「ねぇ、」

「……。」



私の前を歩く赤髪に声をかける。



「ねぇ、ねぇ!」

「……。」



返事はない。
ただの屍のようだ。



「ねぇ、シルバーくんってば!!」

「………。」



やはり返事はない。
だけど、名前で呼び掛けたら少し反応してくれた。

どうやらただのツンデレのようだ。



「おい。今、失礼なこと考えてないか。」

「!?べ、別にぃ〜。」



危ない、危ない。
思考が漏れないように気をつけないと。

でも、とりあえず会話が出来たので、途切れないうちに本題へ入る。



「シルバーくんはさ、イースターって知ってる?」

「…それは新しいポケモンか?」



ぐはぁ!
この答えは予想してなかった……。
可愛いすぎるぜ、シルバーくん!
ピュアなんですね、わかります!!

さっきの答えに不覚にもきゅんきゅんしてしまい、声が出ない。

あー、もう!
なんでこんなに可愛いんだろう。
ツンデレだから?
ツンデレマジックなのか!?

答えない私を見て、不審に思ってるあなたでさえ可愛いな!
ツンデレだから自分からは聞けないんですね、悶えます。


とりあえず深呼吸して答えてあげる。



「え、えっとね、イースターっていうのはイエス・キリストの復活を祝う日なんだって。」

「ふーん。」



興味なさげに聞き流すシルバーくん。

んー、やっぱり地味だからかな?
私もクリスチャンじゃないから正直、あまり詳しくは知らないんだけどさ。

でも!
コトネちゃんから面白いイースターの風習を聞いてしまったので、それを実践したいがためにこの話を振ってたりする私。


カバンから、この日のために用意してきたカラフルな色(主にピンク)で染められた卵を取り出す。

そして、



「そぉい!!!」



掛け声と共に思いっきりシルバーくんに投げつけてみた。
投げられたピンク卵は綺麗な放物線を描き、べちゃっ、という音と共にターゲットの背中にヒットした。

よっしゃ!
ナイスコントロール!!

シルバーくんは最初こそ驚いてたものの、今度は怒りのオーラを携えて私の方へやってきた。
その顔の怖いこと、怖いこと。

せっかくのイケメンが台無しだぜ?
あ、背中に卵被害がある時点でアウトか。



「おい、何したんだお前。」

「シルバー、ゲットだぜ!、的な?」

「はぁ?」



うわわわ、すみません。嘘です。
その顔怖いです・・・。



「あの、えっと、コトネちゃんからイースターの日の行事のこと聞いてそれで・・・、その、」

「コトネから?」

「う、うん。」



私はエッグハントと呼ばれるや子供の遊びを聞いたのは本当のことで。
カラフルに染められた卵をイースターエッグと呼んで、それを人に投げつけるのがエッグハントだよ、とニッコリ笑顔のコトネちゃんに教えられたのだ。

・・・途中までは本当だと思うが、エッグハントは人に卵を投げつけるとか最後の辺りは信憑性が薄いかも。
と感じながらも悪乗りしてしまうあたり、私も私なのだが。


とりあえず、



「シルバーくん、メンゴ☆」



と謝って、全力でユーターンした。
ツンデレの彼は私を追って来ない、そう考えていたが、



「ナマエ、ちょっと待て!!」



後ろから声がするので、その可能性は粉々に砕かれてしまった。

ヤバイ、ヤバイ。
全速力で逃げてその辺の茂みに隠れてやり過ごす予定だったので、あいにく今手持ちに空を飛べる子はいなかった。

くっ・・・!
これじゃ「計算通り(ニヤリ)」とかできないじゃないか!!


ちらり、と後ろを振り返るとやっぱり赤い髪の彼が。

追ってくるなよ、このツンデレが!

と、自分が卵を投げたということなんてすっかり忘れて、なみのりできる子はいるのでとりあえず水上に逃げよう。
そう考えてさらに走る速度を上げた私だった。










おいかけっこ
(水上に着く前に息切れしてしまって、日頃の運動不足を呪った)
(「やっと追いついた・・・。べ、別に、怒ってる訳じゃないんだぞ!」「何このツンデレ!!」)






∵コトネちゃんに一役買ってもらいました。ギャグになりきれてるか不安だ・・・。
そしてちゃんとしたエッグハントと呼ばれる遊びは、カラフルに染められたゆで卵を隠してそれを見つけることらしいです。
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