なら言うなや

「すいかの種、飲むとさあ」

 彼の受け皿には白かったり黒かったりと多少のバリエーションはありながらも同じ植物の種子であることはほぼ間違いないであろうと思われる種が点々と落とされている。対してほとんど水分しか感じない甘い組織を咀嚼することもなく飲み下して「はぁ」と相槌を打った私の受け皿は食べ終わったすいかの残骸のみだった。

「盲腸になるって言うよね」

 彼が私の受け皿を眼鏡の奥から眺めて言う。

「……知らないしならないと思う」

 私は最後に口に含んだ欠片を飲み込むと端的に答えて次の切れに手を伸ばした。えー、と無感動に不服を唱えた彼は「ていうか食べ方もったいなくね」と私の受け皿を指差した。
 そっちの食べ方が意地汚いだけだから。無感動にそう返すと今度は本当に納得がいかない様子で(しかし妙に間延びした)抗議の声を出し、彼は赤い部分が残る私のすいかの皮をなかば恨めしそうに見つめた。そして不意に、ぽつり。

「まーどうでもいいんだけどさあ」

20120910
ショートショートというか何というか



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