この子は自分をブリーダーとを言っていたが、あながち嘘ではないかもしれない。
比較的有名な初心者用ポケモンはもちろん、割とマイナーな、例えばホウエンのバクオングまでも知っていた。
ポケモンの知識量がはんぱじゃないわ。
これほどの知識は研究者でさえ、あるのかどうか怪しいレベル。
せめてカントーだけでもわかればいい方と考えていたけれど、予想以上だったわ。
本当にこの子、何者?
……でもまあ、今回は実力が見たかっただけ。
「貴方、名前は?」
「え?あ、ナマエです。」
「あたくしはアテナよ。あなたの入団、歓迎するわ。」
「!?あ、えと……、ありがとうございます…?」
にっこりと笑いながら彼女の様子を窺う。
今のところ怪しい動きはないし、この子なら長い間空いていたあのポストにちょうど良さそう。
あの時さっさと始末しなかったあたくしは正解だったようね。
「少し待っててくれるかしら?」
「はい!」
彼女をその場に残し、部屋の外に出る。
そして通信機を使って彼に連絡を。
『もしもし?』
「ああ、アポロ?あたくしよ。」
繋いだ先は最高幹部の彼。
一応あの子のことを報告しておかないとね。
『…アテナですか。何か用でも?』
「えぇ。新しい入団者よ。」
「……こんな時期に、ですか。」
さすがはアポロ。
おかしな点にはいち早く気がつく。
「それについては少し訳ありなのよ。詳しくは後で話すわ。」
こんな場所では誰が話を聞いてるか、わからないもの。
『わかりました。では必要なものはラムダにでも用意させましょう。貴方の班でいいのでしょう?』
「さすが。わかってるじゃない。」
彼は相変わらず心情を見破るのも得意なようだ。
「話はそれだけよ。じゃあ切るわね。」
『では。』
プッツン、とあっけなく会話は途切れた。
∵バクオング大好き!って方には申し訳ないです…