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「アーウチ!!なんてこった!!」

万事屋のリビングに男の甲高い声が響く。
テレビの前で、神楽がフラフープをしながら見ているけれど、あんなフラフープ家にあったっけ、と刹希は首をかしげる。

「大丈夫、そんな時はコレ。ダイエットマシーン「まわる〜まわ〜る〜脂肪は燃えるちゃん」!これを一日12時間やるだけでみるみるお腹の肉がとれちゃうんだから〜」

通販番組の女がそう言いながら神楽と同じようにフラフープを腰で回している。
そりゃ一日12時間もフラフープを回し続けてたら、いやでも腹回りは削られるだろう。
すげー非効率極まりないけれど。

「今ならこれに赤青色違いの2つもつけてなんと驚きのこの価格!!12回払い月々たったこれだけで夢のボディーが手に入っちゃうんだから〜」
「これでダブルバーガーともお別れだキャッホォォウ!!」
「キャッホォォウ!!」
「キャッホォォウじゃねーよお前!」

銀時が神楽の頭部をスリッパで華麗に叩いた。
刹希はソファーに座って両手で顔を覆い身悶えしていた。
銀時はずっと神楽が腰で回していたフラフープを差して言う。

「それどっから手に入れたてめー」
「アレ電話したらくれたヨ。コレもコレもくれたヨ、キャッホォォ!!」
「ギャッボォォ!!」

銀時にしては珍しく精神的攻撃を受けて吐血したようだ。ほんと珍しい。
神楽の両腕の中には通販番組でよく見かける商品があった。
本格的に叫びだしたい気分の刹希。
大人二人が精神的ダメージを大いに受けている横で、新八が神楽に優しく解説を始める始末である。

「神楽ちゃんこれはテレビショッピングって言って、テレビで買い物する番組なんだ。それ……タダじゃなくて買っちゃったんだよ」
「マジでか」

意外なシステムにびっくりする神楽だが、あまり深刻に捉えていないのが子供だ。
というか、いつの間にこんなに買ってたのか、全く気がつかなかった自分に驚く刹希である。

「わかったならスグ返してこい」
「オイオイ、冗談キツいぜジョニー」
「誰がジョニーだ!!!」

こんなんに誰が冗談言うか、と怒っているが全く動く気配を見せない神楽。
刹希はため息をついて神楽の肩に手を置いて諭すように言う。

「神楽、今ならまだクーリングオフ間に合うから早く返してきなさい、ね?」
「マリリンまで冗談キツいぜ!給料ロクにくれないくせに!」
「マリリンじゃないし、給料に関しては銀時に文句言いなさい!」

給料をまともに支給できないのは確かに申し訳ない。
けれどそれを自分に文句を言うのも筋違いだと、刹希は思う。
給料どうこうまで銀時の面倒を見るつもりはない。

「オイ新八手伝え、返しに行くぞ」
「ハーイ」
「や〜め〜ろ〜や〜ジョニー!マクスウェル!」
「マクスウェルって誰よ」

通販商品を全部抱えて家を出ていく二人に、神楽は不機嫌にソファーに倒れ込んだ。
あたいがダブルバーガーになってもいいのかとかなんとか文句を言っていたが、どう考えても燃費の良さそうな体である。
むしろダブルバーガーになるならとっくになっていても可笑しくないのだが、そこはあまり頭にないらしい。

「ちょっと出てくるアル!定春ついてくるヨロシ」
「ワン!」

玄関に向かう神楽の、手に持っているものを見て刹希は笑う。
銀時の置いていった木刀を手にしていたが、所有者に持って行く気はないのだろう。
大方、売って金にでもする気なのか、なんなのか。

「あれ汚れてるし絶対金にならないと思うけど」

先日カレーをこぼして見事にカレーの匂いが染み付いた木刀だ。
モノはいいが、一見して普通の木刀だから、普通の質屋なら普通に買えないと返品するだろうな、と刹希は考えて笑う。

そろそろ替え時だなと言っていた銀時の言葉を思い出して、そういえばこれも随分昔に買ったものだと刹希は懐かしんだ。


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