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「後藤さん…?」
自分にしか聞こえない程の小さなそれは無視をされると思ったが、室内の端に居た男は視線をnameに向けた。
父親の知り合いである議員の生誕パーティーに招待され、父親である平泉総理とSPの桂木、海司と共に挨拶周りをしている時だった。
今のnameでは買えそうにない背広を羽織り、配られた儘手をつけられていないグラスを持って、会場を見渡している。
上海の件以来、顔を合わせていなかった為、少し挨拶しようとnameは後藤に近寄った。
「お久しぶりです。」
「…あぁ」
「今日はどうして此処に…?」
「…貴女には関係のない」
プイッと逸らすと彼の視線の先には本日の主役である議員。
楽しそうに談話している様子を凝視する後藤。
公安である彼が堂々とした面立ちでこの会場にいると言う事実は一つの仮説が立てられた。
「仕事中、なんですか?」
「……」
否定もしなければ肯定もしない。
だが、後藤が纏う空気がピリッと張りつめた。
プライベート中に出会ったことはないが、いつも気を張っているわけではない。
それは前件解決時に知り得たこと。
彼の緊張が伝線したかのように、nameもまた背に冷や汗が流れた。
周囲に怪しまれぬよう平然とした顔で後藤の傍にいるのがやっとである。
「平気だ」
「え?」
「nameさんには優秀なSPがいるだろう?」
そう。
今日は昴こそいないが、桂木と海司が会場に居合わせている。
今もこの会場に異常がないか詳しく調べているだろう。
何かあれば室内にいる人たちを安全な場所に移動させるのが彼らの仕事。
ならば自分は自分が今できる事をするまで。
「後藤さん、ありがとうございます!」
「お礼を言われている事は何も言ってないが?」
不思議そうに見てくる後藤にnameは笑った。
自分を落ち着かせるための言葉を発したのにそうとは気づいていない後藤が何だか可笑しかったのだ。
クスクスと自分の知らないところで笑うnameが面白くなかったが嬉しそうにしている彼女を見てふと笑みを零した。
「そう笑っていればいい」
「え?」
「nameさんの笑顔を守りたいと思う奴らがいる。だから君は笑っていてくれ」
セットしてもらった髪を遠慮なしに崩すように、頭を撫でる後藤は止めてくださいと必死で止めるnameを見て更に笑う。
ツンケンとしており近寄り難い雰囲気ではあるが、人の痛みも苦しみも知っている後藤の笑顔がもう一度見てみたいnameであった。
〜fin〜
100212UP
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