先日、知り合いから聞いた話だ。
ジョウトという地方にはクモの巣をイメージした足場をイトマルというポケモンの形の乗り物に乗って移動するジムや、溶岩の池を回転する足場に乗って移動するジムがあるという。
その話を聞いた俺は、最近ご無沙汰気味だったジムを改装する意欲が湧いてきた。
今度の仕掛けは失敗すると最初に戻されるという仕掛けにしようか。
「デーンジさんっ!!」
新しいジムの仕掛けに思いを馳せていると、背中に重みを感じた。
「遊びましょー!!」
「・・・またナマエか。」
ニカッ、と笑ってそうですよー!、と答える変な女。
コイツはオーバの遠い親戚らしく(髪は赤くないけど)、初めてあった時はあのアフロが連れて来たんだよな、と頭の隅で思い出す。
「まず重いからどいてくれ。」
「なら遊んでくれます?」
「・・・わかったから。」
ため息混じりにそう答える。
わーい!、とはしゃぐナマエ。
お前は子供か。
彼女が離れたところで、自分のモンスターボールからライチュウとサンダースを出す。
「コイツらが遊んでくれるとよ。」
「えぇー!そんなの反則ですよ!!」
そういいながらも二匹を撫でるナマエ。
ボールから出されたばかりのあいつらは、うまく現状が理解できていないようだった。
「おーい!デンジにナマエ!!」
「あっ、オーバだ。」
このままあいつがポケモン達と遊んでくれればジム改造について考えられる、と思っていた俺の考えは、オーバの登場によって見事に打ち砕かれた。
またうるさいのがきた。
俺は無視を決め込むことにした。(面倒はごめんだ)
「探してたんだぜー、ナマエ。」
「え?私を?」
オーバが何かを持ってるが無視だ、無視。
ライチュウが俺に近寄ってきた。
とりあえず撫でてやる。
「今日、お前の誕生日だろ?」
「え?」
笑顔全開のオーバに対して、あいつはひどく驚いた顔をしていた。
俺も驚いたが。
「ごめん、今日何日だっけ?」
「おいおい、何寝ぼけたことって・・・、え、もしかして自分の誕生日忘れてたのか!?」
「もうすぐだ、ってことは覚えてたんだけど、ね・・・。」
アハハハ、と乾いた笑いのナマエ。
自分の誕生日を忘れるヤツなんて、俺以外も存在してたのか。
「はぁー、まぁナマエらしいっちゃ、らしいな。」
「アハハハハ、」
「とりあえず、ほれ。誕生日プレゼントだ。」
持っていた包みをあいつに差し出すオーバ。
「・・・これ、私に?」
「あぁ。」
「ありがとう!アフロもたまには役立つのね!!」
「たまには、は余計だ。」
オーバがぐしゃぐしゃ、とあいつの髪を撫でている。
プレゼントではしゃいだり、今開けていい!?、なんて聞く辺り、あいつもまだまだ子供だな。
「あ、デンジさんも何かくださいよ。」
「は?」
「今日は私の誕生日でーす!よって、プレゼントをよこしなさい。」
さっきまで忘れてたクセに・・・。
しかしここで何か渡しておかないと、「あの時くれなかったくせにー!」とか何とか、いちゃもんをつけられそうだ。
とりあえず自分の洋服を探ってみる。
するところり、とポケットから飴が出てきた。
よく見るとそれはオレンジの飴で。
なんでこんな所からこんなものが出てきたのかまったくわからなかったが、まぁこれでいいか。
「おらよ。」
ナマエに向かってポーン、とその飴を投げる。
「え?ちょっ、」
ナイスキャッチ。
あいつは落とさなかったようだ。
「これ、飴・・・?」
「・・・オレンジの飴、だな。」
ナマエとオーバはその飴をまじまじと見つめてる。
俺、何か変なことしたか?
「デンジさんって意外と可愛いもの持ってるんですね。」
「なっ・・・!?」
「俺もそう思うぜー。」
ニヤニヤ、という効果音が似合いそうな笑みを浮かべるナマエとオーバ。
そーゆーことかよ。
「これでプレゼントは渡したんだし、俺はジムの改造すっから、邪魔するなよ。」
あいつらにからかわれるのはゴメンだ。
俺は退出することを選んだ。
二人に背中を向けてひらひら、とやる気なさそうに手を振る。
「あっ、デンジさん!」
「んー?」
振り返らずに、間延びした答えるを送る。
へんなこと言うなら反応しねーからな。
「これ、ありがとうございます!!」
彼女の言葉は予想していたのとだいぶかけ離れていて、驚いてそちらを振り返る。
すると満面の笑みを浮かべたナマエがいた。
「大切に舐めさせていただきますね!」
「・・・勝手にすれば。」
ぷい、と進行方向に向き直り、もう絶対に振り返らずに進んでいく。
最後に俺の耳には、勝手にさせてもらいますねー!、というあいつの嬉しそうな声が聞こえた。
パッピーバースディ!
(「デンジの耳が赤かったのに気づいたのは、きっと俺だけだろうな。」「へ?オーバ、何か言った?」「別に。」)
∵デンジさんのキャラを掴もうと頑張った結果がこれだよ!