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「どうしてあいつを選んだんだ?」



背を壁に預け、体勢を楽にしている男は目の前で上着を脱いでいるnameに疑問を投げ掛けた。

突然の質問にぱっと答えを出せず、誤魔化すよう笑って見せるが、相手が相手なだけにいつまでもそれが通用しないことは十分承知していた。



「どうして、って言われても…」



なんて言ったらいいのか、と悩みながら上着をハンガーにかける。
nameがずっと傍に居たいと選んだ相手――は、男にとって意外だったようで、いつか訊ねようと機会を窺っていたのだ。



「…どうしてでしょう?」

「…俺に聞いてどうする」



本人が分からない答えを他人である男が知るはずもなく、nameに向けて深いため息をついた。
自分が知っていれば、こんな馬鹿げた質問すらしない。

聞いた自分が馬鹿だったと体を正し、部屋を出ようとするとnameが「あっ」と声を上げた。



「私きっと…彼を放っておけないんです。」

「放っておけない?」



怪訝な顔をする男に対して、nameは納得のいく答えを見つけると、寂しそうに笑いながら続ける。



「彼は私をずっと守ってくれました。あぁ、それが仕事だということはもちろん分かってます。私がこうして笑ってお父さんの近くに居られるのも彼のお陰です」



でも…と一度顔を伏せる。
表情が見えなくとも少し落ち込み気味であるのは直ぐに分かった。

ずっとnameの傍らに居続けた所為なのか、それとも彼女に向ける姿勢が仕事から愛へと変化した所為なのか。

男は次第に彼女の気持ちを読み取れるようになっていた。



「あの人…ちゃんと見てないと、居なくなっちゃいそうで怖いんです」



nameの声が小さくなっていく。
失いたくない。
愛とも哀とも取れる言葉。

相手への想いで溢れる彼女の一句一句に、男は心底――が羨ましくなった。




100418UP


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