B
「初対面から思ってたけどやっぱ君たちエコ贔屓すぎじゃないですかね……」
「ありゃ、そうですかね。まあ刹希さんはここではヒロインポジションなんでね、吊るし上げはやっぱりアンタらの役回りかと」
「オイゴラァ!私も正規ヒロインアル!忘れてんじゃねーヨ!!」
「黙ってろ胸板チャイナ、この世の中は厳しいんでィ、お前と刹希さんどこどう見ても勝者は明らかだろィ」
「ギィィィィィ!!」

逆さ吊りされたままそんな叫び声上げると頭にすぐ血が上るよ神楽、と刹希は顔を引きつらせながら言う。
結局身バレした銀時たちは土方と総悟に現行犯で捕まり、なぜか庭にある木に逆さ吊りされていた。
そして刹希は総悟となぜか揃ってその吊るされている様子を眺めていた。

「あの……悪気は無かったんです……仕事も無かったんです。夏だからオバケ退治なんて儲かるんじゃねーのって、軽いノリで触れ回ってたら……ねェ銀さん?」
「そーだよ、そこの女が仕事持ってきてくれたんだよ?俺たちは悪くないんだよ?」
「オイてめー私のせいにする気か、今すぐ牢屋にぶち込ませてやってもいいんだからな」
「冗談じゃーん!!!可愛い冗談!!そんな怖い顔しないでェェお願いィィィ」

真っ青顔で言ってくるが、なんだかすごく庇う気力も失せてくる。
やっぱり仕事持ってこなければよかったな、と心底後悔してしまう。

「銀ちゃん、私頭爆発しそうバーンって……助けて!」
「オーイ、いたいけな少女が頭爆発するってよォ!いいのかてめーらこの小説おわるぞコラァァ!!」
「次回から「真選組血風帳」スタート!みんな絶対見てくれよな」
「あ、コレ僕ら殺されますね」

刹希さんお願い助けてェェ!!と新八が泣きながら言ってくる。
なんというか、さすがにこの小説が終わるのもいただけないし、新八が泣きながら懇願してくるのを見るのも申し訳なさがほんの少しあったりする。
だが横の総悟は微動だにしない。
この子は本当にドが付くSの王子様だ。

「そろそろ降ろしてあげて、総悟君。一応反省してるだろうし……」
「刹希さんが言うなら……オイ刹希さんに免じて降ろしてやらァ、沖田様を崇め奉って靴舐めて感謝しろィ」
「ざけんなヨォォ、お前なんか文中に変なの入れてんじゃねーヨ!」

持ってた刀で容赦なく綱を切るもんだから、神楽は変な声を出して地面に落ちてしまった。
ああ、可愛そうに。大丈夫?と刹希は流石に可愛そうで神楽に駆け寄って起こした。
まあ擦り傷があるが大丈夫そうだ。さすが夜兎である。

「本来ならてめーらみんな叩き斬ってやるところだが、生憎てめーらみてーのに関わってる程、今ァ俺達も暇じゃねーんだ、消えろや」
「あー、幽霊恐くてもう何も手につかねーってか」

解放されて早速真選組を小馬鹿にし始める銀時に刹希はため息をつく。
反省なんてするわけもないだろうが、やっぱり反省してなかった。
反省してなかったっていうか、反省してたけど今さっきどこかに置いてきたという方が近い気がする。

「かわいそーアルな、トイレ一緒についてってあげようか?」
「武士を愚弄するかァァ!!トイレの前までお願いしますチャイナさん!!」
「お願いすんのかいィィ!」

近藤も近藤である。
恥も外聞もかなぐり捨てているのか、というくらい潔かった。

「いやさっきから我慢してたんだ、でも恐くてなァ」
「ホラ行くヨ」
「オイぃ!アンタそれでいいのか!?アンタの人生それでいいのか!?オイ!」

土方がそういうがまあ聞いていない。聞こえていない。
神楽と一緒にトイレに行く後ろ姿を眺めていると情けなくなってくるのはなぜだろう。
むしろ土方が可愛そうに見えてくるのはなぜだろう。

「てめーら頼むからこの事は他言しねーでくれ頭さげっから」
「あら、土方さんが頭下げるなんてないですよ、やってもらったら?」
「お前は暇なのか?茶々入れないでくんない?」
「酷い!ヒロインが話さないなんて文的に良くないですよ!空気ですよ!?」

いいんですか!?といえばどーでもいいわと返された。
なんとも冷たい副長様だ。

「真選組大好きっ子だからさァ、ほら、それくらい心配なんだって、刹希のこと興味ないくらい。でも俺はちゃんと刹希のこと思ってるか」
「それは至極どーでもいいとして」
「俺の扱いィィ!!」

泣きつこうとする銀時を避けて、刹希は土方へと話を振った。

「で、どーするんですか?見た分、本当に皆さんやられちゃってますけど」
「そうですよ、大丈夫なんですか?」
「情けねーよ。まさか幽霊騒ぎ如きで隊がここまで乱れちまうだァ。相手に実態があるなら刀で何とでもするが、無しときちゃあこっちもどう出ればいいのか皆目見当もつかねェ」
「え、土方さん本当に幽霊なんて信じてるんですかァ〜?」
「痛い痛い痛い痛い痛いよ〜、お母さ〜んここに頭怪我した人がいるよ〜!」
「お前らいつか殺してやるからな」

2人揃って馬鹿にしてくるあたり、ホントこいつら打ち合わせもしないで悪ノリうぜぇとか思っているのだ。
刹希としては、なんだか銀時と同じものを感じていじるのが面白いというだけなのだ。

「まさか土方さんも見たんですかィ?赤い着物の女」
「わからねぇ……だが、妙なモンの気配は感じた。ありゃ多分人間じゃねェ」
「痛い痛い痛い痛い痛いよ〜お父さーん!」
「絆創膏もってきてェェ!!できるだけ大きな人一人包みこめるくらいの!」
「おめーら打ち合わせでもしたのか!!」

息合わせられるほど面識ないよな!?とつっこむがきっと彼らはS気が強いから考えてることが似ているのだ。
土方とはまた違った同類なのだ。

けれど、土方の言った言葉に刹希は先ほど感じた視線を思い出す。
まさか、本当に幽霊がいるのだろうか。
確かに得体の知れなさというか、姿が見えないあたりが不気味なのだが……。

「赤い着物の女か……確かそんな怪談ありましたね。僕が通ってた寺子屋で、一時そんな階段が流行ったんですよ」
「へ〜そうなんだ、どんな怪談?」
「えーとなんだったっけな……ああそうそう」

怪談なんて、銀時が嫌いだったからほとほと縁遠いものだった気がする。
まあ子供は怪談話なんて大好きだから、やっていたかもしれないがあまり覚えてもいない。

「夕暮れ刻にね、授業終わった生徒が寺子屋で遊んでいるとね、もう誰もいないはずの校舎に……赤い着物きた女がいるんだって。それで何してんだって聞くとね……」
「ぎゃああああああああああああああああ!!」

オチ間近になったその時、屋内から近藤の野太い叫び声がこだました。
全員顔を見合わせて、直様トイレに走り始めた。
怖い話を始めた直後なせいか、刹希でも少しばかりドキドキしていた。
近藤の身に一体何が起こったのだろうか。

「神楽どーした!?」
「チャックに皮がはさまったアル」
「神楽それは絶対違うと思う」

近藤さんのために一応訂正しておくけれど、心底どこはどうでもいい。
神楽が先程から扉を叩いているが反応は一切なかった。
土方が無理やり扉を蹴り開けると、そこにはなぜか便器に頭から突っ込んで上下逆さまな近藤がいた。

「なんでそーなるの?」

静まり返った空間に響く銀時の一言はまさにその通りだった。




(2015.11.25)


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