「はへ?」

「まったく。はへ?、じゃないわよ。」

「もう向こうの方もそのつもりだぞ。」



すみませーん!
話が理解できませーん!
ママーン、パパーン、助けてー!!ってこの二人が親だった・・・。

それよりも私は目の前のケーキを食べたいのだが。



「ほら、支度するわよ。」



おいしそうなクリームとフルーツのハーモニーが私を呼んでいるのに・・・!



「会うだけでいいから。そしたらケーキはどれだけ食べても何も言わないから。」

「・・・! わかった、会うだけだからね。」



別にケーキに釣られたわけじゃないからね!
でも、あのケーキ屋のケーキは本気で絶品なんだから!!


取引が成立したのを見届けると、お父さんは「先に行ってるから」といって消えてしまった。

お母さんはすごくウキウキな様子で、色々とを準備している。
私はそんなお母さんの着せ替え人形となった。



「せっかく会うのだから、オシャレしないとね!」

「・・・はぁ、」



私の両親は、小さいが自営業の会社を営んでいる。
で、最近その事業が大大大成功(とにかくすごく成功)したらしく、協定を結びたがる大手企業が続出しているとの話だ。

私の父親は無類の石好きで、今度協定を結ぶ予定になった大手の会社の社長さんもとにかく石が好きとかで、馬が合うらしい。
それで向こうの会社の社長さんは娘が欲しかったらしく、私のお父さんは息子が欲しかった。
ならば、自分達の子供を婚約させようじゃないか!、になったらしい。(母親情報)

なんだその勝手な理由は!!
と、突っ込みたくなったのは私だけじゃないはず。

数日前にお母さんに「あんた彼氏いないの?」と聞かれて、いないし好きな人もいないよ、と答えてしまった自分が腹立たしい・・・!

私を癒してくれるのは、このアノプスちゃんだけだよ!!
(ちなみにお父さんが見つけてきた化石を復元させた子である)


ぶっちゃけてしまうと、私は男子全般が苦手だ。
そんな私が大手企業の息子さんと会って話をしろ、だなんて・・・!
拷問か。



「ケーキのために頑張ってね。」



そう言ってにっこり笑うお母さんが、初めて悪魔のように見えた。







あれよあれよ、という間に純和風のお屋敷についてしまって。

ここまで来ると、さすがに緊張するぜ・・・。
しかも車の中で聞いた話によると、協定相手の会社はあのデボンコーポレーションだと言う。

デボンコーポレーションと言えば!
『皆様の生活のためになんでも作ってます!』が売りの会社で。
とにかく、私の口から説明するのは難しいが、すっごく有名で大きな会社なのだ!!



「た、ただ会うだけだからね!」

「はいはい。」



そんな会社の社長さんと息子さんに(不本意ながらだけど)会うのだ。
緊張しないわけがない。

親には私のこの緊張がばれているのか、いないのか、よくわからない。
だけど、アノプスをボールから出してもいい、という許可をもらえたので、実はバレてるんじゃないかな・・・、と思ったり。

私の腕にいるアノプスが苦しそうにひと鳴き。

あっ、ごめん。
無意識のうちに力が入ってしまったみたいだ。

小さく謝ると、アノプスはわかればいいんだよ、という風に答えてくれた。
私なんかよりもできたポケモンだ。


そんなことを思っていると、遠くから人の話し声が聞こえた。
最初は遠くて何を話してるかわからなかったが、だんだんと近づいてくるうちに内容がなんとなくわかってしまった。

どうやら向こうの息子さん(名前はダイゴさん、というらしい)も石に釣られてここへ来たらしい。
親子で石好きなんだ、なんだか私と似てるかも。
と、少し近親感を持ってしまった。

私は専ら化石専門なんだけどね。



「やぁ、遅れてしまってすまないね。」

「いえいえ。私達も今来た所ですから。」



障子を開けて部屋に入ってきた社長さんと、決められたような挨拶をするお父さん。

この方は恐れ多くも、あのデポンコーポレーションの社長であるツワブキさんであって。
で、後ろにいる紫色のスーツを着ている方が、息子のダイゴさんであろう。

うわぁぁぁぁ、さっきよりも緊張してきたかも・・・・・・、


ここからは私の独断と偏見が混じるが、一言でいうならば、ダイゴさんはすごいイケメンだ。
色素の薄そうなアイスブルーの髪に、これまた素敵な水色の瞳。
パーツ1つ1つでもすごく魅力的なんだ。
その集合体の破壊力はすごい。


はうぅ!目が合ってしまった!!


私は慌てて腕にいるアノプスを見る。

アノプスはどうしたの?、という目で私を見つめ返していた。



それから私はなんか恥ずかしくて、彼を見ることができなかった。

親同士が何か話していたけど、なかなか頭に入ってこなくて。(唯一わかったのはダイゴさんがチャンピオンだということだ)



「あとは若いお二人で・・・」



私の親が、お見合いに定番のこのセリフを言った時には心底ビックリした。

会うだけでいい、って言ったじゃないか!
こんなイケメンと二人っきりにして、私をどうしようというのだ!!

自分の親だけだったらこう反論できたが、この部屋にはさっき知り合ったばかりのデボンコーポレーションの重役の方々がいらっしゃるわけで。
曖昧に笑うことしかできない私はチキンに分類されてしまうのだろうか。










はじめまして、
(全ては私を待ってるケーキの為・・・!!)





∵物語の始まり!

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