ショートショート

 以前Twitterにてリクエストで書かせていただいた140字SSの詰め合わせ(リアタイよりお引っ越し)

 ちとくら×2滝・跡日岳ユウコハ忍跡×2鳳宍×2柳生謙













ちとくら
正直最初は興味本意な部分もあったとか、それ自体は一向に構わないけれど本人に堂々と言うことじゃないだろう。でも本当に離したくなくなって今も一緒にいたいと思ってるとか、何でもない日に何でもないように言うことじゃないだろう。「やけん、なぁ、結婚して」「ほんま、アホか自分…」愛しとるわ。

ちとくら2
正反対だとよく言われる。真面目、不真面目、勤勉、奔放。苦笑を浮かべて俺を案じる言葉の数々の中で、同性であることに疑問を抱く声がなかったのは救いだった。「恵まれとんなぁ思った」「そげん言われっと?」「ん?」「数々、ち言うけん」「うん」 千歳がなぜか不満げな顔をしたのが、少し笑えた。



滝・跡
試しに髪を撫でてみると伏せられた睫毛が微かに震えた。跡部はかれこれ30分ソファに腰掛けたままの窮屈そうな体勢で寝ている。横にさせたいけれどそれはさすがに起きてしまいそうで、とりあえず隣に座って肩に寄りかからせてみた。「…お疲れさま」少しつまらないけど、跡部はちゃんと休ませないと。



日岳
くだらないことで喧嘩するのは俺も彼も慣れてるから、いつも通りに遠慮のない言葉を言っただけ。目を見開いてから気弱に顔をうつむかせるところなんて初めて見て焦ったから、つい手を掴んでしまっただけ。顔を上げた向日さんに何故か苛ついたから、口を塞いでみた、だけ。「あぁもう、好きですよ馬鹿」



ユウコハ
小春の涙を一度だけ見たことがある。一度だけ。頬を伝うそれがあんまり綺麗だったから、俺は思わず抱きしめて、雫に口づけたのだ。思えばキスをしたのだってその時きりだった。いつもは彼がさせてくれないから。小春はその時俺を拒まず、でも受け入れもせず薄く微笑んで、後悔するでユウ君、と呟いた。



忍跡
忍足の手は案外、暖かい。心が冷たいんじゃねーのと笑ってそれでいいと笑い返されたのはいつだっただろうか。「跡部の手握るためにあったかくしとくわ」なんて、やはりとんだロマンチストだと思ったのを覚えている。部室のソファで眠る忍足の手に右手を重ねて、握って、指を絡めて。暖かい、と呟いた。

忍跡2
髪を撫でようと差しのべた手の、少し伸びた爪が頬をかする。あ、と思うが無反応。「堪忍、痛なかった?」「ん」一応声をかけてみても、跡部はぱらりと本のページをめくって頷いただけだった。そんな横顔を眺めながら彼の髪を指ですいて、文字をなぞる眼が早く俺を見ないかな、なんて。「なぁ跡部、暇」



鳳宍
俺から好きだと言ったことはなかったかもしれないと思った、だけ。「なぁ長太郎、好きだぜ」振り向いた笑顔が硬直して、赤くなって、それから涙ぐむのを見て笑ってしまう。「宍戸さんがそんなこと言ってくれるなんて思わなくて、つい」 恥ずかしそうに俺を抱きしめたこいつが、やっぱり好きだと思う。

鳳宍2
宍戸さん宍戸さんと俺を慕ってくる様子がまるで犬みたいで、思わず目を細めて頭を撫でてしまうことがある。そのたび口をとがらせるこいつはこども扱いをされていると思っているらしかった。「俺の方が背は高いのに」「自分よりでかい犬だって撫でたいときは撫でたいだろ」「え、犬?」 あ、しまった。



柳生謙
きらきらしたそれに手を伸ばしたとき、彼からの抵抗はなかった。「なん、そない珍しい?」「……えぇ、なんだか、柔らかみがあって」相応に痛んではいるようだったものの、触れて不快には感じない。謙也君は目線の変わらない相手に撫でられているのが不思議だと呟いて、「でもなんかええな」と笑った。
20120217/ショートショート



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