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「なんで駄菓子屋やねん……」
「ええやないですか」

 アイス買いましょアイス、と言って財前はワイシャツの胸元をつまむ。風を通すようにそれを揺らすと、ぱたぱたという軽い音と連動するように黒いシャツがちらついた。

「……何見とんの謙也さん」
「…見てへんわ」
「嘘やん。キモいっすわー」

 全く焼けていない白い肌にまで目を奪われていたとも言えず、ごまかすように謙也も自分のシャツを掴んだ。
 少し乱暴にぱたぱたと揺らす。暑いなぁ、と無意識に言葉がもれた。胸元に入って来る空気が気持ちいい。
 やーらし、と財前が呟く。何を指して言ったのかわからなかったが、それを訊ねる前に財前は店に入ってしまい、とりあえずは忘れることにして追いかけた。

「ごめんくださーい…」

 ひんやりとした空気が流れている(冷房ではなく単に日陰だからだろう)店内で、住居に続いているらしい奥に呼びかけてみる。
 こういった店ももう絶滅危惧種なのかもしれない、などとちらっと考えたところで、白い髪を後ろに結ったおばあさんが出てきた。
 謙也とおばあさんが何事か会話している間に、財前はアイスのケースにちょこんと乗っかっている白い箱を手にとる。

「ばーちゃん、コレ何」
「んー?」

 天井に手が入れられる程度の穴が空いたそれを財前が揺する。どうやらくじのようなものらしいが、暗くて中は見えなかった。
 それねぇ、とおばあさんが言う。最近店に入れてん、と続けた。

「ふたつまとめてとれるんよ」
「…何が?」
「アメちゃん。同じ味やったら相性抜群やねん」

 あぁそういうの、と謙也が頷く。相性占いの類らしい。

「二つで一つやさかいお得やで」
「ほんま?」

 お得という単語に反応した謙也へ、財前が冷ややかな目を向けた。




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