私は今日、久しぶりにエンジュシティにやってきた。
「ミナキ? ミナキじゃないか!?」
「マツバ!」
そこでこれまた久しぶりに古くからの友人、マツバに会った。
「なぁ、ミナキ。」
「ん?」
「僕、君に聞きたいことがあったんだ。」
そういうマツバの目はキラキラと輝いていた。
・・・なんか嫌な予感がする。
「君のそれの話なんだけど、」
そう言って金髪の彼が指差したのは、私の自慢の前髪。
「その重りを外すと、通常より3倍速くなるってのは本当なのかい!?」
「ぶっ、」
そんな質問が彼の口から飛び出してくるなんて思いもしなかったもんだから、私は盛大に吹いてしまった。
気持ちを落ち着けるために、コホン、と1つ咳払いを。
「一応聞くけど、それは誰情報だい?」
こんな馬鹿なことをいう輩なんて決まっているが。
「えっ、ナマエだけど?」
やっぱりな。
彼女があの変な夢を、マツバに吹き込んだか何かしたのだろう。
「で? 本当なのかい??」
「うっ、」
マツバにキラキラとして純粋な瞳を向けられて、ちょっとたじたじになる。
こんなに期待を込められてしまっては、“嘘”だと言い出しにくい。
「・・・マツバ、これは企業秘密なんだ。 いくら君でも教えられないよ。」
よし!
我ながら上手なはぐらし方だ!!
「そうなんだ・・・。それなら仕方ないよね。 じゃ、僕はもうジムに戻るから!」
そういってマツバは去っていった。
まったく、皆は私の前髪をなんだと思っているんだ!
<終われ>
∵私はミナキに夢を見ているのかもしれない