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目の前に広がる光景に刹希は頭が痛くなりそうだった。
いや、別にこんなことになっていたとしても深くは追求する気は皆無だ。
だが、とりあえず、刹希が朝起こしに来るということを念頭に置いて行動してくれと言いたいのである。

刹希は逸らしていた視線を、もう一度目の前の布団に向けた。
その布団に銀時と見知らぬ女が仲良く寝ている。
字に起こしてみれば、刹希は鼻で笑いたくなるくらいの心境に陥った。

同時に第一発見者になった彼女の心は、嫌が応もなしにすさんでいった。
銀時にはクズを見るような蔑んだ視線を向けるばかりだ。

新八と神楽には部屋に入らないように言うとして、子供達が起きてくる前に帰ってくれるとありがたいのだが。
そう思っていると、ふと締め切ってある部屋でそよ風を感じて視線を天井に向けた。

「……え?」

そこにはポッカリと空いた天井が。
雨ざらしもいいところである。
数秒天井をまじまじと見ていた刹希は再度、銀時と女を見遣った。
よくよく見れば女と銀時の寝ている布団の上にも天井の崩れた破片らしきものが散乱していた。
刹希は天井と女を観察しながら簡単に結論づけた。

「……不法侵入か」

先日から天井が雨漏りしていたし、きっと木が腐っていたのだろう。
それを、上を通っていた忍者らしき女が踏み抜いて、銀時の真上に落下し気を失ったのだろう。
刹希は己の分析に納得しながら襖を閉じて、台所に戻っていく。

「そりゃそうだよ、今までなかったし」

これまで銀時が女を連れ込んで行為に及んだことはない。
刹希が気がつかなかっただけかもしれないが、銀時がそうも簡単に隠せると刹希は思っていない。
だいたい彼にそんな女を連れ込む度胸があるのか、いや、ないない。あるはずない。
刹希は笑みを浮かべながらないない、と繰り返す。
冷静に考えてみれば、銀時は綺麗に布団の中に収まっているし、事後特有の雰囲気も皆無だった。
早とちりしそうになったが早く誤解が解けて良かった。

「……ていうか、なんで安心してるんだろう」

野菜を切る手を止めて、ふとそんなことを考える。
先ほどの光景を思い出しながら、首をかしげるがすぐに笑ってまあいいか、と流してしまう。
どうせすぐに女も出て行くだろうと、思った。


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bkm
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