「ランス様! ケーキ食べませんか?」
「遠慮します。」
「では、クッキーはどうでしょう!?」
「いりません。」
ヤドンの井戸にて、謎の少年に任務を邪魔されたのは、つい先日のことで。
どこからその噂を聞いたのか知らないが、アテナ班のしたっぱ(名前はナマエというらしい)がしつこく私に付きまとってくる。
「・・・それよりあなた、仕事はどうしたんです?」
「そんなの、サボってきました!!」
そこは堂々と言うところではないでしょう。
「では、早く仕事に戻りなさい。」
「イ・ヤ・で・す! ランス様が落ち込んでるようなので、元気になるまでしつこく付いて回りますから!!」
・・・落ち込んでる?
この私が?
確かに任務は邪魔されましたが、損傷はあまりあまり酷くないハズだ。(100%ではないだけで)
他の仕事でカバーできないこともない。
そして、そのことは大体のロケット団ならもう既に知っている事実で。
・・・・・・大体のロケット団なら、
「今回の損失がそこまで大きくなかったことをあなたも知ってると思いますが、」
「そうだったんですか!?」
はぁ、とため息しか出てこない。
この小娘は一番大事なところが抜けているから厄介だ。
「わかったなら、早く仕事に戻りなさい。」
「えっ?嫌ですけど。」
私はあからさまに は? という顔をする。
「だから、ランス様が元気になるまでしつこく付きまとうんですってば!!!」
「私が元気ないように見えます?」
「はい!」
自分ではそんなことまったくないというのに。
彼女はそれに、と続けてきた。
「ランス様はいつも完璧に仕事をこなしていたので、最初の挫折は辛いものだろうなぁ、と思いまして。」
「・・・・・・!」
まさか心の奥底の感情をこんな小娘に見抜かれるなんて。
「というワケでランス様、」
「・・・何でしょう。」
「私とデートしてください!!!」
「却下。」
彼女はえぇー、と嘆いている。
それを横目で見ながら、一言。
「・・・あなたがもし、仕事をさっさと片付けたなら、考えないこともないですが。」
「! 急いでやってきます!!」
私にくるり、と背を向けて走っていく彼女。
一度こちらを振り返り、約束ですからね!と言ってきた。
それを見ながら、少なからず楽しみにしている自分がいることに気がついた。
名も無い感情
(今はまだ、この感情の名前を知らない)
∵ランスさんを慰めたい!って話だったのに、いつの間にかデートする話になってた不思議。