書きかけ/光謙


2011/11/22 22:58



 今日は本当に、ついていない。
 財前光は昇降口から外の様子をうかがい、ため息をついた。
 朝から部活の先輩らしい連中に絡まれるわ、17時から出かけるから鍵を持っていないなら早めに帰れという家族からのメールに部活が終わってから気がつくわ、あげく傘がないのにこの土砂降りだ。当然鍵は無い。
 もう少し、雨脚が弱まるのを待ってみようか。そう思った途端に雷の音が空に響いた。

「………」

 厄日、なのだ。そうに違いない。
 右手の袖をずらす。18時半。濡れても良い、もう帰ろう、と思った。家族の帰りは夜になるだろうから、いつ帰っても家に入れはしないのだが。それでも。
 びしょ濡れになれば、ほんの少しくらいは、この気分も晴れるのではないだろうか。
 半ば自暴自棄にそう思い、鞄を抱えて歩き出した、──その時だった。

「ちょお、待ち!」
「え、───!」

 ぐいっと左腕を掴まれてよろめく。鞄が手から落ちてくぐもった音をたてた。
 倒れそうになったところを支え、すまん大丈夫か、と腕を掴んだままあわてて謝るその人物を、財前はふりあおぐ。


 まず目に入ったのは、太陽のような、金髪だった。





 こんなはじまり。初対面光謙ウマー
 昨日のあれと同じく発掘したもの。いつか全部完成させるぞーなんて言いつつ。



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