへと足早に向かっていった。



 * * *



「あ〜銀さん西郷さんに捕まっちまったのかい」

小料理屋あじさいで皿洗いをしながら、先ほど起こったことを店長に愚痴っていた。
愚痴というか、主に銀時の生活の乱れについて愚痴っている。
いい年した大人がいい時間までゴロゴロ寝て、博打やって、ロクに仕事しないで、と女特有の話がコロコロ変わりながら愚痴っていたのだ。
そんなだらしない生活をしているものだから、西郷に捕まってしまうのだ。

「いずれ連れてかれるだろうとは思ってましたけどね」
「ちゃんと教えてあげればいいじゃないかい」
「親獅子は子を崖から突き落とすんですよ」
「手厳しいねぇ」

店長はそう言って出来上がった料理を出すよう促す。
刹希は手を拭くと、その料理を受け取って客席に向かった。

確かに教えてあげればいい。
教えなかったことについて深い理由があるわけではない。
強いて言うならば、銀時に対しての憂さ晴らしとでも言うのだろうか。

西郷は今はあんななりをしているが、男気のある男の中の漢といっても差し支えない人だ。
あの男の下でこき使われて少しはまともになって欲しいと、淡い期待も少なからずある。
もちろん、そんなのは泡ほどの望み薄な願いということは分かっている。
そんなんでまともになるならとっくに真面目になっているだろう。

「刹希ちゃん、刹希ちゃん」
「はい?」
「今注文入ったから出前お願いできるかな?」
「はい、わかりました。どこですか?」
「カマっ娘倶楽部だよ」

皆まで言うまい。


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bkm
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